映画評「アウトサイダーズ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2016年イギリス映画 監督アダム・スミス
ネタバレあり

英国。トレイラーハウスで移動しては犯罪を犯す家族がある。主に父ブレンダン・グリースンが強盗計画を立案し、息子マイケル・ファスベンダーや他の不良たちが実行役に回るという分担だが、息子には妻リンジー・マーシャルと6、7歳の息子と娘がいる。彼と妻は自分たちが教育のないものだから、子供達を小学校に通わせている。犯罪者である一方キリスト教信者を気取る父親は、進化論を学校から持ち帰る子供たちが気に入らない。
 かくして親子の確執は深まり、ファスベンダーは逃走を繰り返すうちに足を洗おうという気持ちが芽生え、息子に与えようとした子犬を犯罪者であるという理由で断られた為に強奪し、結局家族の誰もが知る一本の木の下で警察に御用となる。

最後は半ば自ら捕まるように下手な強奪事件を起こした感さえし、木に逃れた後息子と一緒にネットの上に飛び降りるストップ・モーションで終わる。

終幕には無教育がもたらす悲哀を知る主人公ならではの子供に対する愛情にじーんとさせられるものがあり、全体としても殺人など殺伐とした描写が殆どなく(犬殺しはある)牧歌的なムードで展開するので後味も爽やか。しかし、犯罪者親子の人情を色々な作品で観てきた僕の目には、二番煎じ・三番煎じの感が強く、面白味を感じにくい。例えば、警察犬を殺す場面をなくし、移動するとは言っても短からぬ期間を一つ所に定住するようだから警察との慣れ合いの感じを打ち出しつつ、それでも最後は警察が逮捕しなければならない、といった具合に浪花節風に作った方がもっと人情味が出て印象が強まったのではないかと思う。

ファスベンダーは幅広い役柄をカバーできるものの、インテリ風の風貌なので字が読めないようには見えず、ミスキャストとは言わないまでも僕にはピンと来なかった。

監督の名前に大受け。主人公の行動には神の見えざる手が働きましたかな。

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