映画評「海賊とよばれた男」
☆☆★(5点/10点満点中)
2016年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり
百田尚樹という作家は全体主義者・国家主義者として余分なことを言いすぎて感心せず、彼の小説は金輪際読むまいと思っているが、映画化されたものは排除しない。
出光興産の創業者出光佐三をモデルにした田岡鐵三(岡田准一)の一代記で、大正時代から油を売り始め、他の業者から憎まれてその為に戦後の混乱期に排除の憂き目にあって苦しむ。さらに満州鉄道での因縁もあって石油メジャーからも疎外されるが、それが故に利権を一手に握っている英国が阻ぶイランとの石油事業に乗り出し、画期的な成功を収める。
最初の結婚に失敗する私生活を含めて色々な挿話が紹介されるが、時系列が頻繁にシフト・バック・アンド・フォースするのが少々煩わしい。その点で、同じ原作者と脚本・監督コンビの作品としては「永遠の0」より落ちる。正攻法での進行によって初めて可能になる畳みかけるような迫力が醸成しきれず、時系列をいじったことによる効果と弊害を相殺した時にマイナスになるような印象があるということである。
その弱点が否めないにしても、山崎貴監督はなかなかがっちりと見せているが、一代記としては型通りであろう。
それ以上に気になったのは原作者故に全体主義的なムードが度々感じられることで、特にGHQや石油メジャーに関するところがしっくり来ない。「メジャーは怪しからん」と僕なども思うが、百田氏が従米思想に埋没する現政権を支持していることを考えると、僕には矛盾としか感じられないからである。
原作が百田氏でなければ、もっと素直に観られ、感銘できたかもしれない。普段の僕にはないスタンスだが、彼に関してはどうも例外となってしまう。すみません。
反面、SFXとVFXは完璧で、文句なし。SFXでは岡田准一の老けメークが素晴らしい。岡田の演技も充実。60歳の場面から始まるのだが、低音を聞かせ誰が演じているのか全く解らなかった。
山崎監督はさほど政治的に作っていないが、「永遠の0」同様に原作者の政治臭を無臭化するところまでは行っていない。
2016年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり
百田尚樹という作家は全体主義者・国家主義者として余分なことを言いすぎて感心せず、彼の小説は金輪際読むまいと思っているが、映画化されたものは排除しない。
出光興産の創業者出光佐三をモデルにした田岡鐵三(岡田准一)の一代記で、大正時代から油を売り始め、他の業者から憎まれてその為に戦後の混乱期に排除の憂き目にあって苦しむ。さらに満州鉄道での因縁もあって石油メジャーからも疎外されるが、それが故に利権を一手に握っている英国が阻ぶイランとの石油事業に乗り出し、画期的な成功を収める。
最初の結婚に失敗する私生活を含めて色々な挿話が紹介されるが、時系列が頻繁にシフト・バック・アンド・フォースするのが少々煩わしい。その点で、同じ原作者と脚本・監督コンビの作品としては「永遠の0」より落ちる。正攻法での進行によって初めて可能になる畳みかけるような迫力が醸成しきれず、時系列をいじったことによる効果と弊害を相殺した時にマイナスになるような印象があるということである。
その弱点が否めないにしても、山崎貴監督はなかなかがっちりと見せているが、一代記としては型通りであろう。
それ以上に気になったのは原作者故に全体主義的なムードが度々感じられることで、特にGHQや石油メジャーに関するところがしっくり来ない。「メジャーは怪しからん」と僕なども思うが、百田氏が従米思想に埋没する現政権を支持していることを考えると、僕には矛盾としか感じられないからである。
原作が百田氏でなければ、もっと素直に観られ、感銘できたかもしれない。普段の僕にはないスタンスだが、彼に関してはどうも例外となってしまう。すみません。
反面、SFXとVFXは完璧で、文句なし。SFXでは岡田准一の老けメークが素晴らしい。岡田の演技も充実。60歳の場面から始まるのだが、低音を聞かせ誰が演じているのか全く解らなかった。
山崎監督はさほど政治的に作っていないが、「永遠の0」同様に原作者の政治臭を無臭化するところまでは行っていない。
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