映画評「裸足のピクニック」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1993年日本映画 監督・矢口史靖
ネタバレあり

「ウォーターボーイズ」ですっかりご贔屓になった矢口史靖のデビュー作であるが、メジャー作品ではなくぴあ(PFF)のスカラシップが資本である。

仲間数人との定期券使い回し(きせる)が発覚した女子高生・鈴木純子(芹沢砂織)が、逃げるように祖母の家に向うが家には誰もいず、そこへ現れた両親(Mr.オクレ、梶三和子)により祖母の死を告げられる。家に戻る途上自動車事故を起こした為無傷の彼女が祖母の遺骨を持って家路につく。へぼな彼女が壺を落として割ったところへ道路清掃車が現れて綺麗にしてしまう。
 そこで他人の家の葬儀に出て遺骨を盗もうとしたところ、祥子(娘太郎)という正体不明の女に咎められ、家で火傷の面倒を見てもらう。祥子の自宅かと思いきや、いつの間にか姿を消した彼女の代わりに本当の住人が現れて警察へ連行されかかるが、非行少年たちのおかげで結果的に自由になり、その後ゴミとして置かれていた箱の中に入っている間に山間部に捨てられる。

といった話が続いた後、再び巡り合った祥子と暫く他人の家で勝手に過ごしているうちに、純子は彼女の導きで現れたコーヒー店店主(泉谷しげる)にレイプされる。祥子が無残な死を遂げた後、家族と再会した純子は妊娠していることを知る。

評価するのが難しい作品である。終盤舌足らずな感じが目立ってお話がよく解らなくなるにしても、古い悪漢小説のように次々と場面が変わっていく興味深さがある。ルイス・ブニュエルの映画のようにシュールな、不条理な展開ぶりが、邦画どころか洋画を含めても滅多にめぐり逢えないほどに面白い。
 面白さだけで評価するなら良い点を進呈したいが、プロダクションとして貧相な印象がどうしても禁じ得ない。矢口監督をご贔屓とする所以の“呼吸”という点でも不満で、勢いはあるが「ウォーターボーイズ」以降の巧さは余り感じられない。さあどうしたものかと悩んだものの、物語の面白さを買った上で弱点を少し考慮して上記の☆★に落ち着いた次第。

純子のへまのせいで推薦での進学がダメになりすっかり不良になってしまう同級生に鈴木砂羽が扮している。この作品では結構怖い顔をしています。

余りに破天荒な展開なので夢落ちにでもなるのではないかと思いましたぜ。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年01月02日 18:14
夢落ちはガックリくるからやめて欲しいですね。
じゃなかったので、ホッとしましたですが、『ウォーターボーイズ』のように大衆受けするようなシュールさはないでしたね。
オカピー
2016年01月02日 20:02
ねこのひげさん、こんにちは。

こんなお話を考えられるだけでも才人と解ります。
シュールで面白かった。
「ウォーターボーイズ」は秀作でしたね。

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