映画評「5時から7時の恋人カンケイ」
☆☆★(5点/10点満点中)
2014年アメリカ映画 監督ヴィクター・レヴィン
ネタバレあり
このタイトルは長く遍く映画を見ている方ならアニェス・ヴァルダの「5時から7時までのクレオ」Cleo de 5 a 7を思い出すに違いないが、お話は全く関係ない。但し、フランス女性をヒロインにしていることなどから作者ヴィクター・レヴィン(監督・脚本)は多分に意識してタイトル5 to 7を付けていると推量される。日本では全く未輸入で、WOWOWの今回の放映が日本初紹介とのこと。
24歳の作家志願アントン・イェルチンが、街角で年上と思しきフランス女性ベレニス・マルローと知り合い、交際を始めるが、5時から7時まで限定のデート。というのも彼女は既婚者だからで、二人の子供もいる不倫関係と知って彼はびっくり。
ある時金持ちの夫君ランベール・ウィルソンから声をかけられて夫公認の不倫と知ってなお驚くが、彼らのパーティーで知り合った女性編集者オリヴィア・サールビーの東奔西走により彼は作家として徐々に花開いていく。同時に古風な考えの持ち主である若者は彼女を妻に持ちたいと思い指輪を贈り、夫君からも多額の生活資金を貰うが、結局彼女は結婚生活を維持する。
セリフを多く用いたり、カップルを長回しで追跡したり、リチャード・リンクレイターに影響を受けた印象もあるが、彼の作品群のようにセリフは辛辣ではなく洒落っ気が優先される。恋愛映画として透明度が高く、昨今流行りのえげつなさがない。アントン・イェルチンの純情で朴訥な感じとフランス人女優ベレニス・マルローの透明な美しさによるものである。が、【子はかすがい】の常識に縛られた幕切れが物足りず、あたら長蛇(ちょうだ)を逃した印象が強い。僕も古風な人間だから、実はこういう展開のほうが共感ができるのですがね。
最後のシークエンスで、数年ぶりに互いに家族連れで再会したヒロインが手袋を外して彼から贈られた指輪を彼に見せる辺りは大昔のロマンスを見ているようなムードがあり悪くない。このシークエンスは、子供を連れたヒロインと主人公が再会するジャック・ドミ監督「シェルブールの雨傘」のもじりのよう。ヴァルダとドミはヌーヴェル・ヴァーグ左岸派を代表する作家で夫婦であるから、もし意図していたなら実に面白いではないか。
さらにフランソワ・トリュフォーの「突然炎のごとく」は実際の映像が出て来て、「フランス人の三角関係の考え方は面白いものよ」とアメリカ人の感想を匂わす。この三つ作品は1961年から63年にかけて作られたもの。監督はフランス映画ファンだろう。
イェルチンは昨年交通事故で急死したそうだが、本作について調べるまで僕は知らなかった。柔らかい雰囲気の面白い男優だっただけに大変惜しい。合掌!
2014年アメリカ映画 監督ヴィクター・レヴィン
ネタバレあり
このタイトルは長く遍く映画を見ている方ならアニェス・ヴァルダの「5時から7時までのクレオ」Cleo de 5 a 7を思い出すに違いないが、お話は全く関係ない。但し、フランス女性をヒロインにしていることなどから作者ヴィクター・レヴィン(監督・脚本)は多分に意識してタイトル5 to 7を付けていると推量される。日本では全く未輸入で、WOWOWの今回の放映が日本初紹介とのこと。
24歳の作家志願アントン・イェルチンが、街角で年上と思しきフランス女性ベレニス・マルローと知り合い、交際を始めるが、5時から7時まで限定のデート。というのも彼女は既婚者だからで、二人の子供もいる不倫関係と知って彼はびっくり。
ある時金持ちの夫君ランベール・ウィルソンから声をかけられて夫公認の不倫と知ってなお驚くが、彼らのパーティーで知り合った女性編集者オリヴィア・サールビーの東奔西走により彼は作家として徐々に花開いていく。同時に古風な考えの持ち主である若者は彼女を妻に持ちたいと思い指輪を贈り、夫君からも多額の生活資金を貰うが、結局彼女は結婚生活を維持する。
セリフを多く用いたり、カップルを長回しで追跡したり、リチャード・リンクレイターに影響を受けた印象もあるが、彼の作品群のようにセリフは辛辣ではなく洒落っ気が優先される。恋愛映画として透明度が高く、昨今流行りのえげつなさがない。アントン・イェルチンの純情で朴訥な感じとフランス人女優ベレニス・マルローの透明な美しさによるものである。が、【子はかすがい】の常識に縛られた幕切れが物足りず、あたら長蛇(ちょうだ)を逃した印象が強い。僕も古風な人間だから、実はこういう展開のほうが共感ができるのですがね。
最後のシークエンスで、数年ぶりに互いに家族連れで再会したヒロインが手袋を外して彼から贈られた指輪を彼に見せる辺りは大昔のロマンスを見ているようなムードがあり悪くない。このシークエンスは、子供を連れたヒロインと主人公が再会するジャック・ドミ監督「シェルブールの雨傘」のもじりのよう。ヴァルダとドミはヌーヴェル・ヴァーグ左岸派を代表する作家で夫婦であるから、もし意図していたなら実に面白いではないか。
さらにフランソワ・トリュフォーの「突然炎のごとく」は実際の映像が出て来て、「フランス人の三角関係の考え方は面白いものよ」とアメリカ人の感想を匂わす。この三つ作品は1961年から63年にかけて作られたもの。監督はフランス映画ファンだろう。
イェルチンは昨年交通事故で急死したそうだが、本作について調べるまで僕は知らなかった。柔らかい雰囲気の面白い男優だっただけに大変惜しい。合掌!
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