映画評「フィフス・ウェイブ」

☆☆(4点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督J・ブレイクスン
ネタバレあり

YA小説の必要十分条件は、YA向けであることは言うまでもないが、主役がYAであること、そして恋愛要素それも三角関係にすることと見つけたり、か。

ある日突然地球に宇宙人が現れ、ライフラインに始まり真綿で締め付けられるような方法で人類は壊滅状態になる。両親を失った元高校生クロエ・グレース・モレッツは、これまた突然現れた軍隊の指示で避難バスに乗った弟ザッカリー・アーサーと離れ離れになってしまう。

少女が人間と人間の脳を乗っ取った“アザーズ”との区別ができない中で弟を探し出す苦難の旅を続ける様子を見せるのが眼目で、「ボディ・スナッチャー」ものをベースに、YA小説お馴染みの若者のサバイバル模様を合体させた内容。
 少女が荒廃若しくは混乱した世界で頑張る点で「ハンガー・ゲーム」「ダイバージェント」に似、ロード・ムービー的な要素としては「メイズ・ランナー」というシリーズ化されたYA小説映画版と大して変わらず(お話の構図としては「わたしは生きていける」にもっと近い)、さらに弟が愛玩するぬいぐるみを取りに姉を行かせた為に二人が離れ離れになるなど定石的すぎて興醒めるわけだが、乗っ取り型SFの設定を基軸として拝借したところを一応買っておきたい人の好い僕である。但し、本作のようなものをSFの範疇に入れてもらっては困る。「ハンガー・ゲーム」などより単調なので「退屈」という意見も多いが、変に複雑でまだるっこいのもどうかと思う。

物語の続き。
 ヒロインが弟を探すサバイバル冒険を続ける一方、弟のいる基地では子供たちの事実上の徴兵が行われ、やがて彼らの一部は、注入された“アザーズ”を判別する探査装置が実は探査装置をつけていない人間を発見する道具であると知り、軍隊に反旗を翻す。

「ボディ・スナッチャー」はアメリカ人の共産主義者への恐怖の寓意と理解できたが、本作ではそこまで政治的な狙いはないにしても、子供たちが主人公であるから、反抗的青春映画よろしく、嘘をつき続けた軍隊に大人への風刺を沈潜させていてもおかしくはない。この点は本作だけでは確認できない。シリーズ化でもされれば明確になってくるだろう。

高校時代ヒロインが憧れた同級生ニック・ロビンスンと彼女を援助する若者アレックス・ローとの三角関係もどきは例によって例のごとし。読者層へのお約束なのだろうが、これに拘っているうちはYA小説に本当の傑作は出て来まい。

本作独自の問題としては、クライマックスも余り盛り上がらないまま終わるので、作者側には続編も頭にあるだろうが、IMDbの平均得点や投票数を見ると厳しい感じだ。

アメリカではYA小説、日本ではコミックの映画化が花盛り。映画文化が大分子供化している。しかし、日本のコミックのほうが多様性があり、大人の鑑賞に堪えるものが多いとは思う。

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