映画評「黄線地帯(イエローライン)」
☆☆★(5点/10点満点中)
1960年日本映画 監督・石井輝男
ネタバレあり
新東宝の地帯(ライン)シリーズ第3作。唯一のカラー作品である。監督は変わらず石井輝男。
東京。孤児の殺し屋・天知茂が神戸税関長を殺すが、依頼した大友純は報酬授受の場所に現れず、代わりにパトカーを送り込まれる。
怒った天知は警察の手を逃れ、インチキの踊り子募集広告に応じて神戸へ向かう美人・三原葉子を人質に、同地に向かう。
彼女は赤いハイヒールを列車からわざと落として見送りに来たはずの恋人の新聞記者・吉田輝雄に追跡して貰おうとする。これに気付いた吉田は税関長殺人事件を追う名目で神戸に追いかけ、救助要請が記された100円札を追跡するうちに、大友を追う天知と接触することになる。
大友の行方を探す天知と、天知と恋人の行方を探す吉田という二つの捜索模様を並行して描くお話は割合新鮮で、必然的に彼らは同じ場所に集合することになるのだが、その舞台となるのが神戸の外人に女性を提供する黄線(イエローライン)。
開巻直後は当時大人気だったヌーヴェルヴァーグのようなセミ・ドキュメンタリー・タッチなのが、神戸のカスバと言われる黄線地帯に舞台(これが本当の外人部隊)が定まるとまるで戦前のフランス映画を見るような猥雑のうちに叙情を醸し出すムードに変わって、石井輝男の趣味も幅広いわいとニヤニヤさせられる。
前作までのようにお話が飛ぶ感じも少なく、話術的に進歩を感じさせてなかなか良い。終盤天知が口上を述べるのは邦画らしいが、これもまた愛嬌である。
全体として地味なカラー設計の中、三原葉子の赤い衣装が目立って面白い。
日本語で読むと、「おうせんちたい」になるらしい。どちらにしても「あ行」だ。
1960年日本映画 監督・石井輝男
ネタバレあり
新東宝の地帯(ライン)シリーズ第3作。唯一のカラー作品である。監督は変わらず石井輝男。
東京。孤児の殺し屋・天知茂が神戸税関長を殺すが、依頼した大友純は報酬授受の場所に現れず、代わりにパトカーを送り込まれる。
怒った天知は警察の手を逃れ、インチキの踊り子募集広告に応じて神戸へ向かう美人・三原葉子を人質に、同地に向かう。
彼女は赤いハイヒールを列車からわざと落として見送りに来たはずの恋人の新聞記者・吉田輝雄に追跡して貰おうとする。これに気付いた吉田は税関長殺人事件を追う名目で神戸に追いかけ、救助要請が記された100円札を追跡するうちに、大友を追う天知と接触することになる。
大友の行方を探す天知と、天知と恋人の行方を探す吉田という二つの捜索模様を並行して描くお話は割合新鮮で、必然的に彼らは同じ場所に集合することになるのだが、その舞台となるのが神戸の外人に女性を提供する黄線(イエローライン)。
開巻直後は当時大人気だったヌーヴェルヴァーグのようなセミ・ドキュメンタリー・タッチなのが、神戸のカスバと言われる黄線地帯に舞台(これが本当の外人部隊)が定まるとまるで戦前のフランス映画を見るような猥雑のうちに叙情を醸し出すムードに変わって、石井輝男の趣味も幅広いわいとニヤニヤさせられる。
前作までのようにお話が飛ぶ感じも少なく、話術的に進歩を感じさせてなかなか良い。終盤天知が口上を述べるのは邦画らしいが、これもまた愛嬌である。
全体として地味なカラー設計の中、三原葉子の赤い衣装が目立って面白い。
日本語で読むと、「おうせんちたい」になるらしい。どちらにしても「あ行」だ。
この記事へのコメント
小林旭の渡り鳥シリーズなんかもそうでしたが・・・
こういった馬鹿々々しい映画というもあってよいですがね。
「ライン」シリーズは、日活アクションほど無国籍的ではないのですが、本作のカスバは日活映画も顔負けの無国籍ぶり。
星は多く付けかねるものの、お気に入りのシリーズになりました。