映画評「君の名前で僕を呼んで」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年イタリア=フランス=ブラジル=ドイツ=アメリカ=オランダ=タイ合作映画 監督ルカ・グァダニーノ
ネタバレあり

1983年の北イタリア。アメリカの大学教授一家が夏休みを過ごすため例年の通りそこに所有する別荘を訪れる。ギリシャとローマの考古学を専門とする父親(マイケル・スタールバーグ)は毎年一人ずつ博士課程の学生を呼ぶことにしており、今年は大柄の白人青年オリヴァー(アーミー・ハマー)である。多才の中でも特に音楽的才能のある17歳の息子エリオ(ティモシー・シャラメ)は、自信に満ち溢れた彼に最初は反感を抱くが、やがて恋心を募らせていく。

この少年が真の同性愛者なのか判然とはしない。かと言って、同世代のイタリア少女マルシア(エステール・ガレル)と交際するのは、彼との交流の狭間における懊悩のはけ口のようなものと考えられるわけで、これをもって両刀使いとも言いかねる。
 僕には、日常的に彼らが目にしている古代ギリシャや古代ローマの美術が二人を感応させ合ったかのように、即ち少年は青年の持つ彫刻のような肉体美に、青年は少年の優美に惹かれたようにも思えるのである。

1970年代前半に流行った初恋ものの同性愛版のような印象で、視覚上の感覚はなかなか良いが、いかんせん同性愛映画は苦手だから、どうにも集中できなかった。少年が恋するのが女性であれば、ツルゲーネフ「初恋」のような感覚でぐっと引き込まれたであろう。結果的に、エリオの両親の心の広さに一番感銘させられた。

音楽にクレジットがないので全て既成曲なのかもしれないが、背景音楽が充実。

イタリアとアメリカの国籍を持つ作家アンドレ・アシマンの小説をジェームズ・アイヴォリーが脚色し、イタリアのルカ・グァダニーノが映像に移した。個人的には、かつて同性愛もの「モーリス」(1987年)を作ったアイヴォリーの監督で観たかった気もする。イタリアが舞台なので、グァダニーノに任せたのだろう。

“君”だの“僕”だのが付く題名は好きではないが、この作品に関しては原題由来なので仕方がない。

この記事へのコメント

モカ
2019年06月20日 22:25
こんばんは。 これは割と最近観ました。のどかなイタリアの田舎で可愛いイタリア車がウロウロしててお庭で食事したりローケーションは良いし主役のお二人も客観的にはとっても麗しいお姿。その割に面白くない。
匂いたってくるものがなかったな・・・
昔読んだ森茉莉の「恋人たちの森」を思い出しました。年かさの男と少年と少年に恋する少女の三角関係がなかなか良かったです。それを思うとこの映画は出てくる女の子はまったく存在感がなくて、いてもいなくてもどうでもいい感じで。こういう映画を女が観るってことは、男二人の関係に嫉妬させてもらわないと面白くないんですよね。うらやましくなるような恋をしてもらわないと。初恋物語だからこれでいいのかな? こっちの薹が立ってしまってるんでしょうかね。
オカピー
2019年06月21日 22:01
モカさん、こんにちは。

>森茉莉の「恋人たちの森」
なるほど、人物の配置がそっくりそうですね。

>いてもいなくてもどうでもいい感じ
だから、僕には、彼女は彼にとって懊悩のはけ口にすぎなかったように見えたのです。或いは、実際に、はけ口だからそう見えたのでしょう。

>こういう映画を女が観るってことは、
>男二人の関係に嫉妬させてもらわないと
>面白くないんですよね。

僕は男だからそういう感覚はないものの、その思いは解りますね。これが女性同士であれば僕ら男もそういう感覚になりましょうか?

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