映画評「白河夜船」
☆☆★(5点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・若木信吾
ネタバレあり
よしもとばななの同名短編小説を、写真家を本業とする若木信吾が映像化した純文学映画。ヒロインの眠りをむさぼる様子から「白河夜船」という気取った四字熟語がタイトルになっている。
妻(竹厚綾)が1年以上も昏睡状態にある会社員・寺川(井浦新)と不倫の関係にある無職・寺子(安藤サクラ)は、不倫という安定しない恋愛への不安から、或いは親友しおり(谷村美月)の自殺によるショックから逃避するようにひたすら眠りをむさぼる。金銭的には寺川がサポートしてくれ、週一回ほどのデートを楽しむ。
ある時公園でうとうとしていると、正体不明の若い女性(紅甘)に「アルバイトしなさい」と言われる。アルバイトを実行して貰った給料の嬉しさに彼女は閉塞的な現状から抜け出すかもしれず、寺川のデートでは花火が彼女を寿ぐかのように打ち上がる。
というお話自体はさほど難解な部類ではないかもしれないが、何を言いたいかという主題に関しては僕の頭で断言できるところものが出て来ない。戦後の純文学にはこの手が多いわけで、悩ましいと同時に、色々考える面白さはある。
そのうち明らかにされているのは、公園の少女が寺川夫人の分身であるということ(パンフレットにそう解説されているらしい)。同時に、彼女はヒロイン自身の分身であると理解しても間違いではないはず。ということは、本作の心理の第一主体は、一見そう思われるヒロインではなく、昏睡状態にある寺川夫人である可能性があるということである。
親友しおりの奇妙な商売が“添い寝”で、彼女を加えて眠りの三重奏によりドラマが構成され、寺川とのベッドでしおりの夢を見ているのか、しおりの横で寺川の夢を見ているのか混沌としてくる辺りもなかなか面白い。
しかし、眠っている場面が多いので、冗談でなくこちらも眠くなる時間帯多し。
わが群馬県民の税金で作られた「眠る男」と好一対をなす「眠る女」でした。
2015年日本映画 監督・若木信吾
ネタバレあり
よしもとばななの同名短編小説を、写真家を本業とする若木信吾が映像化した純文学映画。ヒロインの眠りをむさぼる様子から「白河夜船」という気取った四字熟語がタイトルになっている。
妻(竹厚綾)が1年以上も昏睡状態にある会社員・寺川(井浦新)と不倫の関係にある無職・寺子(安藤サクラ)は、不倫という安定しない恋愛への不安から、或いは親友しおり(谷村美月)の自殺によるショックから逃避するようにひたすら眠りをむさぼる。金銭的には寺川がサポートしてくれ、週一回ほどのデートを楽しむ。
ある時公園でうとうとしていると、正体不明の若い女性(紅甘)に「アルバイトしなさい」と言われる。アルバイトを実行して貰った給料の嬉しさに彼女は閉塞的な現状から抜け出すかもしれず、寺川のデートでは花火が彼女を寿ぐかのように打ち上がる。
というお話自体はさほど難解な部類ではないかもしれないが、何を言いたいかという主題に関しては僕の頭で断言できるところものが出て来ない。戦後の純文学にはこの手が多いわけで、悩ましいと同時に、色々考える面白さはある。
そのうち明らかにされているのは、公園の少女が寺川夫人の分身であるということ(パンフレットにそう解説されているらしい)。同時に、彼女はヒロイン自身の分身であると理解しても間違いではないはず。ということは、本作の心理の第一主体は、一見そう思われるヒロインではなく、昏睡状態にある寺川夫人である可能性があるということである。
親友しおりの奇妙な商売が“添い寝”で、彼女を加えて眠りの三重奏によりドラマが構成され、寺川とのベッドでしおりの夢を見ているのか、しおりの横で寺川の夢を見ているのか混沌としてくる辺りもなかなか面白い。
しかし、眠っている場面が多いので、冗談でなくこちらも眠くなる時間帯多し。
わが群馬県民の税金で作られた「眠る男」と好一対をなす「眠る女」でした。
この記事へのコメント
それぞれが勝手に解釈しろということですかね。
昔、入試問題に純文学が出て、その問題と解答を読んで作者がビックリしたという逸話を聞いたことがあります。
純文学映画は、文学以上に頭を要するようで、理解に難渋しますよ。
>入試問題
僕も似たような話を聞いたことあります。
大学に入ったばかりの頃、ラジオで「遠藤周作さんは『自分はこんなことを考えて書いていない』と首をかしげていた」という話でした。