映画評「散り行く花」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1919年アメリカ映画 監督D・W・グリフィス
ネタバレあり
映画史上重要な監督を十人選べと言われれば、僕はまずD・W・グリフィスを挙げる。長編映画の語り方や構成を最初に完成の域まで持ってきたと思われるからである。本ブルグではまだ最重要作品「イントレランス」(1916年)を挙げていないが、8月に「許されざる者」(1960年)に関連して「散り行く花」のコメントを戴いたのを憶えていた為こちらを優先した。
仏教の布教の為に上海からロンドンへ渡った中国(清国であろう)人チェン・ハン(リチャード・バーセルメス)は、しかし、その直後に壁に突き当たって雑貨店を営みながらアヘンにふけるようになる。ところが、実力はありながら酒に溺れるボクサーの父親バローズ(ドナルド・クリスプ)に虐げられる15歳の娘ルーシー(リリアン・ギッシュ)が自分の店にやって来て売り物を覗いているのを見て心が洗われる思いをする。
やがて父親に鞭打たれた少女が店で倒れているのを発見したチェンは彼女を救って泊めてやるが、それに気づいた父親に連れ戻されてさらに折檻されて瀕死に陥る。救出に向かったチェンは襲撃してきたバローズを射殺、遂に死んでしまった少女を自宅へ運び自刃して一緒にあの世へ旅立っていく。
現在「レ・ミゼラブル」を夜寝る前に少しずつ再読しているのだが、ルーシーは欲深な養父母に痛めつけられるコゼットに似ている。正に“ああ無情”と言うしかない。
映画としては、サイレント中期の作品である為にやや大袈裟な表情や所作が目立つが、それでも何故か現実っぽく感じられて胸が痛んでくる。それはリリアン・ギッシュの可憐さや儚さが心ある人々の胸を掴んで離さないからではあるまいか。リリアンあっての本作なのだという気がする。
意外とも言えるのが、“野蛮なアングロサクソン”などという表現が出て来ることである。当時東洋人を恐れ同時に馬鹿にする気持ちが西洋人にあったことに対するグリフィスの反感が表白されているのではないかと思う。その一方で、悪意はないのであろうが、東洋人の表現に些か西洋人の偏見が現われているようなところがある。
ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ブロッサムズ。
1919年アメリカ映画 監督D・W・グリフィス
ネタバレあり
映画史上重要な監督を十人選べと言われれば、僕はまずD・W・グリフィスを挙げる。長編映画の語り方や構成を最初に完成の域まで持ってきたと思われるからである。本ブルグではまだ最重要作品「イントレランス」(1916年)を挙げていないが、8月に「許されざる者」(1960年)に関連して「散り行く花」のコメントを戴いたのを憶えていた為こちらを優先した。
仏教の布教の為に上海からロンドンへ渡った中国(清国であろう)人チェン・ハン(リチャード・バーセルメス)は、しかし、その直後に壁に突き当たって雑貨店を営みながらアヘンにふけるようになる。ところが、実力はありながら酒に溺れるボクサーの父親バローズ(ドナルド・クリスプ)に虐げられる15歳の娘ルーシー(リリアン・ギッシュ)が自分の店にやって来て売り物を覗いているのを見て心が洗われる思いをする。
やがて父親に鞭打たれた少女が店で倒れているのを発見したチェンは彼女を救って泊めてやるが、それに気づいた父親に連れ戻されてさらに折檻されて瀕死に陥る。救出に向かったチェンは襲撃してきたバローズを射殺、遂に死んでしまった少女を自宅へ運び自刃して一緒にあの世へ旅立っていく。
現在「レ・ミゼラブル」を夜寝る前に少しずつ再読しているのだが、ルーシーは欲深な養父母に痛めつけられるコゼットに似ている。正に“ああ無情”と言うしかない。
映画としては、サイレント中期の作品である為にやや大袈裟な表情や所作が目立つが、それでも何故か現実っぽく感じられて胸が痛んでくる。それはリリアン・ギッシュの可憐さや儚さが心ある人々の胸を掴んで離さないからではあるまいか。リリアンあっての本作なのだという気がする。
意外とも言えるのが、“野蛮なアングロサクソン”などという表現が出て来ることである。当時東洋人を恐れ同時に馬鹿にする気持ちが西洋人にあったことに対するグリフィスの反感が表白されているのではないかと思う。その一方で、悪意はないのであろうが、東洋人の表現に些か西洋人の偏見が現われているようなところがある。
ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ブロッサムズ。
この記事へのコメント
個人的には、「東への道」も好きなのですが、仰るようにこの作品もまさに、サイレントの名花リリアン・ギッシュを愛でるためにあるようなものかもしれません・・。
初めて観たアテネ・フランセ文化センターでの、刹那の彼女のまなざしが当時、僕の目に焼き付いて離れなかったものです・・。きっと、映画の中の彼女に恋していたのでしょう!
単なる白黒ではなく、場面ごとに青、セピア、紫と色が変わるのも素晴らしい。
>グリフィスの反感
滑稽なほどに目を吊り上げて奮闘するリチャード・バーセルメス(それでも十分美男子ですが・・)を親切な男に描いているわけですからね・・。
今年も、あとわずか・・恒例のプロフェッサーの1年遅れの年度ベスト10の発表が楽しみな季節ですね!
今年の僕のベストワンは「ボヘミアン・ラプソディ」だったのですが、高校生の頃(初めて聞いたのは「キラー・クイーン」でしたか)、彼らは、その音楽性は認められながらも一般的な評価は(特に男性ロックファンには)甘すぎで軟弱!とされていましたね・・。
僕自身も、メロディには惹かれながらも当時は、これはロックじゃないなぁ・・と、思ったものです(笑)。
プロフェッサーはどうだったですか?
>「東への道」
おおっ、これもご覧になっていますか。昔ビデオで撮ったものを本作と同じブルーレイに収めてありますので、いつでも再見できる状態ですよ。
>リリアン・ギッシュ
同時代の大スター、明朗なメアリー・ピッグフォードとは正反対の可憐で日本人好みでしたねえ。華奢でね。
>場面ごとに青、セピア、紫と色が変わる
何かルールがあるのかと注視しましたが、ないようですね(笑)
>プロフェッサーの1年遅れの年度ベスト10
そう仰ってくれるのは浅野さんくらいですが^^;
どのくらい共感されてくれるか戦々恐々ですよ(笑)
>今年の僕のベストワンは「ボヘミアン・ラプソディ」
ほーっ、浅野さんが仰るなら本当に良い映画なんですね。
>「キラー・クイーン」
僕もこれで知りましたね。FMで流れていました。結局この曲がクイーンで一番好きなような気がします。「ロック・ユー」が人気ありますが、あれは日本のどこかの民謡にそっくりと思いませんか?
>クイーン
「ボヘミアン・ラプソディ」は良いメロディーだけど、中盤クラシックを意識しすぎてあざとくなってしまった感じ。
こういうポップス系ロック・バンドは常に、余りに多様性のあるビートルズとの比較になるので、僕にとっては分が悪い。「ブライトン・ロック」のようなハードな演奏の曲でも、浅野さんの仰るように、どこか甘い感じが残ってしまいますね。
個人的に、甲子園の応援曲において「オブラディ・オブラダ」が減って「ロック・ユー」が増えているのが許せない僕であります(大笑)
リードギターのブライアン・メイのそっくり振りなど、俳優の演技も見事でした。虚実織り交ぜた脚本に、うるさ型の音楽ファンが文句をつけているようですが、伝記映画であってもドキュメンタリーではないですし、僕には、音楽の力がすべてだったと思いますね・ぜひ、来年、プロフェッサーご自慢の音響装置でご鑑賞ください!ぼくもブルーレイが出たら買いたいです。
今年は、例年に比べていささか小粒の作品が多かったこともありますね・・。
「スリー・ビルボード」やアルフォンソ・キュアロンの「ローマ」は当然ランクインですが、突出する作品は少なかった。
ミュージカルは、「グレイテスト・ショーマン」「アリー/スター誕生」など良いものが多くヒットもしている・・日本の映画ファンにミュージカルへの抵抗が薄れてきているのでこの傾向はさらに強まるでしょうね!
なお、プロフェッサーが、すでに今年ご覧になった作品も入っているのですが、WOWOWの新作上映のサイクルに改変があったのでしょうかね?
>ポップス系ロック・バンドのクイーン
高校時代には、ベイシティ・ローラーズやキッスなどと同じような位置づけだったかと・・。
色物とまでは言いませんが、卑しくもロックファンを自認する男子にとって、彼らの音楽はやや甘すぎでした・・。
初期のころはライブ演奏すら覚束なかったベイシティとは比べられませんが・・。
>甲子園の応援曲
観客席で母校の野球チームを応援する女子高生を描いたポカリスウェットのCMの影響が大ですね(笑)
>自慢の音響装置
来年の今頃までに見られると良いと思いますデス。
>WOWOWの新作上映のサイクルに改変があったのでしょうかね?
「スリー・ビルボード」など公開から10ヶ月くらいで放映される作品が増えたと思います。それも何故か話題作が多い。
>ベイシティ・ローラーズ
モンキーズはデビュー・アルバムにおいて演奏はおろか歌も歌っていなかったと、デイビー・ジョーンズが証言していますね。つまり、ジャケットだけ。それよりは大分良い(笑)
>キッス
も見た目はヘビ・メタ風でしたが、結構軟弱でね。
>ポカリスウェット
確かに若い人はこれで知ったという人も多いようで。
で、「クイーンさん」と紹介している記事がありましたよ。今TV界では「さん付け」が流行ってクイズの回答などで歴史的偉人にまでつけたりする人も現れ始めましたが、グループ名に“さん”を付けるのはそれ以上に異常(洒落ですが)ですね。
例えば、企業同士の話で「東芝さん」とか「日立さん」とかいうケースはありますが、それとは違うケースなので。
明けまして、おめでとうございます!
まだ『散り行く花』を書かれていなかったことに驚きましたwww
というか、クラシック映画の古典は書きにくいですよね。
可憐なリリアンを見るだけでも価値があります。ゴダールも『映画史』で真っ先に挙げるくらいですからねwww
>ベストワン
横レスですが、たしかに『ボヘミアン・ラプソディ』は今年の一位かもしれませんよww
放送されたら、ご覧ください。話題になる前に行ってきましたが、楽しかったですし、深さもある良い作品でした。
クイーンはぼくが中高生だった80年代初頭でも本格派とはみなされていませんでした。ただ普段、ツェッペリンやジミヘン、ストーンズやビートルズを聴いている連中の部屋に行くとけっこうな割合でベスト盤があったのは笑いましたw
今年もよろしくお願いいたします!
>クラシック映画の古典
まだまだ書いていない作品はたくさんありますねえ。書きにくいことに加えて、特にフランスの大古典などは読む人もいないと思って避けているという理由も。
>可憐なリリアンを見るだけでも価値があります
映画技法としても色々意義のあることをしていますが、彼女なしにこの作品は出来なかったという印象が強いですね。
>クイーン・・・ベスト盤
僕はFMから全LPを録音して持っていますが(笑)。
LPは「オペラ座の夜」だけですね。
今の若い人はクイーンを神格化していますが、同時代の僕らにはさほどのものではなかった。寧ろ馬鹿にされたくらいですよね。仰る通りベスト盤で十分という感じでした。