映画評「ゴーストバスターズ」(2016年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督ポール・フェイグ
ネタバレあり

説明するまでもなく同名旧作のリメイクである。アメリカのネタ不足は深刻と文句を言いたくなるが、第3作を作ろうとして三人組の一人ハロルド・レイミスが亡くなったため急遽第一作の作り直しに方針変更したらしく、大目に見ておこう(笑)。スパンを置いた続編は事実上のリメイクと見なすべきなので、本当はダメなのだが。

お話は、すっかり忘れたとは言うものの、オリジナルとほぼ同じであることくらいは解る。三人の男性が、クリステン・ウィグ、メリッサ・マッカーシー、ケイト・マッキノンの三人の女性に代わったのが一番の違いくらいで、これに黒人の女性駅員レスリー・ジョーンズが加わり、4人組の幽霊退治屋ゴーストバスターズが成立する。

今世紀に入ってぐっと女性が戦いやアクションに活躍する作品が増えたのは、フェミニスト・グループの見えざる圧力があったのかと揶揄したくなる程で、余りこの種のヒロイン映画が多くなると面白味がなくなるどころか辟易してくる。日本にも「大奥」という男女の生物学的違いを無視してそのまま男女逆転させるという知恵の足りない時代劇があったが、同様に本作の受付をクリス・ヘムズワースにするのはフェミニズム的に狙いすぎている感がある。但し、ムキムキの彼をとんまな事務員にするところに笑いの狙い目があるのは理解できる。ゾンビ映画にアーノルド・シュワルツェネッガーを出演させてアクションをさせないのと似た肩透かし的発想である。決して無駄遣いではなく、面白味に貢献している。

全体として、喜劇的にもファンタジー映画としても画面的にも些か古臭い感じがする・・・のは寧ろ悪くないのだが、オリジナルも余り好きではなかった当方には、何ということのない作品という印象に留まるのはご愁傷様。
 30余年前オリジナルが興味深かったのは、一連のオカルト映画ブームの後に科学的に亡霊と対峙するという着想が生まれた点で、どちらかと言えば社会学的なものである。2016-17年の現在ではそういう興味を覚えさせるものが当然ないわけで、この手のリメイクは当時なら面白くても今は面白くなりにくいタイプである。
 僕とは違う理由だろうが、アメリカではIMDbの平均得点が5.4だからかなり不評だった様子で、日本のほうが相対的に好評。

ビル・マーレイがアンチ疑似科学者として登場するなど、オリジナルの主たる出演者が亡くなったレイミスと引退したリック・モラニス以外はこぞって出演しているとのこと。シガーニー・ウィーヴァー以外は忘れてしまった。

レイ・パーカー・ジュニアの主題歌はそのままで聞きたかったねえ。

この記事へのコメント

2017年05月11日 09:53
>辟易してくる
同感ですね。それを楽しんでいる人たちもいるので、自分自身の感想として抱くだけですが、おもしろみが薄れてきてるんですよね。この映画もそういうほめられかたが盛んにされていたのを某所で見て、見る気が失せて未見のままです。もっとも、アメリカでは前作のファンがけなしまくったのでそれに反撃するという意味合いもあっての擁護だったらしいですが、予告編を映画館で観たけどさして観たい気にならなかった。
元の映画は、ビル・マーレイが、幽霊なんて信じない人だった筈なのにあるきっかけからしれっと幽霊退治を商売にするおかしさとかあって、ああいう味わいは男性じゃないと出ないんじゃないかなと思いますよ。でもこんなこと言うと今は怒られるんですよね、個人の感想なんですが。
オカピー
2017年05月11日 22:15
nesskoさん、こんにちは。

アメリカで反フェミニズムの人たちが騒いだため、世評が低くなったようですね。
日本人はある意味ノーテンキでそのあたりに関心が薄いこともあって、相対的に評価が高くなったのでしょう。
フェミニズム云々はともかく、女性たちが頑張るだけではもはや面白味がなく、お話そのものに工夫が必要でしょうねえ。
僕の印象では、実際、面白くなかった。

>でもこんなこと言うと今は怒られるんですよね
僕はテキトーに言っています。フェミニズムの件では文句を言われたことはありませんが、捕鯨問題で日本の立場を擁護したら、文句を言われたことがありましたよ。

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