映画評「きっと、星のせいじゃない。」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ジョシュ・ブーン
ネタバレあり
何度も言ってきたように、あらゆるジャンルの劣化が激しい中、何故か死病映画だけは向上している。安易に難病・死病で人を殺して紅涙を絞ろうなどという志の低い作品が減っている。韓国映画みたいに前半陽気で後半突然病気が判明して悲劇になるなんてのはダメな典型で、アメリカ映画も日本映画も主人公が死病であるのを最初から打ち出してお話が始まるのがまず良い(かつての死病映画大国イタリアからは全く輸入されていない)。
残念ながら日本映画にはまだ甘いところがあるものの、アメリカ映画は相当洗練されて感心させられることが多い。
末期癌で肺が弱って酸素ボンベによる補助が必要な17歳の少女シェイリーン・ウッドリーは、両親の懇願に従って“サポートグループ”なる同病相憐れむ人々の集会に出た時、骨肉腫で片足を失った18歳の少年アンセル・エルゴートと互いに好感を覚える。
彼女は癌の少女を扱った小説を愛読しているが、途中で唐突に終わる形に不満で、アムステルダムに住む作者にメールを出す。エルゴート君の尽力により作者から「結末を知りたくば当地まで来訪のこと」という返事が来る。
病院の許しを貰って母親ローラ・ダーンと共に現地に赴いた二人は、酔いどれで厭世的な言葉を吐く作者ウィレム・デフォーに幻滅、僅かにアンネ・フランクの家で慰めを見出すが、恐らくそんな作者との出会いも無駄ではなく、彼女は、実は彼女以上に末期状態にあり何事もなしえず忘れられることを恐れるエルゴート君に「一人に忘れられなければ良いではないか」と成長したところを見せ、彼の死後立派に弔辞を述べる。
それほど明確ではないが、彼女の回想形式による進行で、主人公が死病を患っていることを早々に観客に示して映画の方向を決める態度が良い。逆に気に入らないのはアメリカ製ヤング・アダルト映画お決まりの、モノローグによるナレーション。これで暫し興醒めた気分が続く。
しかし、ハイティーン二人の言動はなかなか立派なもので、かつてのイタリア児童死病映画のように単に親が右往左往する様子を描くのではなく、寧ろ病人たちが自分が死んだ後残される家族のことを考えている。アメリカ死病映画はもはや【死=悲しい】という単純な図式を取らない。死を懸命に考えることで生の意味が浮き彫りになる作品が多い。これは向上である。
僕も何もせずに死ぬようです。名前は残らずとも、もう少し何かやり遂げたかったなあ、とは思う。
2014年アメリカ映画 監督ジョシュ・ブーン
ネタバレあり
何度も言ってきたように、あらゆるジャンルの劣化が激しい中、何故か死病映画だけは向上している。安易に難病・死病で人を殺して紅涙を絞ろうなどという志の低い作品が減っている。韓国映画みたいに前半陽気で後半突然病気が判明して悲劇になるなんてのはダメな典型で、アメリカ映画も日本映画も主人公が死病であるのを最初から打ち出してお話が始まるのがまず良い(かつての死病映画大国イタリアからは全く輸入されていない)。
残念ながら日本映画にはまだ甘いところがあるものの、アメリカ映画は相当洗練されて感心させられることが多い。
末期癌で肺が弱って酸素ボンベによる補助が必要な17歳の少女シェイリーン・ウッドリーは、両親の懇願に従って“サポートグループ”なる同病相憐れむ人々の集会に出た時、骨肉腫で片足を失った18歳の少年アンセル・エルゴートと互いに好感を覚える。
彼女は癌の少女を扱った小説を愛読しているが、途中で唐突に終わる形に不満で、アムステルダムに住む作者にメールを出す。エルゴート君の尽力により作者から「結末を知りたくば当地まで来訪のこと」という返事が来る。
病院の許しを貰って母親ローラ・ダーンと共に現地に赴いた二人は、酔いどれで厭世的な言葉を吐く作者ウィレム・デフォーに幻滅、僅かにアンネ・フランクの家で慰めを見出すが、恐らくそんな作者との出会いも無駄ではなく、彼女は、実は彼女以上に末期状態にあり何事もなしえず忘れられることを恐れるエルゴート君に「一人に忘れられなければ良いではないか」と成長したところを見せ、彼の死後立派に弔辞を述べる。
それほど明確ではないが、彼女の回想形式による進行で、主人公が死病を患っていることを早々に観客に示して映画の方向を決める態度が良い。逆に気に入らないのはアメリカ製ヤング・アダルト映画お決まりの、モノローグによるナレーション。これで暫し興醒めた気分が続く。
しかし、ハイティーン二人の言動はなかなか立派なもので、かつてのイタリア児童死病映画のように単に親が右往左往する様子を描くのではなく、寧ろ病人たちが自分が死んだ後残される家族のことを考えている。アメリカ死病映画はもはや【死=悲しい】という単純な図式を取らない。死を懸命に考えることで生の意味が浮き彫りになる作品が多い。これは向上である。
僕も何もせずに死ぬようです。名前は残らずとも、もう少し何かやり遂げたかったなあ、とは思う。
この記事へのコメント
>ギネス記録
そういうのがあったか!
ねこのひげさん、有難うございます<(_ _)>
記録になるかはともかく、1万くらい記事は書きたいですね。
2030年くらいまでかかりそうですが、それまで命が続いていればできるかも^^
書いた映画評はとうの昔に1万を超えていますが、古い映画評を載せるのも姑息でしょうね(笑)