映画評「リミットレス」

☆☆★(5点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ニール・バーガー
ネタバレあり

WOWOW派であるから1~1.5年くらい前に公開された作品は新作扱い、4年前公開となる本作はぎりぎり準新作くらいになるだろうか。
 「ハングオーバー」第1作で人気者になった後のブラッドリー・クーパーが、契約まではこぎ着けたものの一向に書けない作家に扮しているのが、製作当時注目されたはずである。

その彼が、別れた妻アンナ・フリールの不良っぽい弟ジョニー・ホイットワースから渡された新薬NZTを服用したところ、頭脳明晰・運動能力抜群のスーパーマンになり、小説もわずかの間に書きあげてしまうが、一日しか効力がない。そこで弟を訪問したところ「ちゃんとした薬なんて嘘だよ」と言われ、薬欲しさに彼の代わりの用を成して戻ってみると、彼が殺されている。警察がやってくる前に薬を発見した彼は作家で大物になる代わりに、投資で大当たりした実績を基に、大物投資家ロバート・デニーロとコンビを組む経済コンサルタントとして邁進する。
 大量に服用した為に、最悪の場合死に至るひどい副作用が出るが、徐々に量を減らせば中毒から抜け出すことができることに気付く。ところが、仕事を始める資金を用立てたやくざアンドリュー・ハワードに薬の存在を知られた為にこれを欲しがる彼につけ狙われることになる。

僕の責任なので二番煎じとは言えないが、薬により脳が活性化して超人になる「LUCY/ルーシー」を観た後だけに同工異曲の感が否めないのは残念。同作よりサスペンスとしてはしっかり作られているが、「ルーシー」が娯楽映画としては相当乱暴ながら哲学映画として大きな意欲を感じさせたのとは異なり優等生的すぎて寧ろ物足りない。
 ただそのしっかりしているはずのサスペンスにしても、欲しいはずの薬のありかを知っているはずのクーパーをやくざがなぶり殺しにしようかという設定は些か合理性を欠く。薬で一時的であっても知性・能力が増しているなら脅しではなく別の手を考えそうなもので、その辺りの知恵が足りないのも不満。

「薬なしでも頭が良くなった」とされる幕切れは両義的な解釈が可能。クーパーは「ザ・ワーズ 盗まれた人生」でも僥倖にめぐり合う売れない作家に扮していたので、これまた紛らわしい。本作の場合主人公が作家である必要はなかった。

監督は「幻影師アイゼンハイム」でなかなかサスペンス醸成力を見せたニール・バーガー。

薬の正式名がNZT48というのが笑える。.

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年10月25日 07:53
なぜ作家だったのかわからんかったですね。
サラリーマンでもホームレスでもいいわけで・・・
NZT48・・・・けっこう日本オタクだったりして(^o^)/
オカピー
2015年10月25日 19:20
ねこのひげさん、こんにちは。

>NZT48
日本からの情報があったのかもですね^^

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