映画評「ショーシャンクの空に」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1994年アメリカ映画 監督フランク・ダラボン
ネタバレあり
何年か前にIMDbで「ゴッドファーザー」(1972年)に代わって1位になって以来ずっとトップの座に君臨しているフランク・ダラボン監督作品。個人的には「パルプ・フィクション」(1993年)と並んで過大評価されている作品と思う。いずれにしても180万人が投票している怪物的作品だ。
始まりは終戦後のアメリカ。銀行の若き副頭取ティム・ロビンズが妻と愛人を射殺した冤罪で服役することになる。当初は虐待されるが、既に初老だった黒人モーガン・フリーマンと親しくなった後、持ち前の才能を生かして所長ボブ・ガントンや看守たちの財政管理をして囚人や看守を懐柔、優遇されて図書係として刑務所の図書室増設や本の購入などに活躍する。
しかし、20年近く服役した頃、新入りの若い囚人ギル・ベローズから彼の妻と愛人を殺した真犯人のニュースを聞いたことからロビンズは所長に再審への希望を打ち明けるが、彼の助けで不正な蓄財をしていた所長は保身のためにベローズを脱獄を図ったように見せかけて殺害し、ロビンズも痛めつける。
これに心穏やかでなくなったロビンズは、フリーマンから得た小型つるはしを使って入所当初より掘り続けた穴を抜けて遂に脱獄、所長の為に用意した架空の人物になって大金を得る。
お話の爽快さは文句なしだ。勧善懲悪的であり、最後の銀行絡みのアイデアも面白く、大衆映画として好評を博す理由はよく解る。官憲がしてやられる幕切れには「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)に似たムードがあるが、見せ方が正攻法であるこちらのほうが後味が良い。
堀った土をズボンに隠して外に出すアイデアが「大脱走」(1963年)と同じであったり、囚人がカラスの雛を育てるのが「終身犯」(1961年)と似ていたり、新味はそれほどないものの、およそ20年という年月をリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチという三人のグラマー女優のポスターの変遷で表現した辺りは上手い。
脱走自体の面白さで上記「大脱走」、刑務所+脱獄ものとしての感銘で「仮面の米国」(1932年)に及ばない。後者は大昔に一回しか観ていないので、アバウトな印象に過ぎないが。
(恐らく下部を留めていない)ポスターの裏に穴が開いていれば、風の流れなどですぐに穴の存在に気づくとは思いますがね(脱出後の話)。
1994年アメリカ映画 監督フランク・ダラボン
ネタバレあり
何年か前にIMDbで「ゴッドファーザー」(1972年)に代わって1位になって以来ずっとトップの座に君臨しているフランク・ダラボン監督作品。個人的には「パルプ・フィクション」(1993年)と並んで過大評価されている作品と思う。いずれにしても180万人が投票している怪物的作品だ。
始まりは終戦後のアメリカ。銀行の若き副頭取ティム・ロビンズが妻と愛人を射殺した冤罪で服役することになる。当初は虐待されるが、既に初老だった黒人モーガン・フリーマンと親しくなった後、持ち前の才能を生かして所長ボブ・ガントンや看守たちの財政管理をして囚人や看守を懐柔、優遇されて図書係として刑務所の図書室増設や本の購入などに活躍する。
しかし、20年近く服役した頃、新入りの若い囚人ギル・ベローズから彼の妻と愛人を殺した真犯人のニュースを聞いたことからロビンズは所長に再審への希望を打ち明けるが、彼の助けで不正な蓄財をしていた所長は保身のためにベローズを脱獄を図ったように見せかけて殺害し、ロビンズも痛めつける。
これに心穏やかでなくなったロビンズは、フリーマンから得た小型つるはしを使って入所当初より掘り続けた穴を抜けて遂に脱獄、所長の為に用意した架空の人物になって大金を得る。
お話の爽快さは文句なしだ。勧善懲悪的であり、最後の銀行絡みのアイデアも面白く、大衆映画として好評を博す理由はよく解る。官憲がしてやられる幕切れには「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)に似たムードがあるが、見せ方が正攻法であるこちらのほうが後味が良い。
堀った土をズボンに隠して外に出すアイデアが「大脱走」(1963年)と同じであったり、囚人がカラスの雛を育てるのが「終身犯」(1961年)と似ていたり、新味はそれほどないものの、およそ20年という年月をリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチという三人のグラマー女優のポスターの変遷で表現した辺りは上手い。
脱走自体の面白さで上記「大脱走」、刑務所+脱獄ものとしての感銘で「仮面の米国」(1932年)に及ばない。後者は大昔に一回しか観ていないので、アバウトな印象に過ぎないが。
(恐らく下部を留めていない)ポスターの裏に穴が開いていれば、風の流れなどですぐに穴の存在に気づくとは思いますがね(脱出後の話)。
この記事へのコメント
ラストでの成功もカタルシスがありますしね。
救いがあるのがいいところでしょう。
MY記事ではロビンスよりモーガン・フリーマンの功績をあげてますね。
一発逆転サヨナラ満塁ホームランのようなラストが高得点の原因でしょう。
知らなかったです。これもよかったですが、「ゴッドファーザー」のほうがずっとずっとよかったと思うんですけどね。スティーヴン・キングの小説はいくつか読んでおもしろかったし、好きな小説家の一人ではあるのですが、キングも過大評価されすぎてないかと思うことが時々あります。アメリカ人でないとわからない何かがあるのでしょうかね。
この刑務所のセットの使いまわしらしき場面を他の映画で何度か見た記憶もあります。まあ、刑務所のセット、新しく作っても同じようなものになるので、私が勝手に使いまわしと思い込んでるだけかもしれませんが。
この映画は、ぼくの中では「フォレスト・ガンプに映画賞のすべてを持っていかれた作品」という印象で、受賞しなかったことである種の希少性を生み、結果的に隠れた名作として人気になり、多数意見に流されるネット社会において、アニメ以外、生まれてから20本も映画を観ていない若い人を中心に1位にする人が増えたのではないですかね・・。
映画をある程度観ている者なら、どれかひとつを1位にすることほど至難の業はない、と思えるのですが・・。
刑務所ものとしても、ぼくの好きな「終身犯」やケヴィン・ベーコンの「告発」に及ばず・・。
上で、十瑠さんが述べられているように、狂言回しのモーガン・フリーマンの視点から映しているのもよかった・・。
ある意味「瞬間芸」のような作品、といっても的を外していないのかな、と思います。
本文でも書いたように、爽快さは抜群ですし、所長の為にやっていたと見せかけて実は自分の為に作ったインチキ口座のアイデアなどのトリックも面白いで、好き嫌いだけで言えば好きな部類に入ります。
ハッピーエンドで良かった作品ですよね。
>モーガン・フリーマン
「グローリー」「ドライビングMissデイジー」で台頭して物凄い勢いのある頃の代表作ですよね。
本作に似て、彼がナレーションをしていること自体に意味があったのは「ミリオンダラー・ベイビー」。
>一発逆転サヨナラ満塁ホームランのようなラスト
痛快ですからねえ。
主人公がかなり前から脱獄を計画していたことが解りますよね。中でも良いのは所長をだました口座。愉快愉快。
>「ゴッドファーザー」
本作は、1位であるには、軽い感じがするのですね。
二者択一であるなら、「ゴッドファーザー」のほうを映画芸術の角度から推したいところです。
>スティーヴン・キング
彼のホラー小説の映画化で純粋にすごいと思った作品はないですね。
「キャリー」はなかなか面白いですが、デ・パルマの貢献のような気がしますし。「シャイニング」映画版は、ご本人が気に入っていないらしく、僕はキューブリックの低い位置のカメラを生かした撮影の迫力によりある程度評価できる作品になったのかと思っています。
「シークレット・ウィンドウ」で僕は、「彼の映画は実は映画化に向いていないのではないか」という大胆な意見を放ったことがあります(笑)。
>「フォレスト・ガンプに映画賞のすべてを持っていかれた作品」
そうかもしれません。
そうした経緯が逆に良い方に作用して、現在の高評価に繋がっている可能性は否定できませんね。
僕にしても、「フォレスト・ガンプ」と「ショーシャンク」のどちらを推すかと問われれば少々迷う。総合の映画力(?)から言えば「ガンプ」、好悪で言えば「ショーシャンク」といったところなので。
>どれかひとつを1位にすることほど至難の業はない
そうです。
無理やり理由をひねくりだして、順位を決めるのですよね。
IMDbは順位ではなく、投票した人の投票点(1~10点)の加重平均で出すので、年間のベスト10投票のように運不運はないのですけど。20年余りでた溜まった票数が何と180万。僕がIMDbを訪れ始めた頃は一番多かった作品でも10万は行っていなかった。随分増えたものと思います。
>「終身犯」
渋くて良い作品でしたねえ。僕が初めて見た刑務所映画かもしれません。
昔はTVによく出ましたが、最近余り出ませんね。
「ショーシャンク」の好きな若い方に観ていただきたいです。
>ポスター
所長がチェスの駒を投げる時、ラクエル・ウェルチが映っていない部分に投げる。
それが映画監督の彼女に対する敬意を感じました
>「そうですか」
僕が思うのは、話が長い(くどい)人に対して「ああ、そうですか」を何度も繰り返す人。
要するに「聞いていません」のサイン。特にそれがその人中心の話の場合
>映画監督の彼女に対する敬意
なるほど。
ダラボン監督は僕と同じ世代ですから、アイドルだったかもしれませんね。
>「そうですか」
そう使い方の場合もありますね。
この場合は、最初の「ああ」がかなりうんざりを表現し、それを「そうですか」が補完する感じということになりましょうか。
僕が初めて経験したのは、数年前に電話で保険の勧誘の電話があった時に、「持病があるので、普通の保険は入れないんですよ」と言った返答としての「そうだったんですね」。
僕は「どうか、何か言ってみろ」というつもりで言ったので、この返答にずっこけた次第。この確認するとも同調するともつかない返事にびっくり。実際に彼女の心理がわからない。「そうなんですか」とでも言われればすっきりしたんですが。
言葉は、(変わって行くのなら)聞き手に解りやすいように合理的に変わっていくべきと思うので、僕にとってこの言葉遣いはペケです(笑)
ちょっと大げさに言いますと、この調子で行ったら、感動・驚きを表す終助詞「か」は消えてしまう危機感を覚えます。
思春期に憧れた女優一生忘れないでしょうね
>「そうだったんですね」
「だけど、とりあえず保険に入りませんか?」とか?
>終助詞「か」
「ね」とは随分違いますね
「ね」とは随分違いますか
>「だけど、とりあえず保険に入りませんか?」とか?
実際には、この後僕の並べた屁理屈にたじろいでしまい、上司だかベテランだかの女性に変わりました。この変わった彼女はなかなな優秀な人物で、今度はこちらがたじろぎましたよ。
>「ね」とは随分違いますね
>「ね」とは随分違いますか
あはは。良いお返しですね^^
余り面白くない話題になってきたのでこの辺りで切り上げようと思いますが、「か」に代表される終助詞にはそれ自体に意味があります。疑問・感動・驚き、等々。
「そうですか」の「か」は恐らく疑問の効果を利用した反語を経て現在のような意味(驚き・感動)で使われるようになったのでしょうが、現在では疑問や反語の意味がないのは明らか。
それに対して「ね」は間投助詞と言って、それ自体には何の意味もありません。感情を表現する効果がありますが、何に付くかによってその意味が色々出てきます。「そうですかね」と言えば、驚きを表すのが第一義であるはずの「そうですか」に違って異議・反感を呈することになります。この例で分かるように間投助詞は助詞の後に付くことも多い。終助詞は他の助詞の後に付くことはできません。例えば、「そうですねか」なんてありません(笑)
とにかく、初めて聞き驚いたことを表現するのであれば、文法的に「そうですね」「そうなんですね」はナンセンスなんです。
僕もそう思いました
>リタ・ヘイワース
僕はこの女優の存在をほとんど知りませんでした
でも今調べたらジュリアーノ・ジェンマ主演映画の「バスタード」に出ていた人なんですね当時50歳。
>「大脱走」
もっとも、他の手はありそうもないですが・・・
しかし、「大脱走」を知っていると、面白味を減じるのは確か。
>リタ・ヘイワース
マリリン・モンローより前、戦中から1950年代初めくらいまで、セックス・シンボルとして人気があったようですね。
僕は1970年代の初め「ギルダ」という1946年の作品で初めてお目にかかりました。ま、ガキには魅力が解らずじまいでしたけれど。
当時、同じ年に生まれたスーザン・ヘイワードという女優とこんがらがって苦労しました。混乱した例では他に、スタンリー・キューブリックとバズ・キューリック、ジョゼフ・ロージーとフランチェスコ・ロージなどがあります・・・って何の話でしたか(笑)
僕は全く記憶していませんが、「バスタード」の頃は完全にうばざくらでしたでしょう。この人、老けるのが早くて30代後半でツヤがなくなってかつての魅力をすっかり失った(と僕は感じました)。
>「バスタード」の頃は完全にうばざくら
誰もが年を取りますね・・・
>ラクエル・ウェルチ
彼女の存在を知ったのはリンゴ・スターのアルバム。
ブックレットの中の一枚の写真。
映画「マジック・クリスチャン」より
>北朝鮮
今年の2月から週2回、免許を取り上げられた近所の人の運転手をすることになったのですが、その人が北朝鮮の心配ばかりするので、「心配することは、北朝鮮を良い気にさせるだけ。気にしないこと」と言っております。
少なくとも、北朝鮮人が住んでいて金づるである日本を攻撃することはないので、安心してほしい。間違って落ちたとしたら「まあ交通事故みたいなものと思うことですね」とか言って・・・
笑い事ではないけれど、あの国は中国とロシアが本気を出すか、アメリカが核保有を認めない限り絶対止まりません。日本は何もできません。
>誰もが年を取ります
僕なども、布団が悪いせいもあるけれど、起きると背骨が痛いですよ。
>「マジック・クリスチャン」
45年ほど前、化粧したユル・ブリンナーの写真を見てどんな映画なんだろうと思いつつ、なかなか実物が観られなかったですが、20年ほど前衛星放送でやっと観ることができました。幽霊の正体見たり枯れ尾花、でしたがね(笑)
僕がラクエル・ウェルチを知ったのは「カンサスシティの爆弾娘」という作品でしたね。当時、日本でもTV中継されるくらい流行っていたローラーゲームを扱っていました。
子供の頃、テレビで日本語版を見ました。後になって主役がラクエル・ウェルチだと知りましたジャッキーと言う荒っぽいチームメイトがいたのも覚えています
>幽霊の正体見たり枯れ尾花、でしたがね(笑)
なるほど名優達を惜しげもなく、こう言う作品で使う傾向があるそうです。イギリスの監督たちは。(映画秘宝より)
>アメリカが核保有を認めない限り絶対止まりません。
そこなんでしょうね。狙いは・・・
>台風18号
どうかお気をつけて。
>>「カンサスシティの爆弾娘」
>子供の頃
おおっ、ご覧になっていますか!
出来栄えは大したことなかったと思いますが、一種の風俗映画としての価値があるかもしれませんね。
>イギリスの監督たちは
そうですね。
1960年代の後半には、「マジック・クリスチャン」のような、あいさつに困るような、しかし、何となく楽しい作品がたくさんありました。「カジノ・ロワイヤル」なんてのもそうかな。
>狙いは・・・
それと体制の維持を保証することでしょうね。
>台風18号
はい、そちらこそお気をつけて。
わが県は内陸県で西と北に高い山脈があるので、台風の被害は他県よりは少ないですね。
20年以上前だったでしょうか、前の家の太い木がが数本倒れ、近所のアンテナが曲がったなんてこともありました。珍しいことでしたね。