映画評「サンシャイン/歌声が響く街」

☆☆★(5点/10点満点中)
2013年イギリス映画 監督デクスター・フレッチャー
ネタバレあり

スコットランドを舞台にした英国製ミュージカルである。
 「最後の曲は知っているぞ」と思ってちょっと調べたら、スコットランドのバンド“ザ・プロクレイマーズ”のLP「サンシャイン・オン・リース」(本作原題)のトップを飾る“アイム・ゴナ・ビー・500マイル”ということが判った。このLPは持っていないが、この曲の入っている寄せ集めCDは持っているかもしれない。

同LPに代表されるプロクレイマーズの楽曲を着想元にスティーヴン・グリーンホーンが作り上げた舞台ミュージカルを映画化したもので、既成曲からミュージカル(映画)を作ると言う発想は、喧伝される「マンマ・ミーア!」に次ぐ。

アフガニスタンから兵卒ジョージ・マッケイとケヴィン・ガスリーが故郷エディンバラに帰還、ガスリーはマッケイの両親の銀婚式に彼の妹フレーヤ・メイヴァーに求婚するが、彼女は唐突の申し込みに拒絶せざるを得なくなって、就職の為に渡米を決意する。
 この時の騒ぎが元でマッケイも恋人アントニア・トーマスとの仲が思わしくなくなる。
 また、銀婚式の日に夫ピーター・ミュランに隠し子がいたことを知った妻ジェーン・ホロックスはひどく動揺する、ものの、時間を置くうちに永遠に訣別してしまおうという考えに変化が生まれる。

という三組のカップルの互いに寄せる心情の移り変わりをプロクレイマーズの曲に乗せて見せていく内容で、彼らの楽曲にインスパイアされたお話だから「ミュージカルでなくても良い」などと、どこかの誰かさんのように失礼な言葉は言わないまでも、ミュージカルにシリアスなお話はマッチしない、という数十年来のわが持説を証明するような作品に終わっている。

登場人物が突然歌い出しても全然違和感を持たない僕でも、深刻に考え込んでいる登場人物よりは夢を持っている人物が歌い出す方が自然には感じられる。シリアスなトーンの時は上手く歌い出させないと違和感を生ずる主要因となる。
 昨今の映画人はそうしたシリアス・トーンの内容を無理無理にまとめあげてそれなりに見どころがある作品に仕上げて送り出しているものの、個人的には不満を感じることが圧倒的に多いのが僕個人の現実だ。

全体的に本作はミュージカルとして魅力不足と思うが、英国製らしくしつこくなくもたれないのはヨロシイ。

要らぬリアリズム指向がミュージカルにシリアス要素を盛り込むのだよ。迷惑千万だなあ。尤も、オペラは概してシリアスだから、作り方次第なのだろうけれど。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年10月04日 11:19
タイトルからすると、もっと明るいかと思っていたんで、ガックリでありました。
ミュージカルには暗いのは似合わないですね。
たとえ、悲劇であったとしても。
オカピー
2015年10月04日 15:03
ねこのひげさん、こんにちは。

>ミュージカルには
僕はずっとそう言っております。
シリアスなドラマ性をきちんと維持して、ミュージカルとしても物凄い勢いを以って完成したのは「ウエストサイド物語」だけではないかと思いますねえ。

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