映画評「偉大なるマルグリット」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年フランス=チェコ=ベルギー合作映画 監督グザヴィエ・ジャノリ
ネタバレあり
アメリカに実在して音源も残っている音痴の歌姫フローレンス・フォスター・ジェンキンスをヒントに作られたフランス映画。
1920年のフランス、チャリティを目的とするサロン音楽会で、主催者の男爵夫人カトリーヌ・フロが主役として登場、自信満々に歌い始めるが、初めて聞いた新聞記者シルヴァン・ディエードはその音痴ぶりに驚愕、これを使わない手がないと、前衛画家の友人と組んで急進的な催し者に駆り出す。
彼女の歌声より風紀紊乱的な騒動の方が注目されただけなのに、自分が音痴であることに一向に気付かない彼女はリサイタルをする希望を持ち出す。浮気者の夫君アンドレ・マルコンは、妻に恥をかかせるのは不憫と食い止めようとするが、その生き生きした表情を観ると制止しきれず、食い詰めた声楽家ミシェル・フォーを雇って練習に励ませる。実質的にこれを画策してきたのは、主人の写真を撮ったり運転手など何でもやる黒人の使用人ドニ・ムプンガである。
リサイタルで結局彼女は笑いものになり歌い切る前に吐血、入院して自分は大歌手であると妄想し始める。医師は治療の一環として彼女の歌を録音する。夫君は最初彼女に自分の歌を聞かせるというショック療法に賛同した後翻意するが、間に合わない。
というお話で、最終的に浮かび上がるのは夫婦の愛情である。夫が浮気をしているのは解るが、妻の彼への想いや何故あそこまで歌い続けるのか曖昧なので、その愛情にピントが合いにくい憾みがある。フランス映画的なシニカルな味がそこはかとなく滋味溢れる夫婦の愛情関係を包んで悪くない出来栄えと思うものの、もう少し設定を明確にしたほうが馴染みやすい作品になっただろう。
狂言回しの使用人の扱いがなかなか面白い。彼が最後にショックで気を失った妻を支える夫の写真を冷静に撮るのを見ると、親身に支えてきた彼こそ彼女を利用していたのではないかという気がしてくる。しかし、そのシニカルさは良いとしても、彼の目的が同様に曖昧であるため食い足りないところが出て来るのが惜しい。
本作一番の謎は、彼女が血を吐く直前、急にうまくなること。あれが何だったのか解る人、手を挙げて!
YouTubeで実物の歌声を聴く。映画そのままなので笑い転げた。これこそ「人生は小説よりも奇なり」じゃね。
2015年フランス=チェコ=ベルギー合作映画 監督グザヴィエ・ジャノリ
ネタバレあり
アメリカに実在して音源も残っている音痴の歌姫フローレンス・フォスター・ジェンキンスをヒントに作られたフランス映画。
1920年のフランス、チャリティを目的とするサロン音楽会で、主催者の男爵夫人カトリーヌ・フロが主役として登場、自信満々に歌い始めるが、初めて聞いた新聞記者シルヴァン・ディエードはその音痴ぶりに驚愕、これを使わない手がないと、前衛画家の友人と組んで急進的な催し者に駆り出す。
彼女の歌声より風紀紊乱的な騒動の方が注目されただけなのに、自分が音痴であることに一向に気付かない彼女はリサイタルをする希望を持ち出す。浮気者の夫君アンドレ・マルコンは、妻に恥をかかせるのは不憫と食い止めようとするが、その生き生きした表情を観ると制止しきれず、食い詰めた声楽家ミシェル・フォーを雇って練習に励ませる。実質的にこれを画策してきたのは、主人の写真を撮ったり運転手など何でもやる黒人の使用人ドニ・ムプンガである。
リサイタルで結局彼女は笑いものになり歌い切る前に吐血、入院して自分は大歌手であると妄想し始める。医師は治療の一環として彼女の歌を録音する。夫君は最初彼女に自分の歌を聞かせるというショック療法に賛同した後翻意するが、間に合わない。
というお話で、最終的に浮かび上がるのは夫婦の愛情である。夫が浮気をしているのは解るが、妻の彼への想いや何故あそこまで歌い続けるのか曖昧なので、その愛情にピントが合いにくい憾みがある。フランス映画的なシニカルな味がそこはかとなく滋味溢れる夫婦の愛情関係を包んで悪くない出来栄えと思うものの、もう少し設定を明確にしたほうが馴染みやすい作品になっただろう。
狂言回しの使用人の扱いがなかなか面白い。彼が最後にショックで気を失った妻を支える夫の写真を冷静に撮るのを見ると、親身に支えてきた彼こそ彼女を利用していたのではないかという気がしてくる。しかし、そのシニカルさは良いとしても、彼の目的が同様に曖昧であるため食い足りないところが出て来るのが惜しい。
本作一番の謎は、彼女が血を吐く直前、急にうまくなること。あれが何だったのか解る人、手を挙げて!
YouTubeで実物の歌声を聴く。映画そのままなので笑い転げた。これこそ「人生は小説よりも奇なり」じゃね。
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