映画評「ヴェンジェンス」

☆☆(4点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督ジョニー・マーティン
ネタバレあり

相変わらずやたらに出まくっているニコラス・ケイジの主演作。今回は名前通りの(?)刑事ではなく警官役だが、似たようなものでござる。

アメリカ北部。夫を亡くし12歳の一人娘タリタ・エリアナ・ベイトマンを養っているシングル・マザーのアンナ・ハッチスンは寂しさを紛らすべく男遊びが絶えない。こちらも相棒を失って失意の警官ケイジは、酒場で出会った彼女に他の男性と違って懸命なものを感じ、内心憎からず思うようになる。
 独立記念日の深夜、現在付き合っている男の家から娘を連れて近道をした帰り道、アンナは愚連隊4人組に襲われ重傷を負う。娘は様子を伺った後逃げたところをパトロール中のケイジに保護され、兄弟を中心とした4人組は逮捕される。
 子供可愛さの親から大金をむしり取った弁護士ドン・ジョンスンはアンナの日常の姿を強調して公判に持ち込ませない。これにアンナは落胆し、ケイジは怒り心頭に発する。法律が邪魔をするならと、自警団式に連中を倒していく。

というお話は、チャールズ・ブロンスンが妻と娘を破滅させた不良たちに復讐していく「狼よさらば」(1974年)とほぼ同じ構図である。違うのは、男女が一応の他人であることと、主人公が官憲であること。後者の違いは、官憲が自警団式に処理にするというところに面白味を生じさせる。しかし、実際にはこの裁判以降の展開はかなり雑で、相当がっかりするのである。

そこまで前半は母子の様子をじっくりと描き、裁判の理不尽も鮮烈に打ち出して、後段のカタルシスを大きくしようという努力が為されている。やや退屈するくらいにまでじっくりしている。
 ところが、ケイジが復讐する段になると、丁寧さを全く欠く。まず殺し方があっけなさすぎる。カタルシスを醸成するのが眼目ならもう少し捻りとパンチが欲しい。
 兄弟を射殺して滝の下に落とし、彼らがカナダへ逃げ出したことに見せかける二番目の殺害については、確かに兄弟はカナダへ逃げる話もしているものの、ケイジがそれを知るはずもなく、彼がその情報なしにこの計画を思いつくのは疑問である。最後の男には、知り合いの女性から電話が掛かって来る。この女性をケイジはどうやって誘き出し係に使ったか説明が欲しいところでもある。余りにあっさりしているからこういうところは説明があったほうが良い。
 観客に一番ストレスをもたらす、一番厭らしい弁護士に鉄槌を下さないのでカタルシスは不完全燃焼に終わる、ということも指摘しておいて良いだろう。

日本の任侠ものに近いですかな。

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