映画評「ハーフネルソン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ライアン・フレック
ネタバレあり

ラ・ラ・ランド」が注目されたせいか、ライアン・ゴズリングの主演したハイスクール教師を主人公にしたドラマが製作11年にして公開された。西洋人に比べると日本人は哲学に疎いので、この作品が面白く観られるかどうか。

12、3歳相手に“対立理論”なる自説で歴史学を教えている若い教師ゴズリングは、その一方で問題を抱えてコカインに逃避、学校でラリっているところを教え子の黒人少女シャリーカ・エップスに発見され、介抱される。コカインの密売で服役中の兄を持ち、親しい若者アンソニー・マッキーもコカイン・ディーラーという環境にあって、彼女は密告することもなく、二人は友達のような関係になる。
 ゴズリング先生はマッキーと彼女が親しくしているのを嫌っているが、その癖コカインから抜け出せない。少女が届けたコカインを使って女性を呼び込んで麻薬パーティーを行った翌日先生は欠席する。少女は先生の家を訪問すると、漸く先生は髭を剃って明日へと向かうべく立ち上がる。

“対立理論”などと言っているが何ということはない。弁証法的唯物論或いは唯物史観である。対立する物が螺旋的に関係し合い否定的なものを内包しつつ歴史上の転換・発展(止揚)が起きるという、弁証法を基にマルクスやエンゲルスらが示した考えだ。
 そして、ゴズリングと黒人少女という、共通する部分はあるが色々と対立する存在同士が関係し合い、その結果ゴズリングは少女の訪問を受けて再生(謂わば止揚)する・・・というお話自体が、彼自身コカインを服用しながら、少女からコカインを排除しようという矛盾(対立)を抱えた存在であることを考えると、弁証法を物語展開に利用したものと理解できる。

“間に入る事件や出来事の説明は要らない”というAllcinema唯一のコメントは、それらが主人公の唯物史観を具体的に示し、映画の弁証法的展開を遂行する目的の為であると解釈されるから、そうとも言い切れない。
 といった具合で、僕は一応興味深く観たが、哲学を全く知らない人には面白くも何ともないのではないかと思う。

2022年から高校の国語から“文学”が実質的に消えると危惧される。実際的な文章の読み方だけを学ばせようというのだ。国は実務に役立たないとして大学には人文学部をなくせと圧力をかける。こういう映画を理解できない人が益々増えるだろう。また、理系でもすぐに役立つ研究以外を援助しようとしないという問題がある。その為将来日本人はノーベル賞を取れなくなるだろうと言われている。功を焦る余り日本人は却って実力を失うのではないか? 

この記事へのコメント

2018年04月29日 22:36
こんにちは、人違いでしたでしょうか
失礼しました、

https://ameblo.jp/fu-tenno-okapi/
このかたと間違えたようです
このかたも、おかぴー様で、てっきり
別のアカウントで運営なさってると思いました
ほんとに大変しつれいしました、お詫び申し上げます
オカピー
2018年04月30日 18:41
ひろたんさん、こんにちは。

いえいえ、お気になさらずに。
おかぴー若しくはオカピーというハンドルネームの方は思いのほか、多いようですね。しかも、映画を星付きで採点なさっているという共通性もあるので、ありうる人違いです。
ちょっと拝見しましたが、ひろたんさんのブログも面白いです。

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