映画評「アウトバーン」

☆☆(4点/10点満点中)
2016年イギリス=ドイツ=中国合作映画 監督エラン・クリーヴィー
ネタバレあり

最近欧州を舞台にカー・アクションを繰り広げる作品が増えている。資本上の理由だけでなく、撮影上の条件もあるのかもしれない。

ドイツに仕事場を変えた車泥棒ニコラス・ホルトが、クラブでアメリカ美人フェリシティー・ジョーンズと知り合って恋に落ちるが、彼女が重篤な腎臓病を患っていることが判明する。抜本的に治すには祖国で移植手術する必要があり、その為にホルトは一度は縁を切ったギャングの親玉ベン・キングズリーの仕事を引き受けることにする。
 それは、大手企業を経営するアンソニー・ホプキンズが裏稼業でやっている高級車に隠した麻薬用の大金を奪うという仕事。高級車を積んだトラックを襲うのだが、計画通りには行かず、捕えられる。彼は隙を見てトラックから降ろされた高級車を奪って逃走、速度制限のないアウトバーンを突っ走るが、いとも簡単に追いつかれてしまう。
 やがてフェリシティを人質に取られたため、庇護を頼んだキングズリーとお金の返還を求めるホプキンズとの間に挟まれて大立ち回りを演ずることになる。

昨日の「THE FORGER」に続いて病気絡みの犯罪映画となったが、病気と犯罪の関係から言えば、死病にしなかったこちらの設計のほうが良い。しかし、犯罪の仕組み自体がつまらない。上手く作れば楽しめる見通しの良いストレートなお話を盛り立てるアイデアに欠けている。
 カー・アクションが思いのほか多くなくがっかりした上に、描写もさほどダイナミックではない。但し、実写で通した点は買いたい。十年以上前に実写で撮れるものをCGで誤魔化すのはいかんと言った愚見がカー・アクション映画では実行されている。
 序盤ホプキンズとキングズリーの交渉場面のつまらない基本通りの切り返しを見てエラン・クリーヴィーという監督はセンスがないなと思ったが、カー・アクション以外のアクションにしても型通りの見せ方に終始し、手に汗を握ると言うに至らず。

アウトバーンとフォルクスワーゲンをヒトラーの貢献に帰する人が結構いるが、あの程度のことは時代の要請であって、あの環境下のドイツの政治家であれば余程愚鈍でない限り誰でもやる。

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  • アウトバーン ★★★・5

    Excerpt: 『ウォーム・ボディーズ』などのニコラス・ホルトを主演に迎え、闇取引に巻き込まれた主人公の奮闘を描くアクションドラマ。『博士と彼女のセオリー』などのフェリシティ・ジョーンズがヒロインを演じ、オスカー俳優.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2017-05-25 14:16