映画評「セトウツミ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・大森立嗣
ネタバレあり

二人の男性が噛み合わない会話をし、そこに女性が絡んでくる作品に「リアリズムの宿」(監督:山下敦弘、原作:つげ義春)というとぼけた作品があった。同じくコミック(原作:此元和津也)を映画化した本作は、それをもっと極端にしたような内容で、従って世評ほどはビックリさせられないが、なかなか面白い。監督の大森立嗣としては軽みのある作品だ。

終業後塾までの時間を持て余す高校2年生の池松壮亮と、サッカー部を辞めてやることがない同学年の菅田将暉が、河岸に作られた石段に腰かけて、実は三角関係的な位置にある女子高生・中条あやみの話題など、他愛無い話を延々と繰り広げるだけという異色作。

全8話構成で、その中でハイティーンが考える恋愛観、家族観、高校生活への観想、死生観などが浮かび上がって絶妙。彼らが頭の上がらない上級生の父親を見て「今の自分たちと繋がらない」旨を述べるが、実際年を取ってみると、見た目と違って中身は殆ど変わらず「繋がっている」・・・というのが初老となった現在の僕の実感である。

何と言っても、舞台故に関西弁で繰り広げられるコントそのものの会話の可笑しさで、頭の良い池松君がツッコミのようでいて実はボケという屈折した立場にあるのが興味深い。お笑いを一切見ない僕が言っても信用されないだろうが、まあそんな感じがする。彼らのような関係を、友人ごっこが目立つ最近では珍しくなった“気が置けない”関係と言うのだろう。

起承転結など一般的なドラマツルギーを排した作りが映画の可能性を感じさせて頼もしい。

他方、例によって映画サイトで発見したリアリズム病患者による“関西弁がなっていない(から映画としてダメ)”というコメントは、いかにも、程度が低く馬鹿らしい。
 劇映画における物事は実際のように見せながら殆ど表徴であったり象徴であったりする。本作で映画作家が求めるのは関西弁そのものでなく関西弁っぽいものだろう。東京弁や東北弁や九州弁に聞こえなければ良いのである。そもそも話し方など人によって全く違うわけで、関西人の全てが彼の思う関西弁が喋れるわけではない。引っ越してくる人もいる。関西弁そのものも多様。
 語っている本人は最重要事項と思っているはずだが、実は重箱の隅をほじくっているだけだ。

中山道沿いにあるため殆ど標準語と同じ群馬(上州)弁が映画で使われるのは滅多にないが、たまに使われると本物と違っていても嬉しい。群馬県生まれの俳優でも典型的な上州弁が上手く話せるか怪しいものだ。

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