映画評「人生の約束」
☆☆★(5点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・石橋冠
ネタバレあり
WOWOWの【メガヒット劇場】に出るくらいだからヒットしたのだろうが、昔から愛用している映画サイト【allcinema】にはたった一人のコメントしかない。コメントを寄せるのがベテランの映画マニアが多いサイトなので、元々本作のようなTVもどきの作品は至って人気が薄いが、それにしても近年このサイトのコメントは減っている。
監督はTVシリーズ「池中玄太80キロ」などの演出家・石橋冠で、初映画作品と聞く。そのせいか、出演している西田敏行の役名が玄太郎というご愛敬。
IT関連企業のCEO竹野内豊は、一緒に会社を立ち上げ3年前に追い出す形となった旧友からの無言電話が気になってその故郷の富山県新湊(射水市)へ赴くと、悪い予感は当たって、その葬儀を見かけることになる。その義兄・江口洋介は手荒い歓迎をするが、他の人々は故人が地元・四十物町(あいものちょう)の曳山(ひきやま)に最後の命を賭けていたと話す。
遺児の女子高生・高橋ひかると話すうちに会社の拡張にかまけて本来の自分を失っていたことに気付いた彼は、自らに出資法違反の容疑がかかって大変な時期にも拘らず、曳山を譲渡した隣町(町内会長・柄本明が悪役になる西町はさすが実在しない模様)が曳山祭における約束を守らないことを知って落ち込んでいる町民の為にひと肌脱ぐことにする。
主人公が人間性を取り戻す様を描いたヒューマン・ドラマであるが、実質的に新湊のご当地映画ということになるだろう。祭の概要が一通り解るし、赤灯台を左に立山連峰を捉えたショットが頗る美しい。会社の元同僚が故郷の石川県に帰ったので、高速道路を使って遊びに行ったことが二度ある。その通りがかりに観た立山連峰と全く同じで感慨を催した。
このショットが象徴するように、誠にお行儀のよいシャシン(映画)で、悪役や会社の不祥事は出て来ても全く毒がない型通りの扱い。僕はひねくれた人間ではないので、そうした作品に何の抵抗感はないものの、こじんまりときちんとまとめられすぎて、些か物足りない。
主人公の設定が堀江某氏に似ている。最近クイズ番組でよくお見かけするが、クイズ番組と言えば、先日の「ネプリーグ」における林修氏の“頗る”の解説は不適当だった。“僅かに、少し”の意としたが、それは古語・文語としてであって、現代語では“非常に”の意。本稿でも使ったように、個人的によく使う単語だけにドキッとした。
2015年日本映画 監督・石橋冠
ネタバレあり
WOWOWの【メガヒット劇場】に出るくらいだからヒットしたのだろうが、昔から愛用している映画サイト【allcinema】にはたった一人のコメントしかない。コメントを寄せるのがベテランの映画マニアが多いサイトなので、元々本作のようなTVもどきの作品は至って人気が薄いが、それにしても近年このサイトのコメントは減っている。
監督はTVシリーズ「池中玄太80キロ」などの演出家・石橋冠で、初映画作品と聞く。そのせいか、出演している西田敏行の役名が玄太郎というご愛敬。
IT関連企業のCEO竹野内豊は、一緒に会社を立ち上げ3年前に追い出す形となった旧友からの無言電話が気になってその故郷の富山県新湊(射水市)へ赴くと、悪い予感は当たって、その葬儀を見かけることになる。その義兄・江口洋介は手荒い歓迎をするが、他の人々は故人が地元・四十物町(あいものちょう)の曳山(ひきやま)に最後の命を賭けていたと話す。
遺児の女子高生・高橋ひかると話すうちに会社の拡張にかまけて本来の自分を失っていたことに気付いた彼は、自らに出資法違反の容疑がかかって大変な時期にも拘らず、曳山を譲渡した隣町(町内会長・柄本明が悪役になる西町はさすが実在しない模様)が曳山祭における約束を守らないことを知って落ち込んでいる町民の為にひと肌脱ぐことにする。
主人公が人間性を取り戻す様を描いたヒューマン・ドラマであるが、実質的に新湊のご当地映画ということになるだろう。祭の概要が一通り解るし、赤灯台を左に立山連峰を捉えたショットが頗る美しい。会社の元同僚が故郷の石川県に帰ったので、高速道路を使って遊びに行ったことが二度ある。その通りがかりに観た立山連峰と全く同じで感慨を催した。
このショットが象徴するように、誠にお行儀のよいシャシン(映画)で、悪役や会社の不祥事は出て来ても全く毒がない型通りの扱い。僕はひねくれた人間ではないので、そうした作品に何の抵抗感はないものの、こじんまりときちんとまとめられすぎて、些か物足りない。
主人公の設定が堀江某氏に似ている。最近クイズ番組でよくお見かけするが、クイズ番組と言えば、先日の「ネプリーグ」における林修氏の“頗る”の解説は不適当だった。“僅かに、少し”の意としたが、それは古語・文語としてであって、現代語では“非常に”の意。本稿でも使ったように、個人的によく使う単語だけにドキッとした。
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