映画評「ピーターラビット」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年アメリカ=オーストラリア合作映画 監督ウィル・グラック
ネタバレあり

ビアトリクス・ポターの児童文学「ピーターラビット」の映画化と言っても、原作群が発表されたのは100年以上前のことでだから、現在を舞台にした本作はキャラクターを拝借した自由な映画化ということになる。

ビアトリクスを投影した女流画家ビア(ローズ・バーン)は、ピーターを筆頭とするうさぎたちと仲良し。しかし、隣で菜園を営むマクレガー老(サム・ニール)は彼らに野菜を盗まれるので面白くなく、いつかやっつけてやろうと狙っているが、仕返しを食らうばかりか最後には心臓麻痺であの世へ行く羽目になる。
 そこでデパートを追い出された甥のマクレガー青年(ドーナル・グリースン)が相続してやって来、ここを売り払ったお金で店を出そうと目論むが、うさぎたちがその目論見を邪魔するので伯父と同じくやっつけてやろうと色々仕掛ける。
 彼が伯父と違うのはビアに恋心を抱いていることで、彼女がうさぎたちを好いているものだから、ジキルとハイドよろしく見せかけの二面性を出す羽目になる。

アメリカ映画(オーストラリアとの合作)らしく誠に賑やかなこの作品の一番の面白さは彼のジレンマにあると言うに尽きる。彼にそのジレンマがなければ、互いの攻防もストレートに攻撃してくるのをうさぎたちが逆襲するだけで曲がなくなったと考えられるから、その点一定の評価ができるということである。

しかし、全体としては他愛ない内容に終始、もう少し本来あるべき英国的情緒が醸成されていれば個人的はもっと楽しめたろうと思う。尤も、最近の英国コメディーはアメリカの悪影響を受け、趣味がお下劣になってきたので、英国産といえども容易に求められないことなのかもしれない。

15年くらい前まで僕は「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」と混同していた。恥ずかし。

この記事へのコメント

2019年03月05日 12:05
うさぎがかわいいし、とても楽しかったのですが、言われてみるとたしかにアメリカ風で、イギリスらしさが薄かったですね。でもあれぐらいじゃないと、小さい子は飽きたり退屈するかもしれないので、ちょうどいいんじゃないかと。パディントンがイギリスらしいよさがありましたが、この映画はドタバタアクション系になってましたね。マクレガー青年とピーター、ガチでぶつかりあってましたが(小さい子向けにしては怖いくらいに)、両方ともピアには嫌われたくないのでピアの前ではなかよくしてるふりをしたりして、ああいうところがおかしいのね、ピーターの表情も。
オカピー
2019年03月05日 21:17
nesskoさん、こんにちは。

>パディントン
そうですね。こちらには英国ムードがしっかりありました。

>両方とも・・・ピアの前ではなかよく
そういうことだと思いますね。

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