映画評「フランシス・ハ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督ノア・バームバック
ネタバレあり

何年か前「イカとクジラ」という注目作を作ったノア・バームバックの本作は、極めてインディ映画らしいインディ映画である。アメリカ映画としては久しぶりの感触。

ダンサーの練習生グレタ・ガーウィグは、親友のミッキー・サムナーとルームシェアをしているが、ミッキーが恋人との同棲を希望した為これを解消、他の自由人種の部屋に泊まったり、故郷に戻ったり、友達の暮らすパリにちょいと出かけて居住地を転々とする。しかし、ダンス・カンパニーから戦力外通告を受けた為目論見が狂う。振付の仕事を提示されるが、他にダンサーとしての仕事があるからと嘘を言って、大学の賄いみたいな冴えない仕事をした後、結局振付の仕事に就く。

自由人種と仮に名付けるアーティストもどきのヒロインの人生の断面をスケッチ的に描写した軽みが心地よい。モノクロという共通性もあって、夏に観たドイツ映画「コーヒーをめぐる冒険」と同じグループに入れたい内容だ。

タッチとしては前述の「コーヒー」同様ジム・ジャームッシュとフランソワ・トリュフォーのドワネルものを合わせたようなおとぼけ感がある。エンディングのクレジットをボケっと眺めていたら、ジョルジュ・ドルリューがトリュフォー作品に書き下ろしたスコアを大量に使っているのが解り、膝を打った。

主題という程のものではないかもしれないが、アメリカ流に【足るを知る】境地にヒロインが達し、また彼女の親友ミッキーが「嫌い」と強がりの憎まれ口を叩いた同棲相手と正式に結婚するのもまた同じ境地。だから、欲をかかない人生に満足していれば幸福になれる、といった後味として心に残るのである。
 難民のように絶対的に満足しようのない人生を送っている人には当てはまらないものの、大多数の人は【足るを知】れば、自ずと幸福を感じられると僕は思っている。幸福感は自分から招くものである。かかる内容にも元気づけられるものがあるが、映画ファンとしては軽みのあるタッチを買いたい。

トリュフォーの後継者が各国で次々と現れている。好きな監督だけに嬉しいね。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年12月06日 17:21
振り子が戻りつつあるのかもしれませんね。
たぶん『スターウォーズ』は観にいかないな・・・
オカピー
2015年12月06日 18:47
ねこのひげさん、こんにちは。

「スター・ウォーズ」も予定通りに短いスパンで作ってくれたらもっと興味が湧いたのでしょうが、1970年代と違って似たような作品も多いですし、「是非」という感じにはなりませんね。

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