映画評「博士と彼女のセオリー」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年イギリス映画 監督ジェームズ・マーシュ
ネタバレあり
今世紀になってTVで何度か拝見したことがある為、物理学者スティーヴン・ホーキングの名前は知っているが、紛うことなき文系人間につき、具体的に何をしたのかはよく知らなかった。
最初の妻ジェーン・ワイルドとの日々を軸にその彼の半生を描く(それもそのはず、彼女が彼との生活を綴った著書が原作)のが眼目で、昨年妻と共に交通事故死した数学者ジョン・ナッシュの「ビューティフル・マインド」(2001年)に通底する伝記映画である。
1963年、21歳のスティーヴン(エディ・レドメイン)はパーティーで文系美人ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と知り合った直後、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症して2年の命と宣告されるが、彼女は彼との結婚を望み、彼女の献身的な介護と深い理解の結果、彼は物理学に多大な功績を残し、病状も一定以上進まなくなる。
四半世紀後、彼は優秀な介護士エレイン(マクシン・ピーク)と共に渡米すると言って、彼女の長年に渡る献身と、一家の面倒を良く見た牧師(チャーリー・コックス)への彼女の思慕を思いやる事実上の離婚を宣言する。
ただ最初から最後まで献身、献身というお話では勿論なく、親切な牧師との互いの思慕などを交えてジェーンの人間的な側面を描いている為、二人の愛情交換が感銘を生み出す。しかし、一番肝心な場面即ち彼の事実上の離婚宣言(と言おうか、彼女への離婚許可)の場面が婉曲的或いは文芸趣味すぎて、その感銘が減殺されたような気がしないでもない。僕の感性が近年甚だ鈍くなって彼らの台詞、行動の意味を直感的に理解できなかった面も否めないのであるが、自分のことは棚に置くわけ(笑)。
最後は、ホーキング博士の理論【時間順序保護仮説】(本作鑑賞後に少し博士について調べた)に逆らうかのように、時間が逆回りして彼の半生を走馬燈的に見せる。時間をテーマにした作品には珍しくない趣向ながら、博士の理論を考えると、ちょっと洒落ていると言って良いのかもしれない。
監督は、なかなか面白いドキュメンタリー「マン・オン・ワイヤー」を撮ったジェームズ・マーシュ、堅実な進行ぶりでかなり見やすい映画になっている。
エディ・レドメインはアカデミー主演男優賞に値する熱演。が、僕はそれ以上に献身的な女性を好演したフェリシティ・ジョーンズの清楚な美しさに痺れたデス。
エディ君はフィリポッツの推理小説「赤毛のレドメイン家」の子孫じゃろか。
2014年イギリス映画 監督ジェームズ・マーシュ
ネタバレあり
今世紀になってTVで何度か拝見したことがある為、物理学者スティーヴン・ホーキングの名前は知っているが、紛うことなき文系人間につき、具体的に何をしたのかはよく知らなかった。
最初の妻ジェーン・ワイルドとの日々を軸にその彼の半生を描く(それもそのはず、彼女が彼との生活を綴った著書が原作)のが眼目で、昨年妻と共に交通事故死した数学者ジョン・ナッシュの「ビューティフル・マインド」(2001年)に通底する伝記映画である。
1963年、21歳のスティーヴン(エディ・レドメイン)はパーティーで文系美人ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と知り合った直後、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症して2年の命と宣告されるが、彼女は彼との結婚を望み、彼女の献身的な介護と深い理解の結果、彼は物理学に多大な功績を残し、病状も一定以上進まなくなる。
四半世紀後、彼は優秀な介護士エレイン(マクシン・ピーク)と共に渡米すると言って、彼女の長年に渡る献身と、一家の面倒を良く見た牧師(チャーリー・コックス)への彼女の思慕を思いやる事実上の離婚を宣言する。
ただ最初から最後まで献身、献身というお話では勿論なく、親切な牧師との互いの思慕などを交えてジェーンの人間的な側面を描いている為、二人の愛情交換が感銘を生み出す。しかし、一番肝心な場面即ち彼の事実上の離婚宣言(と言おうか、彼女への離婚許可)の場面が婉曲的或いは文芸趣味すぎて、その感銘が減殺されたような気がしないでもない。僕の感性が近年甚だ鈍くなって彼らの台詞、行動の意味を直感的に理解できなかった面も否めないのであるが、自分のことは棚に置くわけ(笑)。
最後は、ホーキング博士の理論【時間順序保護仮説】(本作鑑賞後に少し博士について調べた)に逆らうかのように、時間が逆回りして彼の半生を走馬燈的に見せる。時間をテーマにした作品には珍しくない趣向ながら、博士の理論を考えると、ちょっと洒落ていると言って良いのかもしれない。
監督は、なかなか面白いドキュメンタリー「マン・オン・ワイヤー」を撮ったジェームズ・マーシュ、堅実な進行ぶりでかなり見やすい映画になっている。
エディ・レドメインはアカデミー主演男優賞に値する熱演。が、僕はそれ以上に献身的な女性を好演したフェリシティ・ジョーンズの清楚な美しさに痺れたデス。
エディ君はフィリポッツの推理小説「赤毛のレドメイン家」の子孫じゃろか。
この記事へのコメント
肉体改造というか酷使して筋萎縮病は発症したホーキンス博士を演じたようであります。
日本の若手俳優でも鈴木亮平君などは役柄により太ってみたり痩せてみたり・・・
今度の舞台の三島由紀夫の戯曲『癪王のテラス』では筋肉隆々な姿に変身しております。
最近の若者は・・・・などという言葉が通じなくなっている若者がスポーツの世界でも増えてきておりますな。
老兵は去るのみでありますかね・・・
>イートン校
博士とウィリアム王子が同級生かと思いましたが、半世紀位違いますね(笑)
>役柄により太ってみたり痩せてみたり・・・
デニーロ・アプローチと言い、最近こういう根性のある役者が増えてきましたね。
>老兵は去るのみ
諾。もう少し本は読みたい(笑)