映画評「密偵」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2016年韓国映画 監督キム・ジウン
ネタバレあり

1920年代日本統治時代の朝鮮半島が舞台だから、日本無謬論者は面白く思わないだろうが、この程度の内容で文句を言うようでは映画を観る資格がない。

日本からの独立を目指す過激派組織“義烈団”が資金集めの為に上海由来の陶器を売り買いしている。日本の警察に所属する朝鮮人ソン・カンホは陶器を扱っている地域リーダーのコン・ユに接近するが、やがて彼に二重スパイになる提案をされ、はっきりした態度を示さないまま、メンバー数名を乗せた上海から京城へ移動する列車の中では彼らに味方、コンの作戦で寝返った団員を突き止め、銃撃戦ではライバルの警部らを射殺する。
 結局コンに続いてソンも逮捕されるが、“義烈団”撲滅の作戦の一環であるとの釈明が認められて釈放される。実は密かに爆弾を隠し持っていた彼は若いメンバーに爆弾を渡す。若者は朝鮮総督府に入って行く。

という内容だから、当然日本が揺るがない悪党の位置にある。が、積極的なプロパガンダを目的に作ったとも思われない以上、純粋に事実を基に作られたサスペンスとして楽しめば良い。少なくとも極めて似た内容の中国映画「レイルロード・タイガー」が日本人そのものをからかいの対象にしていたのに比べるとずっと観照的に作られている。

そして、お笑いとの振幅を常套手段にしている韓国映画もさすがにかかる愛国的な内容ではそういう手法を取るわけには行かず、その為だけではないが、非常にがっちりとしたサスペンスが終始維持され、見応え十分。アクション場面になると映像言語を無視して突然揺らすカメラ(従来“揺れるカメラ”と言ってきたが今後はこれで行く)を採用するのは少し気に入らないが、文句を言うほど極端ではない。

残念ながら、今年観た日本の時代劇でここまでの出来栄えの作品はない。ちと考えないといけませんな。

明治維新の士も煎じ詰めればテロリストだったという内容の本が最近出ましたね。それを考えてもテロリストを一方的に悪党呼ばわりはできないということだろう。

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