映画評「波止場」
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1954年アメリカ映画 監督イーリア・カザン
ネタバレあり
イーリア・カザンの代表作である。高校時代に一度、ブログ開始数年前に一度観ているはずなので、都合3度目になると思う。
ある港町。プロボクサー崩れの不良青年テリー(マーロン・ブランドー)が知人の沖仲仕ジョーイに声をかけて屋上に誘う。屋上には組合長的な立場で沖仲仕を牛耳っているヤクザのジョニー(リー・J・コッブ)の子分数名が待ち受けていて、いきなり突き落とす。そうとは知らなかったテリーは親分に文句を言うが、相手にもされない。ジョーイは当局に一味の犯罪的行為について証言することになってい、口塞ぎの為に殺されたのである。
これを見過ごせないのは妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)や神父(カール・マルデン)で、沖仲仕を集めて立ち上がろうと鼓舞するが、彼らにはジョニー一味が怖い。
テリーはイディと恋に落ちて徐々にジョニーに反旗を翻そうという気分になり、犯罪調査委員会に証言しないように説得した兄チャーリー(ロッド・スタイガー)を無視する。役に立たなかったチャーリーがその為に殺され、怒り心頭に発したテリーは、委員会の証言の後、四面楚歌になりかけた朝、遂に力でジョニーに勝負に挑む。元プロボクサーの彼も多勢に無勢で重傷を負うが、すっかり彼に傾倒した沖仲仕たちの声援を受けて何とか立ち上がり、沖仲仕の仕事場に向う。
翌年発表する「エデンの東」に共通する項目が多いと思う。不良がかっている主人公の優しさを示す鳩のエピソードなど、「エデンの東」の畑に相当しようか。屋上にある鳩小屋での描写が実に素晴らしい。
この鳩小屋の描写を見れば解るようにカザンは絵作りとショットの感覚に秀でた監督で、本作でも枚挙にいとまがない程だが、場面全体と併せて考えると、一味に呼び出しを受けたブランドーが外に出るやエヴァと共に車に追いかけられて轢かれそうになった直後に、そのヘッドライトに照らされてスタイガーの宙吊りになった死体が浮かび上がるショットが圧巻である。神父マルデンの言葉と考え合わせれば、キリストを思わせるものと言っても良い。
兄の為に八百長をし身を持ち崩してチンピラに落ちぶれた元プロボクサーの青年が、真面目な女性を知り合うことで、人間として蘇っていくという内容は、「エデンの東」に比べて深みがないと思われるが、甘い人情に流されない展開とハードボイルドなタッチは断然秀逸だ。
悪に染まり切らないブランドー演じるテリーの若者像は、ジェームズ・ディーンによるキャルと通底するものとして、実に繊細に彫琢され、ブランドーの演技共々映画史に残るものであろう。新人だったエヴァ・マリー・セイントは好演で、カール・マルデン、リー・J・コッブ、ロッド・スタイガーの助演も充実している。
エヴァ・マリー・セイント・・・イヴにマリア様に聖者・・・キリスト教関連の人物づくしだね。
1954年アメリカ映画 監督イーリア・カザン
ネタバレあり
イーリア・カザンの代表作である。高校時代に一度、ブログ開始数年前に一度観ているはずなので、都合3度目になると思う。
ある港町。プロボクサー崩れの不良青年テリー(マーロン・ブランドー)が知人の沖仲仕ジョーイに声をかけて屋上に誘う。屋上には組合長的な立場で沖仲仕を牛耳っているヤクザのジョニー(リー・J・コッブ)の子分数名が待ち受けていて、いきなり突き落とす。そうとは知らなかったテリーは親分に文句を言うが、相手にもされない。ジョーイは当局に一味の犯罪的行為について証言することになってい、口塞ぎの為に殺されたのである。
これを見過ごせないのは妹のイディ(エヴァ・マリー・セイント)や神父(カール・マルデン)で、沖仲仕を集めて立ち上がろうと鼓舞するが、彼らにはジョニー一味が怖い。
テリーはイディと恋に落ちて徐々にジョニーに反旗を翻そうという気分になり、犯罪調査委員会に証言しないように説得した兄チャーリー(ロッド・スタイガー)を無視する。役に立たなかったチャーリーがその為に殺され、怒り心頭に発したテリーは、委員会の証言の後、四面楚歌になりかけた朝、遂に力でジョニーに勝負に挑む。元プロボクサーの彼も多勢に無勢で重傷を負うが、すっかり彼に傾倒した沖仲仕たちの声援を受けて何とか立ち上がり、沖仲仕の仕事場に向う。
翌年発表する「エデンの東」に共通する項目が多いと思う。不良がかっている主人公の優しさを示す鳩のエピソードなど、「エデンの東」の畑に相当しようか。屋上にある鳩小屋での描写が実に素晴らしい。
この鳩小屋の描写を見れば解るようにカザンは絵作りとショットの感覚に秀でた監督で、本作でも枚挙にいとまがない程だが、場面全体と併せて考えると、一味に呼び出しを受けたブランドーが外に出るやエヴァと共に車に追いかけられて轢かれそうになった直後に、そのヘッドライトに照らされてスタイガーの宙吊りになった死体が浮かび上がるショットが圧巻である。神父マルデンの言葉と考え合わせれば、キリストを思わせるものと言っても良い。
兄の為に八百長をし身を持ち崩してチンピラに落ちぶれた元プロボクサーの青年が、真面目な女性を知り合うことで、人間として蘇っていくという内容は、「エデンの東」に比べて深みがないと思われるが、甘い人情に流されない展開とハードボイルドなタッチは断然秀逸だ。
悪に染まり切らないブランドー演じるテリーの若者像は、ジェームズ・ディーンによるキャルと通底するものとして、実に繊細に彫琢され、ブランドーの演技共々映画史に残るものであろう。新人だったエヴァ・マリー・セイントは好演で、カール・マルデン、リー・J・コッブ、ロッド・スタイガーの助演も充実している。
エヴァ・マリー・セイント・・・イヴにマリア様に聖者・・・キリスト教関連の人物づくしだね。
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