映画評「ミケランジェロ・プロジェクト」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年アメリカ=ドイツ合作映画 監督ジョージ・クルーニー
ネタバレあり
ナチス・ドイツが戦争中に占領した各地から美術品を奪ったのはつとに知られた逸話で、それに関する連合軍との攻防は幾つかの映画で扱われているが、特化したのはサスペンスの傑作「大列車作戦」(1964年)で、本作がそれに次ぐ。出来栄えは及ばないが、1960年代の娯楽系戦争映画を意識したような音楽と展開ぶりが、オールド・ファンにはちょいと嬉しい。
戦争末期、ドイツ軍の美術品略奪を知って憂慮するアメリカの美術館長ジョージ・クルーニーが、ルーズヴェルト大統領に直訴して奪還を企図する。国内の著名な美術関係者マット・デーモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ボブ・バラバン、ヒュー・ボネヴィル、フランスのジャン・デュジャルダンを招集、ドイツ生まれの兵士ディミトリ・レオニダスを加えて作戦に乗り出し、慣れない前線での活動に苦労しながら成果を出していく。
殆ど実話に則ったお話で、ナチス協力者と見なされていたフランスの美人学芸員としてケイト・ブランシェットが絡んでくる。
実話をベースにしていると言ってもシリアス一辺倒というわけではなく、それどころかのんびりとコミカルなムードで進行する部分が目立ち、全体としては「オーシャンズ11」の戦場版のような印象に推移、潔癖症の方が不真面目な印象を覚える可能性は大であるが、こういう娯楽性を前面に出した作品はあるべきであるし、モチーフ自体は一向に不真面目ではない。
恐らく、偶像崇拝禁止の理由からイスラム原理主義者の連中タリバンがバーミヤンの石仏を壊し、ISがパルミラの遺跡を壊すなどした蛮行に危機感を募らせたアメリカの文化人が現在の思いを70年前のナチスにダブらせ、こういう作品を作るに至ったのであろう。
映画に戻る。クルーニーが監督や共同脚色に絡んだ本作は、些か説明不足だったり場面の繋ぎに雑な部分があるなど上出来とは言いかねるが、冒頭で述べたように、半世紀前の映画の気分があり、その意味でなかなか楽しめる。
他の文化を尊重できないやつらは野蛮人。マホメットが泣いてるじゃろ。
2014年アメリカ=ドイツ合作映画 監督ジョージ・クルーニー
ネタバレあり
ナチス・ドイツが戦争中に占領した各地から美術品を奪ったのはつとに知られた逸話で、それに関する連合軍との攻防は幾つかの映画で扱われているが、特化したのはサスペンスの傑作「大列車作戦」(1964年)で、本作がそれに次ぐ。出来栄えは及ばないが、1960年代の娯楽系戦争映画を意識したような音楽と展開ぶりが、オールド・ファンにはちょいと嬉しい。
戦争末期、ドイツ軍の美術品略奪を知って憂慮するアメリカの美術館長ジョージ・クルーニーが、ルーズヴェルト大統領に直訴して奪還を企図する。国内の著名な美術関係者マット・デーモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ボブ・バラバン、ヒュー・ボネヴィル、フランスのジャン・デュジャルダンを招集、ドイツ生まれの兵士ディミトリ・レオニダスを加えて作戦に乗り出し、慣れない前線での活動に苦労しながら成果を出していく。
殆ど実話に則ったお話で、ナチス協力者と見なされていたフランスの美人学芸員としてケイト・ブランシェットが絡んでくる。
実話をベースにしていると言ってもシリアス一辺倒というわけではなく、それどころかのんびりとコミカルなムードで進行する部分が目立ち、全体としては「オーシャンズ11」の戦場版のような印象に推移、潔癖症の方が不真面目な印象を覚える可能性は大であるが、こういう娯楽性を前面に出した作品はあるべきであるし、モチーフ自体は一向に不真面目ではない。
恐らく、偶像崇拝禁止の理由からイスラム原理主義者の連中タリバンがバーミヤンの石仏を壊し、ISがパルミラの遺跡を壊すなどした蛮行に危機感を募らせたアメリカの文化人が現在の思いを70年前のナチスにダブらせ、こういう作品を作るに至ったのであろう。
映画に戻る。クルーニーが監督や共同脚色に絡んだ本作は、些か説明不足だったり場面の繋ぎに雑な部分があるなど上出来とは言いかねるが、冒頭で述べたように、半世紀前の映画の気分があり、その意味でなかなか楽しめる。
他の文化を尊重できないやつらは野蛮人。マホメットが泣いてるじゃろ。
この記事へのコメント
慌ただしくなくて良かったであります。
最近、トム・クルーズの作品が立て続けに地上波で流れると思ったら、『アウトロー』の第二弾が公開されるようであります。
『アウトロー』けっこうおもしろかったので期待大であります。
本作によると、ヒトラーはピカソなど現代美術は焼きましたが、19世紀以前のものは大事にしたようです。それだけでも相当な喪失ですけれど・・・
しかし、収集したものに関する「自分が死んだら燃やせ」というネロ指令が戴けない。
>『アウトロー』
ハードボイルドでなかなか良かったですよね。
監督が替わっていなければ、画面も揺れなくてよいのですが、どうなのか後で調べてみましょう。