映画評「フレンチアルプスで起きたこと」

☆☆★(5点/10点満点中)
2014年スウェーデン=フランス=デンマーク=ノルウェー合作映画 監督リューベン・オストルンド
ネタバレあり

欧米でなかなか評判の良い作品らしいが、僕は最後まで見て少し理解できたくらいなので、現時点では水準的評価の星を残しておきます。

フランス側アルプスにスキー観光に訪れたスウェーデンの一家四人。バカンスの二日目に山の中腹にあるオープン・カフェで一服しているところへ、思いがけず大きくなった人口雪崩が襲い掛かり、夫君ヨハネス・クンケが子供を置いていち早く逃げてしまう。
 雪崩はカフェの手前で留まるが、夫君の逃避が面白くない細君リーサ・ローヴェ・コングスリは自然と黙りがちとなり、娘クラレ・ヴェッテルグレンと息子ヴィンセント・ヴェッテルグレンも不機嫌になる。細君の不満は他の観光客との席で爆発、さらに友人カップルとの会食でも蒸し返す。
 夫君にはこれがたまらず、退行現象を起こし、子供たちをびっくりさせる。さすがの細君も「これはいけない」と思い、霧中のスキーの時嘘の遭難を演じ、旦那に救出させる。かくして夫君の威厳が子供に戻ってくる。

というお話で、生物学的に多くの種の雄には子供を守らないという習性があるようで、夫君が不可抗力(原題)により思わず動物としての原点的行動を発揮してしまう、大真面目なコメディーと理解するのが正しい見方らしい。
 その生物学・心理学としての行動を理解しないととてもコメディーとは思えない陰鬱な場面が連続するわけで、僕も当座は雪崩が家族を崩壊させてしまう“夫婦喧嘩は犬も食わない”お話くらいに思って「面倒くさく」思ってしまったというのが実際。
 後で思えば、旦那が子供に退行する場面やスキーでのインチキ遭難場面にコメディーらしさがあるが、その時点で監督リューベン・オストルンドの意図を掴め切れていなかった僕は大いに心配しながら見ていたのであった。

いずれにしても、細君の立場から夫君をくさしてきた映画は幕切れで宗旨変えをする。山道での下手くそ千万な運転手に恐れをなしてバスを強引に止めた細君は子供たちより先に降りてしまい、後から降りてきた子供を旦那でなく他人に背負ってもらうのである。
 その後一行が黙って移動する様子を、監督はテオ・アンゲロプロス「旅芸人の記録」(1975年)よろしく延々とドリーで捉える。この皮肉っぽい幕切れをニヤニヤして見られれば本作を理解したことになるだろう。この夫婦は、生物学上の差は大してなく、似た者夫婦だったようである。そこがまた「考える葦」人間ということであろう。

会社で契約書の翻訳(英文⇒和文)を腐るほどさせられた。本作の題名Force majeure(不可抗力)は条項が当てはまらない例外規定の一つとして必ずお目にかかったのを思い出す。

この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年05月29日 18:38
とっさの行動を責められてもね・・・結局自分も同じことをしているじゃん。でありますね。
オカピー
2016年05月29日 20:21
ねこのひげさん、こんにちは。

そういう風に解釈できる幕切れでしたね。

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