映画評「靴職人と魔法のミシン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督トム・マッカーシー
ネタバレあり

「ハリー・ポッター」以降ファンタジーにおいては「~と~」という邦題が増えた。原題に沿っている場合はともかく、安直も甚だしい。2007年に秀作「扉をたたく人」を発表した、俳優でもあるトム・マッカーシーの新作は、同作に比べると大分落ちる。

ニューヨーク下町、4代目となる靴修理屋アダム・サンドラーが、黒人ギャング“メソッド・マン”の靴を修理しようとしたところミシンが故障、そこで「いざという時以外は使うな」と代々言われ続けている古い曰くつきのミシンで直し、試しに履いてみると何と持ち主の黒人ギャングに変身してしまう。靴ではなくミシンに秘密があることに気付いた彼は、その日から色々な人物に変身して楽しむ。

というのが前半だが、前半のほうが良いという世評に反して僕はこちらのほうが気に入らない。彼が利己的な目的のためにミシンでの修理を悪用するのが好かないのである。後半或いは後段において意味を成す布石的前段として置かれているとは言え、余りに幼稚な場面群と言いたくなる。
 但し、寝たきりとなった母親の為に大昔に姿を消した父親ダスティン・ホフマンになって親孝行をするのは良い使用例で、仏教用語【嘘も方便】を思い出す。

それで安心したのか母親は翌朝死んでしまい、きちんとした葬式も出せない甲斐性のなさに忸怩たる思いを抱いている頃、黒人ギャングとの関係から、土地転がしで大儲けをしようとしている女ギャング、エレン・バーキンとその子分が立ち退かない老人フリッツ・ウィーヴァーを建物ごと放火して殺そうとしていることを知り、変身を利用して一味を罠に嵌める。

安易であり児戯に類するお話であることは前半と変わらないものの、変身が展開上意味を成すのは断然こちらであるし、それ以上に変身の使い方が利己的から利他的になったこと、即ち主人公が社会的になっていることが認められるのが良い。安直であるそしりは免れないと思うが。

隣の理容師スティーヴ・ブシェミの秘密は、その出没の仕方で中盤くらいに想像できる人が多いだろう。

今日のニュースで言えば、「バドミントンと遠のくメダル」ですね。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年04月10日 09:16
愚かな行動に走った後に反省して、より良い行動をするようになるというのはおとぎ話の常道でありますがね。

バトミントン・・・反省しているようですから、チャンスを与えるべきでありましょうね。
オカピー
2016年04月10日 20:49
ねこのひげさん、こんにちは。

>おとぎ話の常道
全くその通りなのです(笑)

>バドミントン
まあ、公営ギャンブルでない賭博は違法ということ以上に背後が暴力団というのが問題で、その為に野球選手の時もあれほど騒いだと思いますが、僕は選手が気の毒でしてね。何だか大犯罪のように扱うマスコミに違和感を持っています。

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