映画評「ダーク・プレイス」
☆☆★(5点/10点満点中)
2015年イギリス=フランス=アメリカ合作映画 監督ジル・パケ=ブランネール
ネタバレあり
ブラック・コメディーとして楽しめた「ゴーン・ガール」の原作者ギリアン・フリンの小説を、ユダヤ人狩りの後日談を描いた秀作「サラの鍵」の監督ジル・パケ=ブランネールが映画化した準ミステリーだが、案外パッとしない出来栄えに終わる。
28年前二人の少女と母親(クリスティナ・ヘンドリックス)が殺される。当時8歳だった末娘リビー・デイ(スターリング・ジェリンズ)は、悪魔崇拝じみている16歳の兄ベン(タイ・シェリダン)の行動を証言、結果的に兄を刑務所送りにする。
28年後の現在、働くこともない為少なからずもたらされた印税も底をついたリビー(シャーリーズ・セロン)は、「冤罪の疑いが濃い」と興味と正義の為に働いている団体の若き主催者ライル(ニコラス・ホルト)に提示された金額に目がくらんで、彼女だけが知る事実をもう一度思い出して語り、或いは中年になった兄(コリー・ストール)と刑務所で再会した時に目に止めた事実を検討するうちに、少年時代彼が付き合っていた少女ディオンドラ(クロエ・グレース・モレッツ)が事件に大きくかかわっていたことを突き止める。そして、やっと探し当てた現在の彼女(アンドレア・ロス)の告白により、事件の真相が遂に明るみに出る。
というお話は、「デビルズ・ノット」(2013年)が取り上げた実際の冤罪事件をモチーフにしたと思われる。悪魔崇拝の少年が死刑宣告をされながらも18年後に冤罪であったことが判り釈放された事件だ。
本作の少年ベンは壁に悪魔関連の絵やポスターを貼っていたものの実はディオンドラの歓心を買うためであり、悪魔崇拝が犯罪を引き起こすという官憲の思い込みと妹の証言の為に冤罪が生まれたわけだが、本作は冤罪の恐怖というよりは、貧乏に苦しむヒロインを一種の探偵役として機能させたミステリー中心の趣。
しかし、頻繁に挿入される回想と言うべきなのか神の視点による過去と言うべきなのか判然としない過去が、現在に唐突に挿入される作り方が些か煩雑で、どうもすっきりしない。最後にサスペンスも用意してあるが、付け足し的な印象を禁じえず、実力者を揃えたことを考えると失望感が先に立つ。
3、4日後に紹介する作品は現在と過去とがもっと頻繁に、もっと解りにくく往来する。ここ20年がとこの流行りだが、ややゴマカし気味に使われている気がする。それでも、若い人にはザッツ・オーライか。
2015年イギリス=フランス=アメリカ合作映画 監督ジル・パケ=ブランネール
ネタバレあり
ブラック・コメディーとして楽しめた「ゴーン・ガール」の原作者ギリアン・フリンの小説を、ユダヤ人狩りの後日談を描いた秀作「サラの鍵」の監督ジル・パケ=ブランネールが映画化した準ミステリーだが、案外パッとしない出来栄えに終わる。
28年前二人の少女と母親(クリスティナ・ヘンドリックス)が殺される。当時8歳だった末娘リビー・デイ(スターリング・ジェリンズ)は、悪魔崇拝じみている16歳の兄ベン(タイ・シェリダン)の行動を証言、結果的に兄を刑務所送りにする。
28年後の現在、働くこともない為少なからずもたらされた印税も底をついたリビー(シャーリーズ・セロン)は、「冤罪の疑いが濃い」と興味と正義の為に働いている団体の若き主催者ライル(ニコラス・ホルト)に提示された金額に目がくらんで、彼女だけが知る事実をもう一度思い出して語り、或いは中年になった兄(コリー・ストール)と刑務所で再会した時に目に止めた事実を検討するうちに、少年時代彼が付き合っていた少女ディオンドラ(クロエ・グレース・モレッツ)が事件に大きくかかわっていたことを突き止める。そして、やっと探し当てた現在の彼女(アンドレア・ロス)の告白により、事件の真相が遂に明るみに出る。
というお話は、「デビルズ・ノット」(2013年)が取り上げた実際の冤罪事件をモチーフにしたと思われる。悪魔崇拝の少年が死刑宣告をされながらも18年後に冤罪であったことが判り釈放された事件だ。
本作の少年ベンは壁に悪魔関連の絵やポスターを貼っていたものの実はディオンドラの歓心を買うためであり、悪魔崇拝が犯罪を引き起こすという官憲の思い込みと妹の証言の為に冤罪が生まれたわけだが、本作は冤罪の恐怖というよりは、貧乏に苦しむヒロインを一種の探偵役として機能させたミステリー中心の趣。
しかし、頻繁に挿入される回想と言うべきなのか神の視点による過去と言うべきなのか判然としない過去が、現在に唐突に挿入される作り方が些か煩雑で、どうもすっきりしない。最後にサスペンスも用意してあるが、付け足し的な印象を禁じえず、実力者を揃えたことを考えると失望感が先に立つ。
3、4日後に紹介する作品は現在と過去とがもっと頻繁に、もっと解りにくく往来する。ここ20年がとこの流行りだが、ややゴマカし気味に使われている気がする。それでも、若い人にはザッツ・オーライか。
この記事へのコメント
こういう映画をおもしろいと製作して主演するシャーリーズ・セロンは、さすがだと思いました。
>ジョルジュ・シムノンのミステリーとか、謎解きというより登場人物の心の彩を描いて読ませるあのタイプ
たった4年前なのにもう大方忘れていますが、シムノンへの言及は的を射ていますね。僕は出て来なかったなあ。
>シャーリーズ・セロン
21世紀の代表的美人女優ですが、自分の美貌に頼らない作品を敢えて選んでいるような作品が結構多いですよね。