映画評「ジェラシー」(2013年)

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年フランス映画 監督フィリップ・ガレル
ネタバレあり

フィリップ・ガレル監督作品は、一昨年「愛の残像」「灼熱の肌」と続けて観て、本作がトータルで4本目の鑑賞である。前の三本がつまらないというより純文学的な狙いが今一つ解りにくく隔靴掻痒の思いを抱いて見終えたのに対し、今回は単純なお話がうまくまとまっていないという印象が残る。

舞台俳優ルイ・ガレルが妻レベッカ・コンブナンと別れて、女優アンナ・ムグラリスとくっつく。たまに娘オルガ・ミルシュタインを囲んでアンナと楽しい時間を過ごすが、貧しい生活に嫌気がさしてきた彼女に捨てられてしまう。

「灼熱の肌」に出演もしていた父親モーリス・ガレルの若かりし日の恋愛模様を描いたということで、例によって美しいモノクロの画面が文芸的なムードを一応は醸し出すものの、文字通りある人生の一断片を切り取っただけという印象にして、大衆映画ファンたる僕に何の感慨も残さない。普段、人生の一断片を描いた作品については擁護の立場であるが、この作品に関してはそこまで惹かれないのである。但し、娘とのスキンシップのスケッチ的場面は生き生きとして好感触。

今回はルイに加え、妹のエステルも妹役で出演。共同脚色者の一人カロリーヌ・ドリュアス=ガレルは恐らく細君で、フィリップ・ガレルは日本の安藤桃子同様、“家庭内手工業”の作家と言うべし。

捨てる場面に始まり、捨てられて終わる。ドラマの構成としては綺麗だけれど。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年11月01日 09:42
フランス映画らしい作品と言えば作品でありました。
オカピー
2015年11月01日 17:57
ねこのひげさん、こんにちは。

フィリップ・ガレルは映画ファンには有名な監督である筈なのだけれど、本作全くブログ集客力がありません。
若い映画ファンが確実に減っているのが解る現象でしょうか。

ヌーヴェルヴァーグ以前のフランス恋愛映画は面倒くさくなかったのだけど。

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