映画評「バッド・ウェイヴ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年アメリカ映画 監督マーク・カレン
ネタバレあり

まずい。観た傍からストーリーを忘れてしまった(本当の話。今懸命に思い出しながら書いている)。そのくらい印象に残らないお話であるのにちがいない。しかし、実はそこそこ気に入っている。というのも私立探偵の物語で、探偵ものらしい格好が一応ついているからである。

原題は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のパロディーである"Once Upon a Time in Venice"だが、Veniceと言ってもイタリアではなく「パリ、テキサス」同様ヴェニス、カリフォルニアであるというご愛敬。

その街で唯一の私立探偵が元刑事ブルース・ウィリス氏で、語り手は助手のトーマス・ミドルディッチ。この助手君が下調べや細かな仕事をこなしてボスに引き渡すというのが仕事の流れで、サモアの美人ジェシカ・ゴメスを兄弟に頼まれて探し当てたは良いが、ウィリス氏が彼女と早速ベッドインしたものだからその兄弟たちが怒って襲撃しかけてきた為、全裸でピストルを持ってスケボーで街中を逃げ回るというのが探偵さんの仕事ぶりの紹介部分であり最初の見せ場(?)でござる。

姪の愛犬を取り戻そうとして女装で逃げ回るという類似の珍場面も後半に待っている。この手のお笑いが全編に渡って賑わすと言えば、その程度が知れるだろうが、車奪還に始まるメキシコ系の麻薬ギャング(ボス:ジェイスン・モモア)との腐れ縁的なやり取りが主軸を成しているのに一件裏切者の殺害があるだけで実質的に残酷場面がないのが、最近のアメリカ映画にしては珍しく、微笑ましいくらい。

グラフィティ・アートの描かれたビルの売買を巡る探偵的取引はアクセントとしてなかなか気が利いているし、人物の出入りにジム・ジャームッシュの香りを感じなくもない。

といった次第で、他愛ないと言えば他愛ないが、意外と行けるのである。ジョン・グッドマンがサーフィン・グッズ店の店長として出演、終盤何故か突然探偵氏の相棒として活躍する。

二日続けてグラフィティ・アートが大活躍。鑑賞当日の新聞のコラムも突然発見されたグラフィティ・アートに触れ、偶然とは言え、続く時には続くものです。

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