映画評「水爆と深海の怪物」

☆☆★(5点/10点満点中)
1955年アメリカ映画 監督ロバート・ゴードン
ネタバレあり

2年前に続くWOWOWによる、レイ・ハリーハウゼン特撮映画特集第2集の第1弾。

ケネス・トビーが艦長を務める最新型の潜水艦が深海で身動きが取れなくなる。辛うじて生還した彼は、その際にこびりついていた物質を持ち帰る。科学者を呼んで調べさせたところでは、巨大なタコの一部らしいと言う。その一人が美人生物学者フェイス・ドマーグで、当時の特撮映画の定石(註*)通り彼女はトビーと恋に落ちる。

(*)この時代、即ち市民権を得る前のSF映画は多く特撮を見せる為にお話をひねり出す性格上、それも小予算であったから、どうしてもこうした尺稼ぎの要素に頼らざるを得なかったのである。しかも、二人が浜辺で行うラブ・シーンは「地上より永遠に」(1953年)から拝借したご愛嬌。

彼らの推測通り潜水艦の数倍もある巨大なタコが現れ、遂にサンフランシスコに到達した為当局が総力を挙げて立ち向かう。

2年後の「地球へ2千万マイル」(1957年)の宇宙怪獣を巨大タコに置き換えただけのお話は面白味が薄く、演技陣も弱体ながら、主役であるSFXを限られた予算の中で最大限に生かす工夫が微笑ましい。Allcinemaの解説では節約の為に足を6本にした由であるが、足それも一本だけのショットが圧倒的に多い。こまどり姉妹ならぬコマ撮りスタイルのSFXでは全ての足を一緒に撮るのが大変だったということもあるだろう。
 苦笑が洩れる程であるが、いくら本物ぽくてもVFX(CG)が絵であるのに対し、いくら動きが不自然でもこちらはカメラで写された本物、ちゃちでも実写である。自ずと表現に限界があるからこそ、ゴールデン・ゲイト・ブリッジに足が絡みつく場面が楽しいのである。

内容については、映画界が核の恐怖をSFで訴えている時代、通常なら放射能がタコを巨大化させたという設定にするところを、本作は深海に潜んでいた巨大タコが放射能を帯びた結果、放射能を感じ取る魚に逃げられた為浮上してきたという設定にしているのが面白い。脚本陣が天邪鬼だけだったのかもしれないが、昨今餌がなくて町中に現れるイノシシを考えると、案外放射能で巨大化するよりこちらのほうが本当らしいような気さえする。

一月の大雪で、わが家の畑に隣の竹林の竹がほぼ全て倒れ込んできた。持ち主が何もしないので、凡そ三か月掛けて綺麗にした。先日その竹林の中に猪の形跡を発見。気を付けないと怪我をしますな。こういう時は通常「桑原桑原(くわばらくわばら)」と言うが、「竹林竹林」と言ったほうが良いかもしれない。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年04月24日 16:58
ごらんになりましたか(笑)
ま、多少の事には目をつぶりますが・・・この時代、B級映画の全盛期でありますからね。
稚拙さも御愛嬌として楽しんでおります。

最近、邦画でもリアリティーを求める傾向が復活してきたようで、格闘家タイプの女優が何人か出てきましたね。
オカピー
2016年04月24日 21:45
ねこのひげさん、こんにちは。

全盛期といえどもSFX映画の本数に限りがあったのも良いですね。
今のようにアメ・コミの乱造では、多少出来が良くても有難味がない。これ損ですよ。

>リアリティー
馬鹿とリアリティーは使いようといったところで、リアルさを求めるべきところは進めてほしいですね。

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    Excerpt: (c) 2005 Sony Pictures Television International. All rights reserved. レイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した映画。 今度は巨大タコだ.. Weblog: 或る日の出来事 racked: 2016-05-02 09:17