映画評「われらが背きし者」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年イギリス=フランス合作映画 監督スザンナ・ホワイト
ネタバレあり

原題を直訳すれば「われらのような裏切り者」という感じだが、邦題は文法に詳しい人には意味不明である。
 「背きし」という文語を使っている以上その前の「われらが」も文語でなければならず、すると「われらが裏切り者」の意味となる。「われらが親分」「われらが同志」といった一般的な表現を考えると、ちと変であろう。
 そこで「われらが」を「背きし」の主語と考えるわけだが、文語(本来は口語でも)で連体形を修飾する時の主語を表す格助詞は「が」ではなく「の」である。従って、その意味なら「われら背きし者」とならなければならない。
 どちらの意味にしても日本語としておかしい邦題である。格好をつけて文語「背きし」を使うからそんな羽目になる。

閑話休題。
 スパイ小説の専門家ジョン・ル・カレの同名小説の映画化というのがお楽しみとなる作品だが、ル・カレとしてはお話の構図が単純な部類。

夫婦関係の修復にモロッコを訪れた英国人インテリ夫婦の夫ユアン・マクレガーが、親しくなったロシアン・マフィアの幹部でマネー・ロンダリング担当のステラン・スカルスゴードから、組織の映像情報の入ったUSBを英国情報部MI6に渡してくれと頼まれる。
 MI6の幹部捜査官ダミアン・ルイスは頼みにした議員の協力を得られず限られた人数で対応するしかないので、マクレガーとその妻ナオミ・ハリスに協力するよう要請、英国の有力議員とマフィアとの関係を示す口座情報を得ようと一緒にスカルスゴードに接触する。
 マクレガーは、それ以上の活躍は必要ないのに、スカルスゴードの家族を守ろうとする必死な気持ちを知って引き返せなくなる。

ル・カレであるから、例によって実際的な地味なお話であるが、これでも「寒い国から帰ったスパイ」(1966年)等に比べると派手に見える。ル・カレとしては、ヒッチコック御大の「知りすぎていた男」(1956年)を意識しただろうか。あの作品でもモロッコにやって来た夫婦が外国人により思いがけぬ事件に巻き込まれるのだ。

映画版は、監督が女性のスザンナ・ホワイトということもあってか、スパイものとしては人情過多である。スパイものとしてより、スカルスゴードの家族を思う必死さにマクレガーがほだされる心理部分が印象に残るくらいだ。そして、スカルスゴードという虎は死して皮でも名でもなく証拠を残す。考え方によっては大いに泣けるという具合。

古い拳銃を使った幕切れが洒落ていて、最初のシーンから出て来るこの拳銃は狂言回しとしてもなかなか上手く機能している。結果が結果だから良かったが、そうならずば、本当に怖いのはロシアン・マフィアでなく善良な顔を被った国会議員さんたちということになる。

国会議員が怖いと言えば、北朝鮮が色々と挑発しているのは、安倍氏から頼まれて支援しているのではないか。この騒ぎに乗じて「もりかけ問題」を隠し、(仮想敵国を中国とした)軍事的強化に絡むことが色々できる。殆ど冗談だが、半島二国出身者と仲が良いのは公然の秘密だから、100%ないとも言い切れない。

この記事へのコメント

2020年12月11日 20:34
私もこの邦題は?でしたね。文法的にも意味がとりにくいし、原題から離れても日本人にぱっと映画の印象がつかめるような題にしたほうがよかったと思います。この邦題のせいで見ないままになってる人もいるんじゃないでしょうか。
おはなしは、主人公がなぜディマにあれほど親身になるのかが、ちょっとよくわからないというか、あの主人公はそうなったからとしか言いようがないです。
あの拳銃はとてもうまく使われていましたね。ああいうところ、映画の楽しさのひとつです。
オカピー
2020年12月12日 09:12
nesskoさん、こんにちは。

>私もこの邦題は?でしたね。

「われらが背いた者」の“背いた”だけを文語にしたのでしょうが、格好つける為にTVの一部で使われるような中途半端な文語を使うと、文語を知っている人間にこそ意味が解らなくなります。

>主人公がなぜディマにあれほど親身になるのかが、ちょっとよくわからない

主人公の心理に関する描出が足りなかった。お話の為のお話ですかね。

>あの拳銃はとてもうまく使われていましたね。
>ああいうところ、映画の楽しさのひとつです。

正確には忘れてしまいました(笑)が、小道具の使い方がうまい映画は楽しい。上のような欠点を少しカバーしますね。

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