映画評「ジェサベル」
☆☆(4点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ケヴィン・グルタート
ネタバレあり
2005年のブログ開始以来2010年まで毎年20本くらいホラー映画を観ていたが、2011年精神的理由で恐怖映画を観るのが難しくなって激減した。2013年に漸く病気は脱したが面白くも怖くもないゾンビものを回避することにし、昨年の途中からPOVホラー映画も観るのを止めた。怖さだけで言えば日本の恐怖映画の方がずっと上である。しかし、日本のホラーも「リング」「呪怨」もどきばかりなので食指が湧かず、殆ど観ていない。
そんな中「まあ観ても良いか」と手を出したのが本作。11月中旬にしてやっと6本目の純ホラー映画だ。
若いカップルが引っ越すところで始まるので「すは、またオカルト・ハウスものか?」と嫌な予感がしたが、男性の方が交通事故で死んでしまう。観客としては一安心である。
かくして、伴侶と腹(おなか)の中の子供を失い、自らは車いす生活を余儀なくされた、キャシー・ベイツを若く細くしたようなサラ・スヌーク扮するジェサベルが、疎遠だったルイジアナ州の父親の家に戻る。落ちたものを拾おうとして発見したのが母親(ジョエル・カーター)が生まれて来る娘に残したビデオ・レター(またビデオかとここでもがっくり)。
大いに喜ぶ彼女に対し、父親(デーヴィッド・アンドリューズ)は激怒してビデオを破壊し、彼女の車椅子を捨ててしまう。ここから何故父親はそんな行動を取ったか、或いは池に向こうに見えた光は何だったのか、といったミステリー的趣向によりぐっと面白味が出て来る。その間に新たに発見されたビデオを焼却しようとして父親が焼死してしまう。
一人になった彼女に謎解明の為に協力してくれるのは高校時代同級生だった男性プレストン(マーク・ウェバー)で、沼の向こうには死者の蘇りや例の憑依を掲げるブードゥー教らしき痕跡が随所に見られ、ジェサベルの生まれた日に死んだ、名前もジェサベルのお墓が発見される。さらに調べると母親が生前交渉のあったブードゥー教の指導者モーセも同じ日に死んでいる。
勘の良い方ならこれで父親の行動の謎は解るだろう。
露骨に行動を取るようになった亡霊たちは遂にヒロインを沼に落とすが、プレストンが救う。しかし、ヒロインは先に死んだジェサベルに憑依され、名実ともにジェサベルとなる。
日本のホラー映画は従来因果応報が基本であったが、欧米では必ずしもそうではなく、本作の場合もヒロインは亡霊の恨みとは全く無関係で、死んだジェサベルの代わりに養女に迎えられたに過ぎない。死んだジェサベルが肉体を乗っ取って本懐を遂げる形だから、日本人には理不尽に映る。その理不尽さがたまらないという方もいらっしゃるかもしれないが、この手の理不尽さは後味が悪すぎるため御免蒙りたい。
肝心の恐怖場面の見せ方には我が邦の「リング」「呪怨」の影響を受けている箇所が多く、それらに比べると淡泊ながら瞬間的にはなかなか怖がらせて貰える部分がある。但し、全体としてそう怖いとは言い難い。
肉体を乗っ取られた魂はどこへ行く?
2014年アメリカ映画 監督ケヴィン・グルタート
ネタバレあり
2005年のブログ開始以来2010年まで毎年20本くらいホラー映画を観ていたが、2011年精神的理由で恐怖映画を観るのが難しくなって激減した。2013年に漸く病気は脱したが面白くも怖くもないゾンビものを回避することにし、昨年の途中からPOVホラー映画も観るのを止めた。怖さだけで言えば日本の恐怖映画の方がずっと上である。しかし、日本のホラーも「リング」「呪怨」もどきばかりなので食指が湧かず、殆ど観ていない。
そんな中「まあ観ても良いか」と手を出したのが本作。11月中旬にしてやっと6本目の純ホラー映画だ。
若いカップルが引っ越すところで始まるので「すは、またオカルト・ハウスものか?」と嫌な予感がしたが、男性の方が交通事故で死んでしまう。観客としては一安心である。
かくして、伴侶と腹(おなか)の中の子供を失い、自らは車いす生活を余儀なくされた、キャシー・ベイツを若く細くしたようなサラ・スヌーク扮するジェサベルが、疎遠だったルイジアナ州の父親の家に戻る。落ちたものを拾おうとして発見したのが母親(ジョエル・カーター)が生まれて来る娘に残したビデオ・レター(またビデオかとここでもがっくり)。
大いに喜ぶ彼女に対し、父親(デーヴィッド・アンドリューズ)は激怒してビデオを破壊し、彼女の車椅子を捨ててしまう。ここから何故父親はそんな行動を取ったか、或いは池に向こうに見えた光は何だったのか、といったミステリー的趣向によりぐっと面白味が出て来る。その間に新たに発見されたビデオを焼却しようとして父親が焼死してしまう。
一人になった彼女に謎解明の為に協力してくれるのは高校時代同級生だった男性プレストン(マーク・ウェバー)で、沼の向こうには死者の蘇りや例の憑依を掲げるブードゥー教らしき痕跡が随所に見られ、ジェサベルの生まれた日に死んだ、名前もジェサベルのお墓が発見される。さらに調べると母親が生前交渉のあったブードゥー教の指導者モーセも同じ日に死んでいる。
勘の良い方ならこれで父親の行動の謎は解るだろう。
露骨に行動を取るようになった亡霊たちは遂にヒロインを沼に落とすが、プレストンが救う。しかし、ヒロインは先に死んだジェサベルに憑依され、名実ともにジェサベルとなる。
日本のホラー映画は従来因果応報が基本であったが、欧米では必ずしもそうではなく、本作の場合もヒロインは亡霊の恨みとは全く無関係で、死んだジェサベルの代わりに養女に迎えられたに過ぎない。死んだジェサベルが肉体を乗っ取って本懐を遂げる形だから、日本人には理不尽に映る。その理不尽さがたまらないという方もいらっしゃるかもしれないが、この手の理不尽さは後味が悪すぎるため御免蒙りたい。
肝心の恐怖場面の見せ方には我が邦の「リング」「呪怨」の影響を受けている箇所が多く、それらに比べると淡泊ながら瞬間的にはなかなか怖がらせて貰える部分がある。但し、全体としてそう怖いとは言い難い。
肉体を乗っ取られた魂はどこへ行く?
この記事へのコメント
日本人の監督もハリウッドで映画を作ることが出来るようになったようで・・・
今朝、フジテレビ『僕たちの時代』で紀里谷和明、岩井俊一、園子温が出演してハリウッドでの映画作りを話しておりました。
西欧にも「ねじの回転」のような日本の幽霊ものに近い作品もありますが、「リング」により一気に日本的恐怖がアメリカ人に定着したようで、昔からあるオカルト・ハウスものにもその日本的ムードが大分感じられるようになっていますね。
>『僕たちの時代』
なかなか濃いメンバーだなあ。
どんな話が出たのやら^^