映画評「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督ビル・ポーラッド
ネタバレあり
後世への影響力という点でビートルズに大きく差を開けられてしまったが、同時代的にはビーチ・ボーイズの影響力も大きかった。しかし、軟弱なサーフィン・サウンドというイメージが先行して、日本のロック・ファンへの訴求力は弱かったと思う。
1966年ビートルズが「ラバー・ソウル」を発表すると、そのトータル性に影響され、ビーチ・ボーイズNo.1のコンポーザー、ブライアン・ウィルソンが中心となって「ペット・サウンズ」を作る。これに触発されてビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発表し、ここからロックは暫くアート系が隆盛することになる。
本作は、その1966年から67年にかけてのブライアンがマーク・ダノ、1980年代半ばのブライアンがジョン・キューザックにより演じられる伝記映画である。
映画の中の彼の言によると、デビュー時から精神に問題があったようであるが、やはり重要なコンポーザー、従弟マイク・ラヴ(ジェイク・ラベル)との音楽的対立がその病気を進行させた模様。1980年代その病気が悪化して音楽的活動を殆どしていなかった彼が、自動車販売店で美人販売店員メリンダ(エリザベス・バンクス)と知り合ったことから、病気を利用して彼を封じ込め大儲けしようと企む精神科医ランディ(ポール・ジアマッティ)の束縛から解放されることになる。
一部では、「ペット・サウンズ」は評価されたが売り上げが芳しくなく、これがブライアンの病気を進めた一因とも言われている。その後企画されたLP「スマイル」を巡って前述通りマイク・ラヴとの音楽思想の差からの確執が生じ、結局ブライアンが妥協、解りやすい曲だけで構成された「スマイリー・スマイル」が発売される。このLPにはビーチ・ボーイズで一番重要な曲とされる「グッド・バイブレーション」が収録されているが、その妥協の為に後年「サージェント・ペパー」に伍する可能性を棒に振ることになった。
「ペット・サウンズ」を「サージェント・ペパー」の上に置く人がないでもないものの、【ローリング・ストーン】誌は後世への影響力No.1LPを「サージェント・ペパー」としている。
彼の立場から描かれているので、強欲な精神科医も父権主義的な父親も悪く描かれているが、この部分に関しては多少大げさになっているように感じると同時に、彼の主観とは言え、彼ほどの大スターがここまで壮絶な人生を送っていたことにビックリ。麻薬ではない薬に苦しめられたスターのお話として相当興味深く見られる。
ビーチ・ボーイズの曲は勿論たっぷり、それ以外の楽曲も出て来るので、ベテランの洋楽ファンなら必見。60年代と80年代とをなかなか滑らかに往復させ、かつ、相互に効果が出るように作られているので、映画としても見応え十分でござる。
邦画「陽だまりの彼女」で「ペット・サウンズ」から「素敵じゃないか」が使われていたよねえ。みゃおー。
2015年アメリカ映画 監督ビル・ポーラッド
ネタバレあり
後世への影響力という点でビートルズに大きく差を開けられてしまったが、同時代的にはビーチ・ボーイズの影響力も大きかった。しかし、軟弱なサーフィン・サウンドというイメージが先行して、日本のロック・ファンへの訴求力は弱かったと思う。
1966年ビートルズが「ラバー・ソウル」を発表すると、そのトータル性に影響され、ビーチ・ボーイズNo.1のコンポーザー、ブライアン・ウィルソンが中心となって「ペット・サウンズ」を作る。これに触発されてビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発表し、ここからロックは暫くアート系が隆盛することになる。
本作は、その1966年から67年にかけてのブライアンがマーク・ダノ、1980年代半ばのブライアンがジョン・キューザックにより演じられる伝記映画である。
映画の中の彼の言によると、デビュー時から精神に問題があったようであるが、やはり重要なコンポーザー、従弟マイク・ラヴ(ジェイク・ラベル)との音楽的対立がその病気を進行させた模様。1980年代その病気が悪化して音楽的活動を殆どしていなかった彼が、自動車販売店で美人販売店員メリンダ(エリザベス・バンクス)と知り合ったことから、病気を利用して彼を封じ込め大儲けしようと企む精神科医ランディ(ポール・ジアマッティ)の束縛から解放されることになる。
一部では、「ペット・サウンズ」は評価されたが売り上げが芳しくなく、これがブライアンの病気を進めた一因とも言われている。その後企画されたLP「スマイル」を巡って前述通りマイク・ラヴとの音楽思想の差からの確執が生じ、結局ブライアンが妥協、解りやすい曲だけで構成された「スマイリー・スマイル」が発売される。このLPにはビーチ・ボーイズで一番重要な曲とされる「グッド・バイブレーション」が収録されているが、その妥協の為に後年「サージェント・ペパー」に伍する可能性を棒に振ることになった。
「ペット・サウンズ」を「サージェント・ペパー」の上に置く人がないでもないものの、【ローリング・ストーン】誌は後世への影響力No.1LPを「サージェント・ペパー」としている。
彼の立場から描かれているので、強欲な精神科医も父権主義的な父親も悪く描かれているが、この部分に関しては多少大げさになっているように感じると同時に、彼の主観とは言え、彼ほどの大スターがここまで壮絶な人生を送っていたことにビックリ。麻薬ではない薬に苦しめられたスターのお話として相当興味深く見られる。
ビーチ・ボーイズの曲は勿論たっぷり、それ以外の楽曲も出て来るので、ベテランの洋楽ファンなら必見。60年代と80年代とをなかなか滑らかに往復させ、かつ、相互に効果が出るように作られているので、映画としても見応え十分でござる。
邦画「陽だまりの彼女」で「ペット・サウンズ」から「素敵じゃないか」が使われていたよねえ。みゃおー。
この記事へのコメント
番組タイトルは『幸せのテネシーワルツ』。
月一回で第一金曜日。
パットブーンとかナット・キングコールとか懐かしい普段は流れてこないような歌が聞けました。
朝4時から6時。
期間限定なので9月分が最終回とか。
ライバル会社同士で人気のあった二人が組んで番組を作るんですから、時間の流れを感じますね。
昔は群馬でFM東京を良い状態で聞くのは難しく、大型アンテナをつけたもの。それでもマルチ・パスが避けられなかったものですが、昨今はネット・ラジオというものがあるらしく(まともに利用したことがないです)、非常に良い時代になりましたよねえ。
NHK以外のAMがまともに聞けなかった群馬で育った人間なので、彼らの全盛時代のことに関しては思い出がないのですが、二人とも戦中生まれで70代ですよね。
僕も良い年なんだから当たり前なんだけど、永六輔も大橋巨泉も亡くなり、寂しくなりましたね。
ご紹介の番組は、ネット・ラジオで聞けるようなら聞いてみますね。しかし、まだ寝ている時間だな(笑)