映画評「オオカミ少女と黒王子」
☆☆★(5点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり
今月ここまで観た4本の新作邦画のうち3本がコミックの映画化である。文句を言うくらいなら観るなと言われそうだが、それを言われると観る新作邦画がなくなってしまう(実際相当振り落としているのだ)。それくらいコミックの映画化が多いということ。そんな中、本作を観たのは、偏にエキセントリックな二階堂ふみが主演しているからである。原作者は八田鮎子。
ふみちゃん演ずる女子高校生・篠原エリカは、賑やかな恋人歴を誇る周囲と合わせる為に“彼氏”がいると大見得を切ったため、街角で強引に撮った写真を証拠として提示する羽目になる。
ところが、その写真の被写体が同行女子の間で大人気の佐田恭也(山崎賢人)と判明した為に実際的な行動に移す必要が発生、本人に打ち明けてみる。好青年かと思いきや、“彼氏”のふりをする代わりに「犬になれ」と高圧的に命令する彼である。彼女は彼の言いたい放題に本能的に優しさを感じる。
さあ彼の本音はどうなのか。
というお話で、佐田君のサディスト的な言動・対応ぶりという捻りが一見興味深いのだが、彼が一種の“ツンデレ”であることは作劇上見え見えなので、余り面白くなっていかない。心理のすれ違いを紆余曲折の眼目とした青春劇に過ぎずがっかりだ。
ただ、カメラワークが、ロングショットが多いなど、通常のアイドル系青春恋愛映画と違う感じがあり、それが彼女が修学旅行に出る前後から顕著になる。なかなか良いセミ・ドキュメンタリー・タッチなのである。エンディング・ロールを見て監督が廣木隆一と知って納得した。
彼は必ず一箇所は素晴らしいカメラを見せるのだが、本作では佐田君にコーヒーを引っかけた喫茶店を飛び出たヒロインを前方からドリー・バックして長回しで撮るところが良い。長く回せば良いというものではないものの、自家薬籠中の物としている感じで秀逸である。
本来廣木監督のタッチは大衆映画向きではないのに、最近はこうしたアイドル系の作品を撮らされることが多く、現実に齟齬感があるところもあってミーハーに評判が悪い。彼が映画に対し力不足なのではなく、与えられる映画が彼の実力に及ばないのである、と僕はずっと思っている。彼がその持ち味であるセミ・ドキュメンタリー的感覚を生かせる作品に巡り合わんことを。
二階堂ふみのような女優にストレートな女子高生の役を与えたのが捻りと言えば捻り。
2016年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり
今月ここまで観た4本の新作邦画のうち3本がコミックの映画化である。文句を言うくらいなら観るなと言われそうだが、それを言われると観る新作邦画がなくなってしまう(実際相当振り落としているのだ)。それくらいコミックの映画化が多いということ。そんな中、本作を観たのは、偏にエキセントリックな二階堂ふみが主演しているからである。原作者は八田鮎子。
ふみちゃん演ずる女子高校生・篠原エリカは、賑やかな恋人歴を誇る周囲と合わせる為に“彼氏”がいると大見得を切ったため、街角で強引に撮った写真を証拠として提示する羽目になる。
ところが、その写真の被写体が同行女子の間で大人気の佐田恭也(山崎賢人)と判明した為に実際的な行動に移す必要が発生、本人に打ち明けてみる。好青年かと思いきや、“彼氏”のふりをする代わりに「犬になれ」と高圧的に命令する彼である。彼女は彼の言いたい放題に本能的に優しさを感じる。
さあ彼の本音はどうなのか。
というお話で、佐田君のサディスト的な言動・対応ぶりという捻りが一見興味深いのだが、彼が一種の“ツンデレ”であることは作劇上見え見えなので、余り面白くなっていかない。心理のすれ違いを紆余曲折の眼目とした青春劇に過ぎずがっかりだ。
ただ、カメラワークが、ロングショットが多いなど、通常のアイドル系青春恋愛映画と違う感じがあり、それが彼女が修学旅行に出る前後から顕著になる。なかなか良いセミ・ドキュメンタリー・タッチなのである。エンディング・ロールを見て監督が廣木隆一と知って納得した。
彼は必ず一箇所は素晴らしいカメラを見せるのだが、本作では佐田君にコーヒーを引っかけた喫茶店を飛び出たヒロインを前方からドリー・バックして長回しで撮るところが良い。長く回せば良いというものではないものの、自家薬籠中の物としている感じで秀逸である。
本来廣木監督のタッチは大衆映画向きではないのに、最近はこうしたアイドル系の作品を撮らされることが多く、現実に齟齬感があるところもあってミーハーに評判が悪い。彼が映画に対し力不足なのではなく、与えられる映画が彼の実力に及ばないのである、と僕はずっと思っている。彼がその持ち味であるセミ・ドキュメンタリー的感覚を生かせる作品に巡り合わんことを。
二階堂ふみのような女優にストレートな女子高生の役を与えたのが捻りと言えば捻り。
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