映画評「100歳の華麗なる冒険」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年スウェーデン=イギリス=フランス=スペイン=ロシア合作映画 監督フェリックス・ハーングレン
ネタバレあり
100歳の老人ロバート・グスタフソンが老人ホームを抜け出し、バス・ステーションで切符を買っている時にチンピラから押しつけられたバッグを持ったまま(何となればチンピラは「絶対離すなよ」と言ったから)目的地へ行く。目的地では使われていない駅舎に70歳の駅員イヴァル・ヴィクランデルが住んでいて、二人で飲食しているところへチンピラが押し掛けて来る。中に5000万クローネもの大金が入っているから当然だ。
実際の人生ではなかなかそういう訳にも行かないが、この老人たち息も合って見事にチンピラを倒すと、冷凍庫へ入れる。しかし翌日死んでいるので慌てて駅舎を出、死体をジブチ行きのケースへ入れてとんずら。その途中で中年になりかけなのにまだ勉強をしているという内気そうな青年ダーヴィッド・ヴィーヴェリの車に乗せてもらうが泊まるところがなく、今度は象を飼っている肥満気味の美人ミア・シャーリンゲルの家に厄介になる。
かくして知り合った4人は、バリ島で大金が届くのを待っている悪党の催促で押し掛けて来るチンピラたちを偶然の手を借りて次々と退け、何とそのバリ島に出かける。ここでも運命が幸いして悪党が死に、大団円を迎える。
事あるごとに老人は過去をフラッシュバックし、そこにおいてスペインのフランコ、ソ連のスターリン、アメリカのトルーマン副大統領(当時)、ソ連の科学者ポポフ、フランスの大臣、アメリカのレーガン大統領が登場して来る。若い時から爆弾に拘り小事に拘らない彼には運命の方からすり寄ってくるわけで、彼の爆弾・爆破好きが政治家たちと結びつけるのである。
この作品では原爆が完成したのはこの老人の功績となっているのが面白く、フランコからレーガンに至るまでキナ臭いエピソードに終始しながら徹底的にちゃかすブラック・ユーモアぶりに拍手喝采である。老人とブラック・ユーモアは相性が良い。
この老人の回想部分は「カメレオンマン」(1984年)と「フォレスト・ガンプ」(1994年)の北欧老人版みたいなもので、近代的大戦争とスパイ戦が繰り広げられた20世紀を100歳の老人に語らせ揶揄した形である。ユーモラスなおとぼけタッチはコーエン兄弟を思い出させる。
本作について“残虐”と仰り否定的なコメントをされる方がいらっしゃる。しかし、実際には、残虐なシチュエーションは多くても凄惨な描写はないので、凄惨な描写が嫌いな僕でさえ抵抗がない。余り綺麗ごとでは本作のようなおとぼけファンタジーはつまらない。
本作の弱点は、寧ろ、過去と現在の描写がそれほど緊密度高く結びついていないことである。
今日は一応日米開戦の日とされている。ジョン・レノンが死んだ日でもある。ついこの間のようだけど、もう35年前だよ。
2013年スウェーデン=イギリス=フランス=スペイン=ロシア合作映画 監督フェリックス・ハーングレン
ネタバレあり
100歳の老人ロバート・グスタフソンが老人ホームを抜け出し、バス・ステーションで切符を買っている時にチンピラから押しつけられたバッグを持ったまま(何となればチンピラは「絶対離すなよ」と言ったから)目的地へ行く。目的地では使われていない駅舎に70歳の駅員イヴァル・ヴィクランデルが住んでいて、二人で飲食しているところへチンピラが押し掛けて来る。中に5000万クローネもの大金が入っているから当然だ。
実際の人生ではなかなかそういう訳にも行かないが、この老人たち息も合って見事にチンピラを倒すと、冷凍庫へ入れる。しかし翌日死んでいるので慌てて駅舎を出、死体をジブチ行きのケースへ入れてとんずら。その途中で中年になりかけなのにまだ勉強をしているという内気そうな青年ダーヴィッド・ヴィーヴェリの車に乗せてもらうが泊まるところがなく、今度は象を飼っている肥満気味の美人ミア・シャーリンゲルの家に厄介になる。
かくして知り合った4人は、バリ島で大金が届くのを待っている悪党の催促で押し掛けて来るチンピラたちを偶然の手を借りて次々と退け、何とそのバリ島に出かける。ここでも運命が幸いして悪党が死に、大団円を迎える。
事あるごとに老人は過去をフラッシュバックし、そこにおいてスペインのフランコ、ソ連のスターリン、アメリカのトルーマン副大統領(当時)、ソ連の科学者ポポフ、フランスの大臣、アメリカのレーガン大統領が登場して来る。若い時から爆弾に拘り小事に拘らない彼には運命の方からすり寄ってくるわけで、彼の爆弾・爆破好きが政治家たちと結びつけるのである。
この作品では原爆が完成したのはこの老人の功績となっているのが面白く、フランコからレーガンに至るまでキナ臭いエピソードに終始しながら徹底的にちゃかすブラック・ユーモアぶりに拍手喝采である。老人とブラック・ユーモアは相性が良い。
この老人の回想部分は「カメレオンマン」(1984年)と「フォレスト・ガンプ」(1994年)の北欧老人版みたいなもので、近代的大戦争とスパイ戦が繰り広げられた20世紀を100歳の老人に語らせ揶揄した形である。ユーモラスなおとぼけタッチはコーエン兄弟を思い出させる。
本作について“残虐”と仰り否定的なコメントをされる方がいらっしゃる。しかし、実際には、残虐なシチュエーションは多くても凄惨な描写はないので、凄惨な描写が嫌いな僕でさえ抵抗がない。余り綺麗ごとでは本作のようなおとぼけファンタジーはつまらない。
本作の弱点は、寧ろ、過去と現在の描写がそれほど緊密度高く結びついていないことである。
今日は一応日米開戦の日とされている。ジョン・レノンが死んだ日でもある。ついこの間のようだけど、もう35年前だよ。
この記事へのコメント
面白かったので、期待しておりましたら、映画も面白くできていたので良かったです。
>原作
書籍評も読まないので、新しい作品は本当に知らないですねえ^^;
アメリカ発の面白いアイデアはなかなか出てこないですなあ。