映画評「妻は告白する」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1961年日本映画 監督・増村保造
ネタバレあり
WOWOWによる、増村保造監督=若尾文子主演のコンビ作特集第2弾。
穂高でロッククライミング中の三人が宙吊りになり、そのうち真ん中に位置していた妻・若尾がザイルを切った為大学教授の夫・小沢栄太郎が落下して死ぬ。若尾と夫がアドバイザーを務めている製薬会社の社員・川口浩は助かるが、二人が愛人関係にあり、かつ夫に保険金が掛けられていたため、彼女が故意にザイルを切ったとして検察は訴える。弁護士は自分の命を長らえる為に緊急避難であったと主張する。
裁判の過程で映画は三人の関係性をまず綴る。生活のために親ほど年の離れた夫と結婚した彼女は、彼女を人間的に扱わない夫に耐えかねている。川口は取引先社長の令嬢・馬渕晴子と婚約していて、若尾に対する感情は同情を大きく超えるものではない。寧ろ裁判により愛情に変わっていくのである。
緊急避難の主張が通って彼女は無罪を勝ち取るが、彼女の心底(しんてい)に憎らしい夫を殺して思慕を寄せている川口を助けたいという欲求があったと知った彼は潔癖症の精神を発揮して別れたくなる。ずぶ濡れになって会社に現れた彼女は彼を翻意させることができず、学生時代から持っていた青酸カリで死ぬ。
というお話で、主題は、悲劇と喜劇という違いはあるが、コンビ第一作「青空娘」と何ら変わらない。綺麗ごとを言っている優柔不断な男が女を不幸にする、これなり。
「青空娘」の欣信三と沢村貞子の関係は本作の川口浩と若尾文子の関係と全く同じ。ついでに言えば、第一作の若尾の位置にいるのが馬渕晴子で、ヒロインが死んだ後彼女は川口に「女は愛する為に殺人までもする」と言う。これはフェミズム映画として女性の立場を明確にする為に必要な台詞だったであろうが、誰がどう考えてもそうとしか考えられない状況において「あんたが彼女を殺したのよ」という台詞は全くの余分で、これがある為に余韻も何もなくなってしまった。九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)にかく、という奴である。
ザイルと言えば、井上靖「氷壁」を思い出す。
1961年日本映画 監督・増村保造
ネタバレあり
WOWOWによる、増村保造監督=若尾文子主演のコンビ作特集第2弾。
穂高でロッククライミング中の三人が宙吊りになり、そのうち真ん中に位置していた妻・若尾がザイルを切った為大学教授の夫・小沢栄太郎が落下して死ぬ。若尾と夫がアドバイザーを務めている製薬会社の社員・川口浩は助かるが、二人が愛人関係にあり、かつ夫に保険金が掛けられていたため、彼女が故意にザイルを切ったとして検察は訴える。弁護士は自分の命を長らえる為に緊急避難であったと主張する。
裁判の過程で映画は三人の関係性をまず綴る。生活のために親ほど年の離れた夫と結婚した彼女は、彼女を人間的に扱わない夫に耐えかねている。川口は取引先社長の令嬢・馬渕晴子と婚約していて、若尾に対する感情は同情を大きく超えるものではない。寧ろ裁判により愛情に変わっていくのである。
緊急避難の主張が通って彼女は無罪を勝ち取るが、彼女の心底(しんてい)に憎らしい夫を殺して思慕を寄せている川口を助けたいという欲求があったと知った彼は潔癖症の精神を発揮して別れたくなる。ずぶ濡れになって会社に現れた彼女は彼を翻意させることができず、学生時代から持っていた青酸カリで死ぬ。
というお話で、主題は、悲劇と喜劇という違いはあるが、コンビ第一作「青空娘」と何ら変わらない。綺麗ごとを言っている優柔不断な男が女を不幸にする、これなり。
「青空娘」の欣信三と沢村貞子の関係は本作の川口浩と若尾文子の関係と全く同じ。ついでに言えば、第一作の若尾の位置にいるのが馬渕晴子で、ヒロインが死んだ後彼女は川口に「女は愛する為に殺人までもする」と言う。これはフェミズム映画として女性の立場を明確にする為に必要な台詞だったであろうが、誰がどう考えてもそうとしか考えられない状況において「あんたが彼女を殺したのよ」という台詞は全くの余分で、これがある為に余韻も何もなくなってしまった。九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)にかく、という奴である。
ザイルと言えば、井上靖「氷壁」を思い出す。
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