映画評「美しい星」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・吉田大八
ネタバレあり

少々変わったアングルのお話をユーモラスに見せることが多い吉田大八の監督作品。原作は三島由紀夫。
 三島由紀夫にこんな小説があったとは。いかに僕が戦後に台頭した作家への関心がそれ以前の作家に比べて低いと言っても不勉強の誹りは免れない。

天気予報士リリー・フランキーはある時とんでもないところで目を覚まし、宇宙人に誘拐されたのではないかという局関係者の一言で、やがて自分は火星人であると思い始め、番組内で地球環境破壊に関する猛烈なプロパガンダを発信するようになる。平凡な細君・中島朋子はねずみ講もどきの怪しげな水販売に関わる。息子の亀梨和也は偶然縁のできた国会議員の秘書の一人になるが、首席秘書(?)佐々木蔵之介によると、彼と同じ水星人らしい。娘の橋本愛はストリート・ライブで惹かれたミュージシャンに会いに遥々石川まで出かけ、やがて自分は金星人で処女のまま妊娠したと言い出す。

三島由紀夫は冷戦時代の核戦争を心配してこんなお話を書いたらしい。そしてその心は、地球は護る価値があるのか、ということだった模様。

映画はその部分を使いつつ、もう一ついかにも現在の作品らしく家族の再生というモチーフを加えた。火星人、地球人、水星人、金星人と全く違う惑星の人類と彼らが思っている設定がそのモチーフに実に便利に使えるわけだが、僕には【虻蜂取らず】の印象が強い。
 環境破壊に関するテーマ性を強く推し、地球は護る価値があるのかと火星人と水星人との間で論争が繰り広げられる一方で、これは父と子の考えの違いに過ぎないことも漂わす。それが末期がんと判った父親の最後(最期?)の願いを聞き届ける為に一家を挙げて病院を抜け出すところで、僕としてはがっかり来る。家族再生という落着の仕方が非常にありきたりで面白味が薄いからである。地球について考えるお話が、一家族の再生に謂わば矮小化されていて肩透かしをくらう感もある。

映画は、彼らの“思い込み”を匂わす。幕切れについてもそれが現実であると考える必要はない。しかし、そうなると家族以外の宇宙人・佐々木蔵之介の首席秘書が邪魔になるのである。

某国首相に「美しい国」だったか「美しい国へ」だったか著書がありましたな。内向きのナショナリズムはいずれ国を亡ぼす、という意見が今日の新聞にあった。今や全世界的にその傾向があるが、イスラム教を恐れるなら却って移民を認めた方が良いというのが最近の僕の考え。そうしないとイスラム教圏の人口が爆発し、寧ろ非イスラム教圏特にキリスト教圏を圧迫するのではないか。半世紀後のことを考えたら、メルケルが一番正しいような気がする。

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