映画評「リオの男」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年フランス=イタリア合作映画 監督フィリップ・ド・ブロカ
ネタバレあり
ジャン=ポール・ベルモンド主演作に「リオの男」「カトマンズの男」「タヒチの男」「コニャックの男」という作品群がある。日本では「男」シリーズみたいな感じに仕立てられたが、このうち本当のシリーズと言えるのは二本だけ。さて、それは何と何でしょう? ベテランさんでさえ憶えている方は少ないだろうから答えを言ってしまうと、冒険アクションをフィーチャーした本作と「カトマンズの男」である。
本作は40年位前にTVで観て相当面白かった記憶があるが、詳細を忘れており、ずっと見たいと思っていた作品。今年一番のWOWOWからのプレゼントかなもしれない。
「華麗なる大泥棒」(1971年)でも触れたように、ベルモンドはジャッキー・チェンの先駆者的な存在で、本作など資金の問題からスタントマンも大がかりなSFXも使わないことになったらしいが、チェンのように物凄いカンフーの技といった特徴はないにしても、走り、自転車に乗り、泳ぎ、車を飛ばし、飛行機に乗る。とにかく休む間もなく動き回っている。飛行機の操縦以外は大体自分でやっているのだろう。
パリの博物館からアステカ文明もどきの古代の石像が盗まれるのが発端。
一週間の休暇を貰った見習い航空兵ベルモンドが、戻った先で待っていた婚約者フランソワーズ・ドルレアックを目の前で誘拐され、こっそり追いかけていくうちにリオに到着。麻薬で朦朧としていた意識が戻った彼女と石像を持つ実業家アドルフォ・チェリに危険を知らせようとする矢先、もう一つの石像を持つ考古学者ジャン・セルヴェを誘拐者の車に発見、一緒にチェリを訪問する。
が、セルヴェは被害者ではなく加害者で、チェリを殺した後フランソワーズをジャングルに拉致。ベルモンドは邪魔をする子分たちを振り払って懸命に追いかける。
サイレント時代のスラップスティック・コメディー(バスター・キートンなど)を彷彿とする直線型の内容で、(本作製作より20年くらい後に生まれる言葉の)ジェットコースター映画と言うには少し気が抜けるところが散見されるものの、そういう雰囲気は十分あり、最後の一幕はその生みの親たる「レイダース/失われた聖櫃」を先取った内容になっている。確証は持てないが、町山智浩氏によれば、「レイダース」は本作の影響を受けた映画ということになるらしい。「ルパン3世」が影響を受けたのは昔からよく語られる話で、本作に限らずベルモンドのアクション映画全般ということだろう。少なくとも、世の人が考える以上に、ベルモンド若しくはベルモンドのアクションが色々なところに影響を及ぼしているのは間違いない。
監督をしたフィリップ・ド・ブロカはとぼけたタッチでご贔屓にしている監督で、本作で時々気が抜けるのは彼らしいというより80年代以前のフランス映画らしい。採点上はマイナスになるものの、僕はフランス映画のそうしたところが好きだった。
カトリーヌ・ドヌーヴの姉フランソワーズ・ドルレアックの珍しいコメディー演技も楽しい。
WOWOWとNHKの皆さん、フィルムに雨が降っていてもいいので、1970年代以前の映画をもっと放映してください。
1964年フランス=イタリア合作映画 監督フィリップ・ド・ブロカ
ネタバレあり
ジャン=ポール・ベルモンド主演作に「リオの男」「カトマンズの男」「タヒチの男」「コニャックの男」という作品群がある。日本では「男」シリーズみたいな感じに仕立てられたが、このうち本当のシリーズと言えるのは二本だけ。さて、それは何と何でしょう? ベテランさんでさえ憶えている方は少ないだろうから答えを言ってしまうと、冒険アクションをフィーチャーした本作と「カトマンズの男」である。
本作は40年位前にTVで観て相当面白かった記憶があるが、詳細を忘れており、ずっと見たいと思っていた作品。今年一番のWOWOWからのプレゼントかなもしれない。
「華麗なる大泥棒」(1971年)でも触れたように、ベルモンドはジャッキー・チェンの先駆者的な存在で、本作など資金の問題からスタントマンも大がかりなSFXも使わないことになったらしいが、チェンのように物凄いカンフーの技といった特徴はないにしても、走り、自転車に乗り、泳ぎ、車を飛ばし、飛行機に乗る。とにかく休む間もなく動き回っている。飛行機の操縦以外は大体自分でやっているのだろう。
パリの博物館からアステカ文明もどきの古代の石像が盗まれるのが発端。
一週間の休暇を貰った見習い航空兵ベルモンドが、戻った先で待っていた婚約者フランソワーズ・ドルレアックを目の前で誘拐され、こっそり追いかけていくうちにリオに到着。麻薬で朦朧としていた意識が戻った彼女と石像を持つ実業家アドルフォ・チェリに危険を知らせようとする矢先、もう一つの石像を持つ考古学者ジャン・セルヴェを誘拐者の車に発見、一緒にチェリを訪問する。
が、セルヴェは被害者ではなく加害者で、チェリを殺した後フランソワーズをジャングルに拉致。ベルモンドは邪魔をする子分たちを振り払って懸命に追いかける。
サイレント時代のスラップスティック・コメディー(バスター・キートンなど)を彷彿とする直線型の内容で、(本作製作より20年くらい後に生まれる言葉の)ジェットコースター映画と言うには少し気が抜けるところが散見されるものの、そういう雰囲気は十分あり、最後の一幕はその生みの親たる「レイダース/失われた聖櫃」を先取った内容になっている。確証は持てないが、町山智浩氏によれば、「レイダース」は本作の影響を受けた映画ということになるらしい。「ルパン3世」が影響を受けたのは昔からよく語られる話で、本作に限らずベルモンドのアクション映画全般ということだろう。少なくとも、世の人が考える以上に、ベルモンド若しくはベルモンドのアクションが色々なところに影響を及ぼしているのは間違いない。
監督をしたフィリップ・ド・ブロカはとぼけたタッチでご贔屓にしている監督で、本作で時々気が抜けるのは彼らしいというより80年代以前のフランス映画らしい。採点上はマイナスになるものの、僕はフランス映画のそうしたところが好きだった。
カトリーヌ・ドヌーヴの姉フランソワーズ・ドルレアックの珍しいコメディー演技も楽しい。
WOWOWとNHKの皆さん、フィルムに雨が降っていてもいいので、1970年代以前の映画をもっと放映してください。
この記事へのコメント
それよりもベルモンドの運動能力は素晴らしいです!SFXなどない時代。あれだけ生身の身体で出来るとは凄い!また、ベルモンドよりも腕力が強い相手と闘う時のいろいろな工夫も面白いです。この作品が与えた影響は大きいでしょう。
>(1)供給が不安定。
資源がない国日本。宿命です。
>(2)蓄電を使う際に必要な揚水のコスト。
>賠償費用や原発所在地に払う費用、廃炉費用などの相当部分が加えられている。
どちらを取るべきか?国民にわかりやすい説明をしてくれる訳はないですか・・・(諦め)。
>(3)使用しなくなったパネルといった部材の廃棄問題。
こちらの方が小さいです。
>(4)というより火を見るより明らかな事実
うまい(拍手!)
>「世界のどこにもミサイルを防げる原発はない」
数学の命題のようです。 逆は偽。
細かい説明をありがとうございました。
>昨日日本語吹替版を見ました。とても面白かったです!ベルモンドの声は山田康雄さん。ルパン三世とイメージが重なりました。
本文でも書きましたが、ベルモンドや「男」シリーズなどが「ルパン三世」に大きな影響を与えているのは確かでしょう。
>フランソワーズ・ドルレアック
美人姉妹は運命が偏ると言う人がよくいます。当たっているかも知れません・・・。
>アドルフォ・チェリ
「007サンダーボール作戦」の悪役。この作品では、割とあっさりと・・・。
>フィルムに雨が降っていてもいいので、1970年代以前の映画をもっと放映してください。
これは僕も同じ事をいつも思います。お願いします!
>洋画を見た後に必ず読む双葉師匠の「ぼくの採点表」。
僕もそうですね。
同時代的には、採点が良いものは読まず、そうでもないものだけを読んでいました。
僕が採点をトップに持ってきているのも、その為です。
>見ものは新首都のブラジリア・ロケでまるでSFの未来都市のよう。
当時の日本よりブラジリアは先進的でしたものねえ。
>>1970年代以前の映画をもっと放映してください。
>これは僕も同じ事をいつも思います。お願いします!
特にNHKですが、古い映画が出ないわけではないものの、西部劇以外は、定評のある作品ばかりが繰り返し出てきます。これが問題です。
NHK-BSが始まった頃の意気込みはどこへ、という感じ。
そして我儘な俳優兼監督が悟りを開いて素直になっていくのが良かったです。
>採点が良いものは読まず、そうでもないものだけを読んでいました。
オカピー教授らしくていいですね~!
>当時の日本よりブラジリアは先進的でしたものねえ。
なぜか思い出しました。加山雄三主演「リオの若大将」。
>NHK-BSが始まった頃の意気込みはどこへ、という感じ。
そうです。ジョン・レノン主演「私の戦争」(原題:How I won the war)、リンゴ・スター準主役「マジック・クリスチャン」を放映してくれた1990年代が懐かしいです。
>「大病人」を先ほど見ました。手術の場面や他の患者が死んでいく場面が凄かったです。
「大病人」は以下で読めますので、どうぞ。
https://hokapi2.seesaa.net/article/200601article_4.html
>なぜか思い出しました。加山雄三主演「リオの若大将」。
録ってありますが、未鑑賞です。
>そうです。ジョン・レノン主演「私の戦争」、リンゴ・スター準主役「マジック・クリスチャン」を放映してくれた1990年代
1910年代の映画までやっていたのですが、スーパーでしたよ。
週に20本くらいという放映本数も凄く、中途半端に新しい映画は全くありませんでしたね。