映画評「KANO~1931海の向こうの甲子園~」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年台湾映画 監督マー・ジーシアン
ネタバレあり
野球ファンで、中学の頃から百科事典を眺めるのが趣味だったから、高校野球の項目を読み、戦前(当時は中学野球)満州、朝鮮、台湾から代表チームが送られてきたのは知っていた。しかし、決勝まで進んだとは知らなんだ(知っていたのだろうが、忘れた)。
本作は1931年、台湾においてでさえ一勝も出来なかった嘉義農林学校野球部に、事情があって本土中学野球部の監督を辞めた近藤兵太郎(永瀬正敏)が就任する。彼が、豪腕投手・呉明捷(ツァオ・ヨウニン)や豪打の蘇正生らの力を伸ばし、漢人・先住民(映画の中では蛮族とか言っていた)・日本人を、夫々の長所を生かしてバランス良く起用した結果、あれよあれよと言う間に勝ち抜いて台湾代表になり、甲子園に乗り込んで来る。
ここでも彼らは力を出し切り、決勝まで進むが、呉が肉刺(まめ)を潰した結果制球を乱して失点、結局史上最強とも言われる中京商に4-0で敗れる。が、彼らはここで得るべきものは得たのである。
名監督・近藤に率いられた嘉義農林通称“かのう”はその後4回(春1回、夏3回)甲子園出場を果たすが、最初の出場における成績を超えることはなかった。
呉明捷は早大で野手として活躍、長嶋茂雄に破られるまで東京六大学の本塁打記録(7本=タイ記録)を持っていたという。恥ずかしながらこれも知らなかったなあ。
野球がテーマと聞いて断然興味が湧いた本作、親日的な態度でありながら厳しく日本統治時代の台湾にアプローチしてきたウェイ・ダーションは脚本を書いたものの製作に回り、新人マー・ジーシアンに監督を任せている。従来の態度と変わったところはないが、多分に大衆的な甘い印象が漂うのは監督がご本人でないせいかもしれない。しかし、それが功を奏して台湾でも日本でも頗る評判が良い。
僕としては、全編ほぼ野球場面という作りは気に入ったものの、不満も少なくない。
第一。二回戦で嘉義と戦って敗れた札幌商のエース(青木健)が出征した台湾で空いた時間に嘉義の練習場を見て(こんな練習場の中学に負けたのか、と)がっかりしまた感嘆もするところがある。言わば彼が狂言回しで、人物配置としては非常に良いが、些か不器用な場面構成である憾みが残る。
第二に、台湾の治水事業に活躍した八田興一氏(大沢たかお)の交え方のぎこちなさ。彼の登場は常に唐突な印象を伴い、事前に会話に出しておくなどの工夫が必要だったように思う。
全体として、良い内容ではあるものの、構成的に不満を覚える所以。
台湾代表の野手ツァオ・ヨウニンが呉明捷のダイナミックなフォームを上手く再現しているようだ。読売ジャイアンツやボストン・レッドソックスで活躍した(今も現役の)岡島秀樹投手を少し思い出す。
野球を見るなら「バンクーバーの朝日」より楽しめますぞ。
2014年台湾映画 監督マー・ジーシアン
ネタバレあり
野球ファンで、中学の頃から百科事典を眺めるのが趣味だったから、高校野球の項目を読み、戦前(当時は中学野球)満州、朝鮮、台湾から代表チームが送られてきたのは知っていた。しかし、決勝まで進んだとは知らなんだ(知っていたのだろうが、忘れた)。
本作は1931年、台湾においてでさえ一勝も出来なかった嘉義農林学校野球部に、事情があって本土中学野球部の監督を辞めた近藤兵太郎(永瀬正敏)が就任する。彼が、豪腕投手・呉明捷(ツァオ・ヨウニン)や豪打の蘇正生らの力を伸ばし、漢人・先住民(映画の中では蛮族とか言っていた)・日本人を、夫々の長所を生かしてバランス良く起用した結果、あれよあれよと言う間に勝ち抜いて台湾代表になり、甲子園に乗り込んで来る。
ここでも彼らは力を出し切り、決勝まで進むが、呉が肉刺(まめ)を潰した結果制球を乱して失点、結局史上最強とも言われる中京商に4-0で敗れる。が、彼らはここで得るべきものは得たのである。
名監督・近藤に率いられた嘉義農林通称“かのう”はその後4回(春1回、夏3回)甲子園出場を果たすが、最初の出場における成績を超えることはなかった。
呉明捷は早大で野手として活躍、長嶋茂雄に破られるまで東京六大学の本塁打記録(7本=タイ記録)を持っていたという。恥ずかしながらこれも知らなかったなあ。
野球がテーマと聞いて断然興味が湧いた本作、親日的な態度でありながら厳しく日本統治時代の台湾にアプローチしてきたウェイ・ダーションは脚本を書いたものの製作に回り、新人マー・ジーシアンに監督を任せている。従来の態度と変わったところはないが、多分に大衆的な甘い印象が漂うのは監督がご本人でないせいかもしれない。しかし、それが功を奏して台湾でも日本でも頗る評判が良い。
僕としては、全編ほぼ野球場面という作りは気に入ったものの、不満も少なくない。
第一。二回戦で嘉義と戦って敗れた札幌商のエース(青木健)が出征した台湾で空いた時間に嘉義の練習場を見て(こんな練習場の中学に負けたのか、と)がっかりしまた感嘆もするところがある。言わば彼が狂言回しで、人物配置としては非常に良いが、些か不器用な場面構成である憾みが残る。
第二に、台湾の治水事業に活躍した八田興一氏(大沢たかお)の交え方のぎこちなさ。彼の登場は常に唐突な印象を伴い、事前に会話に出しておくなどの工夫が必要だったように思う。
全体として、良い内容ではあるものの、構成的に不満を覚える所以。
台湾代表の野手ツァオ・ヨウニンが呉明捷のダイナミックなフォームを上手く再現しているようだ。読売ジャイアンツやボストン・レッドソックスで活躍した(今も現役の)岡島秀樹投手を少し思い出す。
野球を見るなら「バンクーバーの朝日」より楽しめますぞ。
この記事へのコメント
知らんことが多いものです。
最近、実話が多いですよねえ。
作家の想像力或いは創造力が足りないという面もバックアップしているとは言え、実話自体がかなり奇なり。