映画評「ワンダーウーマン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督パティ・ジェンキンズ
ネタバレあり
映画界でもマーヴェル・コミックスとDCコミックスがしのぎを削る状態になっているが、現在では量的にも質的にもマーヴェルが優っている印象。こちらは21世紀になるまで映画界で優勢だったDCコミックスの映画化である。
1975年にTVで実写化されて日本人にもお馴染みになった「ワンダーウーマン」は結局観なかった。そんなわけで彼女がアマゾネス出身とは知らなんだ。今回実に勉強になりました。
現在のシーンの後、アマゾネスが出て来るので、古代が舞台なのかと思いきや、20世紀初めのパラダイス島なる人類未踏の島なのである。アマゾネスは人間ながら、現在の物質文明を作っている我々とは別人種という趣。
ヒロインのダイアナ(ガル・ガドット)が主神ゼウスと女王ヒッポリタ(コニー・ニールセン)の半神半人であると後半判るが、その他はどのように生まれてきたのでしょうか? 神話のアマゾネスは定期的に男性と交渉を持っていたのだが。
第一次世界大戦中、ドイツに侵入し開発途上の毒ガス設計図を奪って飛行機で逃げた英国スパイの軍人トレヴァー(クリス・パイン)がパラダイス島近海に墜落、ダイアナに救助される。そこへドイツ軍が押し寄せ、アマゾネスたちが迎え撃つ。叔母アンティオペ(ロビン・ライト)を含め多数の犠牲を出しながらもドイツ軍の追手を破滅させた後、アマゾネスは彼の正体を【真実の投げ縄】を使って聞き出す。
彼の告白により物質文明社会が戦争中と知り、戦いの神アレスの仕業と推測したダイアナは母の懇願を振り切って欧州へ出、英国での準備の後、前線で八面六臂の活躍するが、戦いの神アレスが変身したと推測したドイツの将軍(ダニー・ヒューストン)を倒しても戦争は終わらない。戦いの神は英国にいたのである。一方、トレヴァーは毒ガスを使用させまいと身を張って活躍する。
TVシリーズが作られた頃は、女性がアクションに活躍という物珍しさが眼目で、珍しさを評価ポイントとしたりするとフェミニストの女性から非難されたものである。それから30年以上経って昔の男性ばりに活躍する女性の映画は食傷するほど作られる時代になった。それらはフェミニズムを反映しているわけで、ポリティカル・コレクトネスの顕現のような作品と同様に余り好かない。一種のプロパガンダだからである。
プロパガンダは、ソ連やナチスのそれと同様、露骨に示されると嬉しくないが、この作品はフェミニズムもポリティカル・コレクトネス傾向も確認できるも、童話の活用などでない分、抵抗感が薄く有難い。
それはともかく、アクション映画としてアクション即ち実質的に戦いの場面が多彩で、しかも、出してくるタイミングがよく考えられている。難を言えば、スローモーションを使ったことである。スローはどうも観ていて気勢が削がれることが多く、僕は好まない。
ヒロインに扮するガル・ガドットはアスリート体型の美形で、男性陣には受けるだろう。
ナチスのイメージがあるのでいつの時代もドイツが悪役に配されやすいが、第一次大戦についてはそう責められない。但し、毒ガスはイメージが悪い。
ベーベルの「婦人論」に面白いことが書いてあったので紹介する。そもそも(欧州の)世界は女系から始まった。経済が発展し物理的な力が必要になって男に乗っ取られ従属するようになった。その最後の抵抗の印がアマゾネスの神話だと言うのである。何となくそれらしくて面白い。同じ頃古い英語の小説を原文で読んでいた時に世界が「女系で始まった」ことの証拠になると考えたくなる単語に遭遇した。英語の文語で結婚・婚姻のことをmatrimonyというのだが、これは【母】から生まれた言葉である。即ち、女系社会の名残ではないかと思うわけである。
2017年アメリカ映画 監督パティ・ジェンキンズ
ネタバレあり
映画界でもマーヴェル・コミックスとDCコミックスがしのぎを削る状態になっているが、現在では量的にも質的にもマーヴェルが優っている印象。こちらは21世紀になるまで映画界で優勢だったDCコミックスの映画化である。
1975年にTVで実写化されて日本人にもお馴染みになった「ワンダーウーマン」は結局観なかった。そんなわけで彼女がアマゾネス出身とは知らなんだ。今回実に勉強になりました。
現在のシーンの後、アマゾネスが出て来るので、古代が舞台なのかと思いきや、20世紀初めのパラダイス島なる人類未踏の島なのである。アマゾネスは人間ながら、現在の物質文明を作っている我々とは別人種という趣。
ヒロインのダイアナ(ガル・ガドット)が主神ゼウスと女王ヒッポリタ(コニー・ニールセン)の半神半人であると後半判るが、その他はどのように生まれてきたのでしょうか? 神話のアマゾネスは定期的に男性と交渉を持っていたのだが。
第一次世界大戦中、ドイツに侵入し開発途上の毒ガス設計図を奪って飛行機で逃げた英国スパイの軍人トレヴァー(クリス・パイン)がパラダイス島近海に墜落、ダイアナに救助される。そこへドイツ軍が押し寄せ、アマゾネスたちが迎え撃つ。叔母アンティオペ(ロビン・ライト)を含め多数の犠牲を出しながらもドイツ軍の追手を破滅させた後、アマゾネスは彼の正体を【真実の投げ縄】を使って聞き出す。
彼の告白により物質文明社会が戦争中と知り、戦いの神アレスの仕業と推測したダイアナは母の懇願を振り切って欧州へ出、英国での準備の後、前線で八面六臂の活躍するが、戦いの神アレスが変身したと推測したドイツの将軍(ダニー・ヒューストン)を倒しても戦争は終わらない。戦いの神は英国にいたのである。一方、トレヴァーは毒ガスを使用させまいと身を張って活躍する。
TVシリーズが作られた頃は、女性がアクションに活躍という物珍しさが眼目で、珍しさを評価ポイントとしたりするとフェミニストの女性から非難されたものである。それから30年以上経って昔の男性ばりに活躍する女性の映画は食傷するほど作られる時代になった。それらはフェミニズムを反映しているわけで、ポリティカル・コレクトネスの顕現のような作品と同様に余り好かない。一種のプロパガンダだからである。
プロパガンダは、ソ連やナチスのそれと同様、露骨に示されると嬉しくないが、この作品はフェミニズムもポリティカル・コレクトネス傾向も確認できるも、童話の活用などでない分、抵抗感が薄く有難い。
それはともかく、アクション映画としてアクション即ち実質的に戦いの場面が多彩で、しかも、出してくるタイミングがよく考えられている。難を言えば、スローモーションを使ったことである。スローはどうも観ていて気勢が削がれることが多く、僕は好まない。
ヒロインに扮するガル・ガドットはアスリート体型の美形で、男性陣には受けるだろう。
ナチスのイメージがあるのでいつの時代もドイツが悪役に配されやすいが、第一次大戦についてはそう責められない。但し、毒ガスはイメージが悪い。
ベーベルの「婦人論」に面白いことが書いてあったので紹介する。そもそも(欧州の)世界は女系から始まった。経済が発展し物理的な力が必要になって男に乗っ取られ従属するようになった。その最後の抵抗の印がアマゾネスの神話だと言うのである。何となくそれらしくて面白い。同じ頃古い英語の小説を原文で読んでいた時に世界が「女系で始まった」ことの証拠になると考えたくなる単語に遭遇した。英語の文語で結婚・婚姻のことをmatrimonyというのだが、これは【母】から生まれた言葉である。即ち、女系社会の名残ではないかと思うわけである。
この記事へのコメント
田舎から出てきたわけ(という設定)だから仕方ないか?!?
>発音がナマってましたね
アメリカ人ではなく、イスラエル人だからなんでしょうね。
英国の俳優がアメリカ映画に出ると、英国出身であるという言い訳をされている役が多いですよね。