映画評「青空娘」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1957年日本映画 監督・増村保造
ネタバレあり

半世紀近く前角川文庫の既刊本のコーナーで読みたい本を物色していた時、獅子文六や源氏鶏太の著作がたくさんリストアップされていたが、家庭小説やサラリーマン小説だったため余り興味を覚えず、今日に至るまで一編も読んでいない。現在、獅子文六には読みたい作品があるが、源氏氏には特にない。図書館に本作の原作でもあれば読んでみようか。

さて、本作は後々艶(つや)っぽいコンビ作をものすことになる増村保造監督=若尾文子主演の記念すべき第一作である。

地方の高校を卒業した若尾文子が、東京で社長をしている父親・信欣三の家に引き取られることになるが、愛人・三宅邦子の子供であるため、正妻・沢村貞子やその3人の子供たちからお手伝い扱いにされ虐められる。つまり、シンデレラ姫の現代日本版もどきなり。
 やがて長女・穂高のり子の取り巻き連中が集まった時に上流階級の御曹司・川崎敬三が彼女を気に入って、彼女が上京前に思慕し一足先に上京していた恩師・菅原謙二と三角関係となる。彼女が東京にいる実母を探しているのを知った菅原は自分が商業画家として働いている建物の掃除婦がそれと気づき、川崎と一致協力して二人を再会させ、かつ恋のキューピッド役に転じる。
 ヒロインは、虐めて来た一家の不幸の原因が優柔不断な父親にあると断じて、病床にある父親を叱責すると、一家と縁を切って凛々しく去っていく。

母親が菅原のすぐ傍にいるなどご都合主義的なところがあるものの、増村=若尾コンビとは思えぬ明朗快活な青春映画になっているのが良い。シンデレラの翻案みたいなお話なのに徹底してヒロインが明るく、虐めた人々ではなくその原因を作った父親をこらしめるという展開がなかなか新鮮。僕は若尾文子を特にご贔屓としていないが、それでもその明朗さのうちにそこはかとない色気を醸し出すのは彼女ならではの感がある。

増村監督の進行ぶりも誠に快調で、全体的に他愛ない内容ながら、邦画ファンなら観ておく価値があるだろう。

恋人たちが知り合うきっかけとなる卓球の試合がハイライトとも言えるが、角度と初速から言って台に入らないであろうという印象のボールが幾つかある(のにラリーが続く)のがご愛敬。

高校の時クラス対抗戦で卓球代表になった。相手が前年まで卓球部にいた強敵だった為、見事に初戦敗退しました。

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