映画評「馬上の男」

☆☆(4点/10点満点中)
1951年アメリカ映画 監督アンドレ・ド・トス
ネタバレあり

余程の西部劇ファンでないと、B級(低予算)西部劇の王者ランドルフ・スコットの主演映画を見たことのある人は少ないだろう。僕は1980年代にTV(大半は地上波と思う)で十数本観た。スコットとのコンビ作の多いアンドレ・ド・トスは凡監の部類だが、やはり十数本TVで観ている。アメリカの殆どの監督は職業監督だから、脚本の出来によって作品の出来栄えを左右されてしまって、一概に監督の実力とは言えないけれども、本当に優秀な監督であれば脚本以上の出来にすることが多いので、どの作品も似たり寄ったりで面白くないド・トスはやはり凡監なのだろう。

NHKは以前は週に20本くらい映画を流していたが、現在は週に6本平均で、しかも近いスパンでの再放映が多い為実質年間200本くらいしか見られない。僕は西部劇が嫌いではないが、現在NHKは古い映画=西部劇(邦画では時代劇)と考えていて1970年以前の映画について相当の割合を西部劇が占めているのは残念である。ドラマも恋愛映画もコメディーもスリラーも戦争映画もあるだろうに、家にいる老人は西部劇(時代劇)を見ると踏んでいるのだろうが、例えば本作のような典型的な西部劇を喜んで見る世代は戦前派・戦中派くらいの男性であり、僕のような若い年寄りや女性もいることも考えると、こんなに西部劇に偏って良いわけがない。まして録画をする方も多い現在ゆえに、一考を要す。

愚痴はそのくらいにして、一応本作について記しましょう。

ド・トスの作品はどうも途中から始まったような印象が受けるものが多い。本作では、若い新興の牧場主アレクサンダー・ノックスが、古い牧場主スコットから恋人ジョーン・レスリーを奪う形で結婚しようとしているところから始まる。A級映画であれば前段をもう少し丁寧に描くが、87分のB級作品なので途中から始まるような感じになるのだろう。
 ジョーンはスコットが町を離れがちなのが不満でノックスがその間隙を突いたのである。しかし、ノックスは独占欲が強く土地も独占したいと思ってい、形としてはジョーンを巡る三角関係から、スコットの牧童たちを部下に襲わせたりする。罪のない牧童を次々と殺されたスコットは逆襲し、負傷する。それを彼を好いているもう一人の女性エレン・ドリューが助ける。ところがエレンを思う若者ジョン・ラッセルが嫉妬のため二人を追って遂にはスコットと一騎打ちになる。

という具合に、二重の三角関係をモチーフにしたところが西部劇としては異色である反面、気勢の上がらない内容であること甚だしい。B級映画としては、この時代の西部劇によく出て来る牛の暴走がなかなか迫力満点で捉えられ、この辺りにド・トスの監督としての力が一応出ている。対決場面のカット割りなど画面も割合しっかりしているが、暗い場面が多いのは感心しない。

本作はスコットを見る価値があるくらいで、日本劇場未公開ではあるし、敢えて貴重な時間を割くには及ばない。篤志家のみ、どうぞ。

僕の願いが通じて、明日は「めぐり逢い」が放映される。「らせん階段」といったサスペンスもお願いしますよ。

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