映画評「家族はつらいよ2」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

このシリーズの原型は「東京家族」であり、必然的に小津安二郎の「東京物語」と関連づけられる。そして来月公開予定の第3作では何と成瀬巳喜男の「妻よ薔薇のように」からタイトルを戴いている。内容は関連が深いか否か解らないが、少なくとも題名を使って、ドラマ映画の大先輩二人にオマージュを捧げている感じである。僕が観るのは来年以降ながら、今から楽しみだ。

このシリーズでは、山田洋次監督は「男はつらいよ」初期やそれ以前の喜劇群に似て笑いを重視しているように見える。しかし、超高齢化社会を迎えた日本の家族を見つめて大いに考えさせられるものを底流に置いている。ご覧になればどなたにもお解りになる。

老妻・吉行和子が北欧にオーロラ見物に出かけて解放感を味わう老人・橋爪功は、小料理屋の女将・風吹ジュンと食事をするというデートを敢行した時に工事現場で交通誘導をしている老人・小林稔侍が広島・高校時代の友人であると気づき、後日旧交を温めるミニ同窓会を開き、くだんの小料理屋で二次会に臨んだ後、橋爪老は一人暮らしの小林を家に泊める。が、翌朝彼は息を引き取った状態で発見され、結局一家を挙げて市役所による葬儀に参加する。

というお話で、孤独死や認知症など深刻な問題とは別に、老人の運転の問題を最初から最後までずっと絡ませている。小林老の死亡騒動も老父に免許返還を促す家族会議の為に全員が集まったところで起きる。老人の交通事故問題が深刻でないということではないが、比較的お笑いと結びつけやすい老人問題から始め、もっとやるせない老人問題を繰り出してくる辺り、脚本の洗練度はやはり高い。

死体発見騒動に絡むお笑いは些か古めかしいが、孤独な老人の死というしんみりとならざるを得ない気分をお笑いで吹き飛ばす手法として狙い自体は悪くない。ベースが喜劇であるのだから、必要以上に哀感を強調しなくても良いと思う次第だ。

近作を見ていると、山田監督は日本の家族に絶望していない。平時はうるさいだけで邪魔な家族も肝心な時に色々と役に立ってくれる。本作の橋爪老も、友人を一緒に見送ってくれた家族に感謝する。
 監督は本質的に強い主張を持っている人と思われる一方、作品において声高に主張することはまずない。彼の作品が品の良い理由はそこにある。

技術的には、次男・妻夫木聡の細君・蒼井優が病院で患者の世話をしているのを見せた後彼女が認知症の祖母を看ている次のショットに繋ぐ辺りのマッチ・カット的な処理がそこはかとなく巧い。山田洋次の映画文法の扱いには毎回本当に感心させられる。

僕の持論は、“友人より家族”でござる。

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