映画評「近キョリ恋愛」
☆☆(4点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・熊澤尚人
ネタバレあり
みきもと凛なる漫画家の作品の実写映画化。ドラマ版もあったらしい。ほぼ同時期にアニメ・シリーズがあったり、ドラマ版があったり、相乗効果を狙っているのか、この手の作品の作られ方が目立つ。コミックは一切読まんし、ドラマもアニメも観ない僕は、映画として面白ければそれで良いのだけれどね。
実は大分以前からWOWOWに出ていたらしいが、近年邦画の青春映画若しくは恋愛映画に手応えを覚えた例がない為無視していたのに、何を間違ったか観てしまった。ひねったタイトルに押されたというところか。
学校一の秀才ながら英語を些か苦手としている才媛・小松菜奈が、美男の英語教師・山下智久から補修を言い渡され、論理的思考で徹底的に反発しようとするものの、感情を表情に出さない彼女の癖から心理の動揺を巧みに読む山下先生に押されるうちに、互いに恋愛感情が芽生え、英語の成績の上昇と共に芽生えたカリフォルニア大学への進学と恋愛との狭間で悩む。
といったお話なのだが、近年観た青春恋愛映画のなかでも荒唐無稽を極め、ご挨拶に困る。
一科目をかなり苦手としながら全校1位になれる程度の学校だから進学校ではあるまい。学園トップが推薦での進学を示唆されるというのも、進学校では余りないだろう。
ところが、奇跡が起こる。英語の偏差値が65になるや、信奉する遺伝学の教授(その名もメンデル! 笑える)のいるアメリカの大学へ受かってしまうのである。これはない。それには英検1級の実力が必要だろうが、大学模試の英語の偏差値が65では、TOEIC900点以上の人でもなかなか取れない英検1級には程遠い。高校時代から外国人との付き合いが多い甥は大学に入って英検1級を取った後英国へ留学に旅立った(本年帰国予定)が、それでも結構苦労していると聞く。彼女程度の英語力で外国の大学に合格するのは「ビリギャル」のヒロインより奇跡度が高いのではないか。
どうもこの辺りが気になって肝心のロマンスを上の空で見ることになったが、二人の行動が珍なることこの上なく僕は腹を抱えて観ておりました。「学校では、先生と生徒だ」と言った傍から学校で軟派な行動を取る先生にも、感情を抑えるのをポリシーとしてきたのに一旦感情を瓦解させるや恋愛感情を抑えきれなくなってしまうヒロインにも首を傾げてしまう。
描写で気になったのは、彼女が感情を抑えていることを示す服を握りしめる動作を馬鹿の一つ覚えのように何十回も見せること。三角関係・四角関係となっているくせに、最近のコミック作品の映画化の例に洩れず、本命のカップルの周囲が聖人君子ばかりなので嘘のようにすっきりお話が進むのも物足りない。
かくして、大人には何を楽しめば良いか解らないが、思春期の少女たちにはこういう浮世離れしたロマンスが良いのだろうね。
緑(青)の光線の話は、常識ではないのか? これを知っていると却ってつまらない。
2015年日本映画 監督・熊澤尚人
ネタバレあり
みきもと凛なる漫画家の作品の実写映画化。ドラマ版もあったらしい。ほぼ同時期にアニメ・シリーズがあったり、ドラマ版があったり、相乗効果を狙っているのか、この手の作品の作られ方が目立つ。コミックは一切読まんし、ドラマもアニメも観ない僕は、映画として面白ければそれで良いのだけれどね。
実は大分以前からWOWOWに出ていたらしいが、近年邦画の青春映画若しくは恋愛映画に手応えを覚えた例がない為無視していたのに、何を間違ったか観てしまった。ひねったタイトルに押されたというところか。
学校一の秀才ながら英語を些か苦手としている才媛・小松菜奈が、美男の英語教師・山下智久から補修を言い渡され、論理的思考で徹底的に反発しようとするものの、感情を表情に出さない彼女の癖から心理の動揺を巧みに読む山下先生に押されるうちに、互いに恋愛感情が芽生え、英語の成績の上昇と共に芽生えたカリフォルニア大学への進学と恋愛との狭間で悩む。
といったお話なのだが、近年観た青春恋愛映画のなかでも荒唐無稽を極め、ご挨拶に困る。
一科目をかなり苦手としながら全校1位になれる程度の学校だから進学校ではあるまい。学園トップが推薦での進学を示唆されるというのも、進学校では余りないだろう。
ところが、奇跡が起こる。英語の偏差値が65になるや、信奉する遺伝学の教授(その名もメンデル! 笑える)のいるアメリカの大学へ受かってしまうのである。これはない。それには英検1級の実力が必要だろうが、大学模試の英語の偏差値が65では、TOEIC900点以上の人でもなかなか取れない英検1級には程遠い。高校時代から外国人との付き合いが多い甥は大学に入って英検1級を取った後英国へ留学に旅立った(本年帰国予定)が、それでも結構苦労していると聞く。彼女程度の英語力で外国の大学に合格するのは「ビリギャル」のヒロインより奇跡度が高いのではないか。
どうもこの辺りが気になって肝心のロマンスを上の空で見ることになったが、二人の行動が珍なることこの上なく僕は腹を抱えて観ておりました。「学校では、先生と生徒だ」と言った傍から学校で軟派な行動を取る先生にも、感情を抑えるのをポリシーとしてきたのに一旦感情を瓦解させるや恋愛感情を抑えきれなくなってしまうヒロインにも首を傾げてしまう。
描写で気になったのは、彼女が感情を抑えていることを示す服を握りしめる動作を馬鹿の一つ覚えのように何十回も見せること。三角関係・四角関係となっているくせに、最近のコミック作品の映画化の例に洩れず、本命のカップルの周囲が聖人君子ばかりなので嘘のようにすっきりお話が進むのも物足りない。
かくして、大人には何を楽しめば良いか解らないが、思春期の少女たちにはこういう浮世離れしたロマンスが良いのだろうね。
緑(青)の光線の話は、常識ではないのか? これを知っていると却ってつまらない。
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