映画評「ハタリ!」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1961年アメリカ映画 監督ハワード・ホークス
ネタバレあり
中学から大学にかけて民放TVで二度、社会人になってBSで完全版を一度観ている。西部劇の快作「リオ・ブラボー」(1959年)をそのままアフリカに移したようなハワード・ホークスの豪快冒険映画である。
サバンナで顧客の注文に応じて動物を生け捕りにしているハンティング集団がある。冒頭で仲間の一人ブルース・キャボットが追いかけていたサイに逆襲され重傷を負う事件が勃発、ここからタイトルに入る。
今では当たり前になった手法であるが、この作品が嚆矢と断言できないまでもごく初期の代表的作品と言って間違いない。
病院を出た彼らが酒場で飲んだ後根城に戻ってみると、リーダーのジョン・ウェインの部屋に見知らぬイタリア美人エルザ・マルティネリがいる。
彼女が許可も取らずに寝ているなどという設定は脚本を書いたリー・ブラケットらしいおとぼけで、彼女が彼らが男性と思い込んで契約したカメラマンと判明して笑わせる。その彼女と女性に苦い記憶のあるウェインが次第に接近していくのは定石的ながら、施設の持主である美人ミシェル・ジラルドンを巡ってハーディー・クリューガー、レッド・バトンズ、ジェラール・ブランが恋のさや当てを演ずる部分は相当楽しい。
それと交互に眼目のハンティング場面が繰り広げられるわけであるが、頑丈至極な狩猟用車両が疾駆する様子をフィーチャーして迫力満点。車側から攻撃を仕掛けて来るサイを捉える部分などは撮影の苦労が想像される。猿を大量に捕まえようとバトンズ開発のロケットを使うシークエンスは愉快で、コメディーとして一番上出来の部分。
微笑ましいのは、意外や動物を操るのが上手いエルザが子象を懐かせる場面群で、いつの間にか三匹に増えた子象を引き連れる箇所で僕ら昭和中期生まれ世代にはもの凄く有名な楽曲“子象の行進”がかかる。ヘンリー・マンシーニを代表する名曲である。
エルザとこの子象の関係は、ウェインが逃げ出したエルザを探すために彼らを使う面白いアイデアとして結実、恋愛映画の小道具として「上手く使っているわい」と感心させられる。
ブラケットやホークスの笑いの趣味を知っていると「またやっている」とくどく感じられる瞬間がないでもないが、それは贅沢な不満であろう。
ハンティングのグループの陣容がアメリカ人、インディアン(?=キャボット)、フランス人、メキシコ人、イタリア人と多様なのも良い。人種・民族差別撤廃の意識が高まった現在なら、これに東洋人か現地人ではない黒人が加わる(加えなければならないらしい)。
映画史を振り返ると、この先に「飛べ!フェニックス」(1965年)が見えますな。
1961年アメリカ映画 監督ハワード・ホークス
ネタバレあり
中学から大学にかけて民放TVで二度、社会人になってBSで完全版を一度観ている。西部劇の快作「リオ・ブラボー」(1959年)をそのままアフリカに移したようなハワード・ホークスの豪快冒険映画である。
サバンナで顧客の注文に応じて動物を生け捕りにしているハンティング集団がある。冒頭で仲間の一人ブルース・キャボットが追いかけていたサイに逆襲され重傷を負う事件が勃発、ここからタイトルに入る。
今では当たり前になった手法であるが、この作品が嚆矢と断言できないまでもごく初期の代表的作品と言って間違いない。
病院を出た彼らが酒場で飲んだ後根城に戻ってみると、リーダーのジョン・ウェインの部屋に見知らぬイタリア美人エルザ・マルティネリがいる。
彼女が許可も取らずに寝ているなどという設定は脚本を書いたリー・ブラケットらしいおとぼけで、彼女が彼らが男性と思い込んで契約したカメラマンと判明して笑わせる。その彼女と女性に苦い記憶のあるウェインが次第に接近していくのは定石的ながら、施設の持主である美人ミシェル・ジラルドンを巡ってハーディー・クリューガー、レッド・バトンズ、ジェラール・ブランが恋のさや当てを演ずる部分は相当楽しい。
それと交互に眼目のハンティング場面が繰り広げられるわけであるが、頑丈至極な狩猟用車両が疾駆する様子をフィーチャーして迫力満点。車側から攻撃を仕掛けて来るサイを捉える部分などは撮影の苦労が想像される。猿を大量に捕まえようとバトンズ開発のロケットを使うシークエンスは愉快で、コメディーとして一番上出来の部分。
微笑ましいのは、意外や動物を操るのが上手いエルザが子象を懐かせる場面群で、いつの間にか三匹に増えた子象を引き連れる箇所で僕ら昭和中期生まれ世代にはもの凄く有名な楽曲“子象の行進”がかかる。ヘンリー・マンシーニを代表する名曲である。
エルザとこの子象の関係は、ウェインが逃げ出したエルザを探すために彼らを使う面白いアイデアとして結実、恋愛映画の小道具として「上手く使っているわい」と感心させられる。
ブラケットやホークスの笑いの趣味を知っていると「またやっている」とくどく感じられる瞬間がないでもないが、それは贅沢な不満であろう。
ハンティングのグループの陣容がアメリカ人、インディアン(?=キャボット)、フランス人、メキシコ人、イタリア人と多様なのも良い。人種・民族差別撤廃の意識が高まった現在なら、これに東洋人か現地人ではない黒人が加わる(加えなければならないらしい)。
映画史を振り返ると、この先に「飛べ!フェニックス」(1965年)が見えますな。
この記事へのコメント
たぶん、冒頭で逆襲してきたサイでしょうね。
映画は面白いですが、観るたびに複雑な心境になりますな。
>一頭のサイ
面白いと言っては何ですが、やはり面白い逸話ですね。
>複雑な心境
僕は、サルを捕えるためだけに木を倒すシーンが何故か気になりました。
僕には昔から環境への関心がありましたから。
環境保護団体には全く共感しませんけどね。