映画評「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」

☆☆(4点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・宮藤官九郎
ネタバレあり

宮藤官九郎は脚本だけを担当している時の作品のほうが面白い。監督まですると宮藤(くど)くなってつまらなくなる。これは彼に限らず、脚本家出身の監督にままあることである。簡単にお話を書いておきます。

修学旅行の観光バスが崖から落ちて、生徒一人が生き残った以外は皆死んでしまう。そのうちの一人が同級生の森川葵に惚れている神木隆之介で、彼だけ何故か地獄に落ちている。
 彼女の生存を信じて転生を繰り返すが、その度に変な生き物になって思うように確認ができない。やがて後からやってきた同級生・古館寛治により彼女が生き残っている(ニュースの情報にトリックあり)ことを知り、犬となった時に彼女の思いを知ることができる。やがて天国へ行くことになるが、87歳となっているはずの彼女はまだ来ない。地獄と反対に時間の流れがもの凄くゆっくりな天国に退屈した彼はまた地獄に落ちる。

人間になったり天国に行くのに地獄農業学校での音楽対決に勝利することが必要で、その為に色々な音楽絡みの場面が出てくるわけだが、基本の物語は全くナンセンス。ところが、同じようにナンセンス千万な「ミニオンズ」が楽しめたのに比べると、こちらは退屈だった。
 一つは、こちらでは音楽要素が自分の守備範囲に余り入っていないことがある。知識的には、ジミ・ヘンドリックスしか演奏スタイルが解らず、パロディー的に余り楽しめない。

それ以上に「ミニオンズ」がナンセンスに徹していたのに対し、本作は中途半端に意味めいたものを挟んでいるのにその劇的な目標をはっきりさせていないので、左脳(理屈)派の僕には退屈してしまうのである。
 例えば、本作の場合、エンマ様の情けで若い時の彼女に再会することができる。その時彼女は「私も(好き)」と言う。ここで終われば、徹底したナンセンス映画ではなくなるにしても、お話として一応きっちり締まる。観客が目標として定めるであろう「主人公がヒロインからその好意を確認する」を堪能できる。しかし、実際にはこの後だらだら続く。

幾つかの映画評で述べたように、世間で言われるのとは真逆で、一部の例外的な作品を除けば“先が読めない作品は退屈である”は真理であることが解る映画である。尤も、それは右脳人間には必ずしも当てはまらない。本作は完全に右脳派向きと言うべし。

too~to・・・はニュアンスとしては否定なんですが。

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