映画評「ジェイソン・ボーン」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督ポール・グリーングラス
ネタバレあり
新作のチェックをしなくなって久しく、すっかり終わったと思っていたシリーズが終っていなかったとWOWOWのパンフレットにより知る。このスパイ・シリーズは、「ミッション:インポッシブル」シリーズの華美で超現実的なサスペンスとジョン・ル・カレによる非常に地味な現実的な内容の中間にあるようで興味深く観られたため、無下な扱いもしないが、思い出のグリーングラスならぬポール・グリーングラスのスタイルが苦手で、かつ、年寄りの目には良くないので、歓迎もできない。
ジェイソン・ボーン(マット・デーモン)は、脱CIA組の元同僚の女性ニッキー(ジュリア・スタイルズ)から彼の亡き父親が彼の巻き込まれたプロジェクトに関わっていたことを聞く。旧悪を知られることで新しいプロジェクトに支障が出るのを恐れる長官(トミー・リー・ジョーンズ)は、ボーンに恨みを持つ殺し屋(ヴァンサン・カッセル)を彼の潜伏するギリシャに送り込む。
本作最初の見どころで、過激なデモ騒動の狭間を縫っての攻防がスリリングに描き出されている。この作戦で力を発揮しようとしゃしゃり出るのが若い女性幹部候補ヘザー・リー(アリシア・ヴィカンダー)。正にクール・ビューティーのマキャベリストで、自分の成功の為には長官すら亡き者にしようとする。キャラクターとしてはさほど強烈ではないものの、演じるアリシアに研ぎ澄まされた感じの美しさがあるので、目を引くのである。
新プロジェクトというのは、昨今大流行りのIT絡みの管理(監視)システム構築。これについてはもはや新味がない。全体的にも退屈はさせないが、二番煎じの感は否めない。
ギリシャに続く視覚的な見せ場は、ラスヴェガスでの余り見たことのない装甲車によるカー・アクション。しかし、グリーングラスが例によってアップと細切れショットの組合せで見せるため何をやっているか解らないところが目立つ。細切れショットを使う監督の中では精確なカット割りを見せる部類の監督だが、本作には気に入らないところが多い。時々誰が誰とどのように戦っているのか、どの車が衝突したのか解らなかったりする。
僕ら年寄りはこういうのを見てもスリルを感じにくい。シチュエーションでスリリングに感じるだけである。上で褒めたギリシャでの暗殺攻守もシチュエーションが優秀であるだけで何をやっているか正確に解らないところが多いのである。
第3作「ボーン・アルティメイタム」の時にカット割りの少ない部分と多いところを数分間ずつ幾つか抽出してカット数を割り出したところ、115分で4000カット以上と出た。約1.6秒でワン・カットだったからだ。1950年代の平均的なホーム・ドラマのカット割りが2時間で200カット(36秒/カット)、半世紀前異常に多いと言われたアルフレッド・ヒッチコック監督「鳥」でさえ2時間で1400カット(5秒/カット)である。今回は第3作ほど多くなさそうだが、それでも3000カットくらいありそうだ。
「骨まで愛して」と駄洒落を言っても若い人には何のことか解らんじゃろ。半世紀以上前に流行った歌謡曲にそんな題名の曲があったのよ。
2016年アメリカ映画 監督ポール・グリーングラス
ネタバレあり
新作のチェックをしなくなって久しく、すっかり終わったと思っていたシリーズが終っていなかったとWOWOWのパンフレットにより知る。このスパイ・シリーズは、「ミッション:インポッシブル」シリーズの華美で超現実的なサスペンスとジョン・ル・カレによる非常に地味な現実的な内容の中間にあるようで興味深く観られたため、無下な扱いもしないが、思い出のグリーングラスならぬポール・グリーングラスのスタイルが苦手で、かつ、年寄りの目には良くないので、歓迎もできない。
ジェイソン・ボーン(マット・デーモン)は、脱CIA組の元同僚の女性ニッキー(ジュリア・スタイルズ)から彼の亡き父親が彼の巻き込まれたプロジェクトに関わっていたことを聞く。旧悪を知られることで新しいプロジェクトに支障が出るのを恐れる長官(トミー・リー・ジョーンズ)は、ボーンに恨みを持つ殺し屋(ヴァンサン・カッセル)を彼の潜伏するギリシャに送り込む。
本作最初の見どころで、過激なデモ騒動の狭間を縫っての攻防がスリリングに描き出されている。この作戦で力を発揮しようとしゃしゃり出るのが若い女性幹部候補ヘザー・リー(アリシア・ヴィカンダー)。正にクール・ビューティーのマキャベリストで、自分の成功の為には長官すら亡き者にしようとする。キャラクターとしてはさほど強烈ではないものの、演じるアリシアに研ぎ澄まされた感じの美しさがあるので、目を引くのである。
新プロジェクトというのは、昨今大流行りのIT絡みの管理(監視)システム構築。これについてはもはや新味がない。全体的にも退屈はさせないが、二番煎じの感は否めない。
ギリシャに続く視覚的な見せ場は、ラスヴェガスでの余り見たことのない装甲車によるカー・アクション。しかし、グリーングラスが例によってアップと細切れショットの組合せで見せるため何をやっているか解らないところが目立つ。細切れショットを使う監督の中では精確なカット割りを見せる部類の監督だが、本作には気に入らないところが多い。時々誰が誰とどのように戦っているのか、どの車が衝突したのか解らなかったりする。
僕ら年寄りはこういうのを見てもスリルを感じにくい。シチュエーションでスリリングに感じるだけである。上で褒めたギリシャでの暗殺攻守もシチュエーションが優秀であるだけで何をやっているか正確に解らないところが多いのである。
第3作「ボーン・アルティメイタム」の時にカット割りの少ない部分と多いところを数分間ずつ幾つか抽出してカット数を割り出したところ、115分で4000カット以上と出た。約1.6秒でワン・カットだったからだ。1950年代の平均的なホーム・ドラマのカット割りが2時間で200カット(36秒/カット)、半世紀前異常に多いと言われたアルフレッド・ヒッチコック監督「鳥」でさえ2時間で1400カット(5秒/カット)である。今回は第3作ほど多くなさそうだが、それでも3000カットくらいありそうだ。
「骨まで愛して」と駄洒落を言っても若い人には何のことか解らんじゃろ。半世紀以上前に流行った歌謡曲にそんな題名の曲があったのよ。
この記事へのコメント
私も放送で改めて観たんですが、映画館の時ほど展開についていきづらかったので...
>映画館でみないと
映画館でのほうが解りやすいとな(笑)
確かに対象が大きい方が解りやすいかもしれません。