映画評「ちはやふる-結び-」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・小泉徳宏
ネタバレあり

前作「-下の句-」で終わったかと思っていたらもう一本ありました。

前作から1年半くらい経って瑞沢高校かるた部の綾瀬千早(広瀬すず)らは3年生として新学期を迎え、新入部員獲得に奮闘するが、結局部長の真島太一(野村周平)目当ての全くの初心者・花野菫(優希美青)と実力はあるが個人プレイしかできない筑波秋博(佐野勇斗)しか入って来ない。
 部は暫し安泰となるも、太一が東大医学部進学の為の勉強を理由にかるた部を勇退した為、千早が部長として引っ張ることになる。彼らは東京都大会で辛うじて準優勝、全国大会に進出を決める。
 全国大会でも勝ち抜くが、大江奏(上白沢萌音)が手を痛めた時に、無類の強さを誇るがかるたに打ち込んでいない名人周防久志(賀来賢人)に付いてその人生観を学んだ太一が復帰、恋のライバルでもある幼馴染・綿谷新(新田真剣佑)が部長を務める藤岡東高校と対戦することになる。

もう(終わりで)良いんじゃないかと思って観始めたが、青春映画として予想以上に上出来。映画的に上手いと思ったのは、“選択”を通奏低音にお話を進めていることである。
 まず、千早を巡る太一と新の三角関係、或いは太一を巡る千早と菫の三角関係がそれ。第二作「-下の句-」は三角関係が足を引っ張ったように感じられたのに対し、本作はこれが全ての起点になっているから良い感じになって機能する。言い換えれば、競技かるたを扱うお話におけるロマンスと考えると長たらしく感じられるが、“選択”というモチーフを表現する要素と考えれば寧ろ推進力となる。
 天徳内裏歌合せにおける平兼盛(しのぶれど)と壬生忠見(こひすてふ)の勝負の決着も選択であり、この歌が全国大会決勝の最後の二枚となり、ここでも太一の選択が鍵となる。
 太一が一旦部を退くのも迷いの結果。迷いは何かを選ばなければならないから生まれ、なかなか懐の深い周防名人が彼の選択において機能する。

といった具合に“選択”がお話の重しとなって青春映画的な浮ついたものを抑え、時にコミカルさを挿入してくる作品を優れたものにしているのである。また、「-下の句-」でも出て来た個人と団体の問題が再度きっちり扱われ、“選択”と相まってスポ根ものらしい魅力を増幅してくれる。

色々と理屈をひねり出してきたが、広瀬すずの他に類を見ない爆発的溌剌さが本作を楽しいものにしていると言うのが一番適切だろう。

“競技かるたは格闘技か”と問うたことがあるが、“スポーツか”と問うには及ばない。既にスポーツなのだから。日本ではスポーツ=運動のイメージが強いが、本来の意味では運動に限らないわけで、現に囲碁や中国将棋がアジア大会の種目に採用され、将来的にコンピュータ・ゲーム(e-スポーツ)がオリンピックに入ってくる可能性が出て来た。

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